【ライヴレポート】acid android × THE NOVEMBERS、共同イベントが刺激的で濃厚
acid android企画の<alcove>とTHE NOVEMBERS企画の<首>によるコラボイベント<acid android in an alcove vol.8 × THE NOVEMBERS PRESENTS 首>が、8月11日に川崎CLUB CITTA’で開催された。イベント直前には、THE NOVEMBERSがL'Arc~en~Cielの「cradle」(yukihiro作曲)をカバーすること、またこの日限りの豪華メンバーによるspecial sessionが行なわれること、ゲストアクトとして石野卓球がdjで登場することがアナウンスされた。濃厚な一夜となることへの期待が、一気に高まったなかで迎えた夜となる。
◆<acid android in an alcove vol.8 × THE NOVEMBERS PRESENTS 首> 画像
まずステージに立ったのは、THE NOVEMBERS。逆光に4人のシルエットが浮かび上がり、吉木諒祐(Dr)によるダイナミックなドラミングでショーを幕開ける。1曲目から、マジカルなメロディとギターサウンドによる新曲を披露し、続いて昨年リリースした5th EP『Elegance』から「きれいな海へ」でグッとアンサンブルの圧を上げていく。吉木のドラムと地をえぐるような高松浩史(B)のベースが強靭なビートとなって会場をかけめぐり、小林祐介(Vo&G)とケンゴマツモト(G)によるギターは硬質かつ重厚な鋼の音色で、空間を轟音で満たす。今年、結成11周年を迎えるTHE NOVEMBERS。そのアンサンブルは鉄壁で、耽美的な繊細さから超重量級のヘヴィ・サウンド、そして好奇心や実験精神の高いエクスペリメンタルなサウンドまでと、自在に音のフォルムを変えながら、観客を飲み込んでいくパワーだ。
圧巻は中盤で披露した、L'Arc~en~Cielカバー「cradle」と、そこからの怒涛の流れ。フロントマン小林は、「僕とベースの高松はL'Arc~en~Cielで育ってきた。これは比喩的な意味でなくて、ほんとうに」と10代で受けた音楽的な洗礼を語り、ともにイベントを開催できたステージでその想いを返したいと最大限のリスペクトを込め、また自分を変えた大事な曲のひとつだと紹介し「cradle」をカバーした。音楽的DNAが受け継がれて新たなバンドが生まれ、こうしてステージを共にするまでになるとは、yukihiroにとってみれば音楽家冥利に尽きるというものだろう。
そして後半は轟音で、観客を漆黒の淵へと誘い、絶叫とともにさらに、深い別世界へとつき落とした。なかでも「Blood Music.1985」から新曲「黒い虹」へと続くドライブのキレッキレ感は最高。たどり着いた「Romancé」の甘美な余韻で、我に返ったように熱い歓声と拍手とがわき起こった。
続いて登場したのは、acid android。今回はTHE NOVEMBERSの小林がギターを担い、ドラムを山口大吾(People In The Box)、そしてyukihiroという布陣だ。激しいシーケンスではじまり、ギター、ドラムが絡み合いながらドープな世界を生んでいく「intertwine」でスタートし、最近のライヴでも披露している新曲を織り込んだセットリストは攻撃的。yukihiroはマイクを掴み、ビートを煽るように時に大きく腕を突き上げたり、足を蹴り上げ、また体を屈めてその声を飛ばす。ダークで乾いたヴォーカルは、続く「daze」のブルータルなサウンドに陰影を与え、フロアを揺さぶりながら一体化していった。歓声や、興奮のままにyukihiroの名を叫ぶ観客をねじ伏せる勢いで、ロックな「gamble」をガツンと見舞う。
こうした対バン形式であっても、クールなyukihiroの佇まいやacid androidの放つ世界観には1ミリのブレもない。匂い立つほど濃厚でグラマラスな闇と、そのなかをラウドに疾走し、あるいはその闇に絡まって静かに時を止めるような美しさとを、余すことなく伝える。中盤で披露した新曲では、荘厳なエレクトロ・サウンドを背にハンドマイクからスタンドマイクに変え、流麗なメロディをエモーショナルに歌い上げた。かと思えば、「unsaid」では、殺伐としたビートにのせ淡々としたヴォーカルで空気を切り刻んでいき、フロアを翻弄する。
ワンマンでは映像を用いて視覚的にも訴える演出がなされたが、今回は照明のみのシンプルな演出となった。陰を背負うようなダークトーンの照明が多かったなかで、2曲目の新曲(new song #2)でのブルーとホワイトによるゆらめく水面のようなライティングが、サウンドと歌詞の世界観に映え、イマジネイティヴで刺激的だ。ひたひたとした幻想的ムードから、続く「swallowtail」「violator」で再び昂揚感あふれる境地へとジェットコースターの如く駆け抜ける。ラストはこれまた新曲で、ピアノのフレーズが印象的な日本語詞曲。ゴシック感のあるエレクトロサウンドと人力ビートに、yukihiroのヴォーカルが妖しく絡まり、ラストまで緊張感のあるソリッドなステージを展開した。深々とお辞儀をするyukihiroに、フロアから大きな歓声が上がった。
ステージに幕がかかって、フロアのdjブースにライトが当たり、石野卓球が手を振り登場。会場の左右にはスクリーンが設けられ、音とのシンクロ感が抜群の映像でもわかせる最高のセット。しかも、この後に予定されているspecial sessionがデペッシュ・モードのカバーを披露するということで、卓球氏もまたデペッシュ・モードしばりの選曲、ミックスで盛り上げる。ちなみに卓球氏もyukihiroもかなりのデペッシュ・モード・ファンであり、セッションのメンバーもまた然り。ここから先は、完全にデペッシュ・ナイトの様相である。観客はもちろんのこと、いちばん楽しんでいたのはdjプレイしていた本人かもしれないというくらい、ノリノリでコブシを突き上げ、マイクスタンドを担いだりと、1時間強たっぷりと躍らせるセットとなった。
