The Wallライヴ作品発表を前にメンバー間に立ちはだかる“Wall”

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The Wallライヴ作品発表を前に
メンバー間に立ちはだかる“Wall”



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以前、どこかの誰かがPink Floydのファンが買ってきたミリオンセラー・アルバム『DarkSide Of The Moon』を聴きながら何をしていたか”を見極めるうまい考えを思いついた。わかったことは、“これが思索するファンのお気に入りのアルバム”で、これを聴きながらセックスをしたりドラッグをやったりするということだ。
おそらくこうした研究者は、もう少し神秘的なものが見つかると予想していたのだろうが(犬の寄生虫を取ったり彫刻細工を削ったりするのに最適の音楽とか?)、『TheWall』を買ったのと同じ数の人間について調査をしなかったらしい…。だから、コンセプト・アルバムが何の役に立つものなのか、はっきりとはわからないだろう。コンセプト・アルバムとは、ロックスターがファンに対して抱く嫌悪からインスピレーションを受け、パラノイア、裏切り、狂気、サドマゾ、絶望といったテーマを扱ったものだ。

"Is There Anybody Out There"
しかし『The Wall』が世に出て20年が経った。ハッピーバースデイと言おうではないか。これを祝して2000年の春に、PinkFloydはこのときのツアーを収録した2枚組ライヴアルバム『IsThere Anybody Out There? The Wall Live, PinkFloyd 1980-1981』をリリース。プロデューサーのJamesGuthrie(スタジオ盤に共同プロデューサーとしてクレジットされていた4人の1人)は、この記事が出る頃には、古いテープ110本を吟味して、オーヴンに入れてゆっくりと焼き固めている。これは、オーヴンで焼くことが先ほど述べた神秘的な音楽活動だからではなく、酸化物をテープに固定するのに使われていた接着剤が、年月とともに柔らかくなっているためだ。

不幸にも、『The Wall』を作った人間が頭を悩ませているのは、“柔らかくなっている”ことではない。'83年に『TheFinal Cut』がリリースされ、RogerWatersがPink Floydという名前を使用させないように訴訟を起こしたが(後に敗訴)、今回の動きは共同活動に近いものとしてはそれ以来初めてというもので、ミレニアムを記念して再結成するのではないかという憶測が、Web上でファンの間に飛び交っている。

だが、バンドのメンバーであるWaters、DavidGilmour、Nick Mason、Rick Wrightの関係は、修復されたと言うには程遠いままだ。Watersは、もう昔のことにはこだわっていない、昔のバンド仲間とは
「いい感じで別れていると感じている」
と言っているが、彼らのいずれかとまた関わることを考えると今でもぞっとするようだ。
「このライヴ・アルバムやライナーノーツを手がけるというだけでも、あの頃がいかにクレイジーだったか頭によみがえってしまう。今回の件には一切関わりたくない」
というのが彼の言い分だ。

GilmourとMasonは、もっと言葉を選んではいるが、本質的には同じ意見らしい。
「再結成してもどんなことになるかわからない。Rogerは再加入する気になったとしても、自分から言ってくるようなことはないんじゃないかな。Rogerは自分からバンドとの関係を絶ったんだ。そのことに関しては別に問題じゃないけど」
とGilmourが言えば、Masonが
Spinal Tapのことはみんな見ただろう? 再結成は最後には素晴らしいものになった。でも僕らの場合は基本的に、分裂後、敵と味方に別れてしまったんだ」
と付け加える。4人の中でまとめ役に回ることの多いのはWrightだが、不思議なことに彼が、再結成の計画に反対する理由を一番うまく表現している。
「素晴らしいアイデアだね。でもどうせうまくいかないよ」

Wrightは『The Wall』制作中にPink Floydから追い出された。Watersはこれを、バンド全員で決定したことだと主張している。その理由は、Wrightがキーボード・プレイヤーとしてほとんど機能していなかったことだという。他のメンバーはWaters1人の考えだったという。彼はWrightに好感を持っていなかったのだという。またメンバーたちは、かつてリーダーだったWatersが、誇大妄想狂になっていったと指摘する。長年の友人であるMasonの言葉を借りれば、
「彼にかかればスターリンだって可愛いもんさ」
Watersの性格と『The Wall』で彼が作り出したキャラクターが、1つにまとまり始めていたという見方は、Watersには不本意だろうが、世間に流布している。

「いかにもありそうな、よくできた都合のいい見方だね」
とWatersは認める。
「リーダーと独裁者は紙一重だ。これは見方によってまったく異なる。結束には囚人なんかいないんだ。僕らは全員自主的に参加しているのであって、強制されてそこにいるわけではない」
と、彼の言い方は理にかなっている。


Watersと膨大な数のFloydファンにとっては、『TheWall』は今でも
「名作だ。あの作品は僕にとって大いなる誇りだ。傑作だよ」


「'74年からずっと議論していた。とてつもなく長い時間だね。そのうち“こんなことをしていても駄目だ。もう何もかもおしまいだ”なんて言うようになってしまった」
次回作でありこのメンバーが揃った最後のアルバムともなった『TheFinal Cut』を制作していた頃は、まさにこうした状況だった。

しかし、みんなの話を総合すると、レコーディング・スタジオの雰囲気は戦争のようなものだったが、Wallツアーの現場にも気まずいものがあった。Watersは当時を振り返ってこう言う。
「バックステージではみんなバラバラだったね。トレーラーも別で、メンバー同士は、面と向かって話をするようなこともなかった。雰囲気は最悪だったけど、仕事つまりショウはとても大事だったので、ステージ上で僕がこうした雰囲気に影響されることはまったくなかった」

「あの時点では、僕らは個人的に大親友という状態ではなかった」
とGilmourは言う。Wrightはサポートメンバーとしてその時のツアーに参加し、少なくとも、そのツアーで金を手にできる唯一のメンバーということに慰めを見出したが、その彼が言う。
「バンドというものは、たとえメンバー同士がいがみ合っていても、ステージに立って音楽を演奏できるものなんだ。あのときは解散間近なバンドという気がしたな。もちろんそのとおりになったんだけど」

 Wallツアーが終了し、後にビッグイベントを呼びかけたあのBobGeldof主演の映画が公開されたとき、『TheFinal Cut』の作業が始まり、
「あらゆるものが爆発してしまった」
とWatersは言う。Gilmourは
「Rogerはもう僕らとはレコードを作らないと明言したし、僕も、彼と一緒でも彼抜きでも、レコードを作っていくと明言した」
と振り返る。そこでWatersは訴訟という行動に出た。長い年月が始まり、弁護士たちは大金を稼いだ。それ以外の面では良識ある英国紳士たちが、ブタの風船に睾丸をくっつけるようなことをし始めた。


『The Wall』に関して、メンバーの意見はいまだに分かれている。今回のライヴアルバムについて、MasonとWrightはいいアイデアだと考えており、Gilmourは中立、Watersは反対だ。
「僕のやり方でいくなら、このアルバムは発表されないだろうが、僕は25%の株しか持っていない。1セントたりとも無駄にせず絞り取ろうなんていうのは、空しい奪い合いだと思うね」
とWatersは言う。20年経って自分たちの音楽にどれほどの魅力があるかに関しても、4人の意見は分かれている。Masonはまだ好き、Wrightは確信が持てない、そしてGilmourは、
「最初のうちは好きだったが、後になって考えてみると、少し情けないね」
と言う。しかし、コンセプトを作ったあの男と膨大な数のFloydファンにとっては、これは今でも

「名作だ。あの作品は大いなる誇りだ。傑作だよ」!



Sylvie_Simmons
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