イベントのトリを務めるのは、本日限りのメンバーによるspecial session。そのメンバーは、ギターに土屋昌巳、ヴォーカルがKENT(Lillies and Remains)、ベースに高松(THE NOVEMBERS)、キーボードにTOM(PLASTICZOOMS)、そしてドラムにyukihiroという、世代もさまざまな5人であり、いずれもacid androidとTHE NOVEMBERSとゆかりの深いメンバーだ。KENTはメンバー紹介の際に、「冷静に考えると……土屋さんとyukihiroさんの前で歌っている」とバンドを振り返り、今は考えないようにしていると語る。そして、「今日は全力でデペッシュ・モードをカバーします」と語り、5曲披露した。
また、「デペッシュ・モードは、僕の友人で、6月に亡くなった森岡賢も大好きだった。今日も、観に来てくれていると思います」と土屋が語り、「時々思い出してあげてください」と観客へと語りかけると、会場は拍手で包まれた。KENTは「また一緒にできるように僕らから働きかけたい」とMCしたが、カバーだけでなく、何か新たなものが生まれそうな、刺激的で贅沢なセッションとなった。このイベントを通して、互いの音楽やルーツミュージックへの深いリスペクトが見えて、バンド同士の化学反応もうかがえた。そんな濃厚な一夜となった。
取材・文◎吉羽さおり
撮影◎岡田貴之
■<acid android live 2016 #3
「acid android in an alcove vol.8×THE NOVEMBERS PRESENTS 首」>
2016年8月11日(木・祝)川崎CLUB CITTA'
1 New Song1
2 きれいな海へ
3 New Song2
4 236745981
5 cradle(L'Arc-en-Ciel Cover)
6 鉄の夢
7 Blood Music.1985
8 黒い虹
9 Romancé
【acid android】
1 intertwine
2 daze
3 gamble
4 double dare
5 new song #1
6 unsaid
7 new song #2
8 swallowtail
9 violator
10 the end of sequence code
11 new song #3
【special session】
(Depeche Mode cover)
1 Never Let Me Down Again
2 Behind the Wheel
3 Personal Jesus
4 Walking In My Shoes
5 Enjoy The Silence
<session member>g: 土屋昌⺒ vo: KENT(Lillies and Remains) b: 高松浩史(THE NOVEMBERS) key:TOM(PLASTICZOOMS) dr: yukihiro
■<acid android live 2016 #3>
open 18:15 / start 19:00
▼チケット
all standing ¥5,500(tax in) *ドリンク代別
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888 (10:00~18:00)
※営利目的の転売禁止
※未就学児入場不可
■<acid android live 2016 #4>
open 18:15 / start 19:00
(問)JAILHOUSE 052-936-6041
2016年10月31日(月) 恵比寿LIQUIDROOM
open 18:00 / start 19:00
(問)クリエイティブマン 03-3499-6669
2016年11月1日(火) 恵比寿LIQUIDROOM
open 18:00 / start 19:00
(問)クリエイティブマン 03-3499-6669
▼チケット
all standing \5,500 (tax in) *drink代 別
一般発売日:2016年9月24日(土) 10:00〜
※未就学児童入場不可※営利目的の転売禁止
■THE NOVEMBERSライヴ情報
08月26日(金) 大阪・心斎橋CONPASS
共演:GEZAN / LOSTAGE
<Re:mix 2016>
08月27日(土)愛知・名古屋CLUB DIAMOND HALL / APOLLO BASE & SPADE BOX
<THE NOVEMBERS presents 首 vol.13 – Redder Than Red ->
09月11日(日) 東京・渋谷CLUB QUATTRO
共演:The Birthday
<11th Anniversary & 6th Album Release Tour - Hallelujah –>
09月30日(金)大阪・心斎橋JANUS
10月02日(日)愛知・池下CLUB UPSET
10月04日(火)石川・金沢van van V4
10月06日(木)新潟・GOLDEN PIGS BLACK STAGE
10月13日(木)宮城・仙台enn 2nd
10月23日(日)栃木・宇都宮HEAVENS ROCK VJ-2
<11th Anniversary & 6th Album Release Live 「Hallelujah」>
11月11日(金)東京・新木場STUDIO COAST
◆acid android オフィシャルグッズ購入ページ
◆acid android オフィシャルサイト
◆acid android オフィシャルmobileサイト
◆acid android オフィシャルYouTubeチャンネル
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