【インタビュー】有村竜太朗、再起動作品に三者三様のギタリスト「単純にバンドで面白いことやろうみたいな気持ち」

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2022年に25周年を迎えたPlastic Treeのフロントマンとして唯一無二の存在感を放ち続ける有村竜太朗は、その一方で2016年に個人活動を始動し、自身が作り溜めていたデモ音源たちを軸に『個人作品集1996-2013「デも/demo」』『個人作品集 1992-2017「デも/demo #2」』という2枚のアルバムを発表してきた。UKロックやブリットポップ、シューゲイザーなど自身のルーツに回帰しつつ、時代を超えた普遍性を伴って独自の世界をより濃く表現している。

◆有村竜太朗 画像 / 動画

バンドと並行してさらなる個人活動にも期待が高まる中ではあったが、2020年以降のコロナ禍や、サポートメンバーの要だった盟友hiro (G)の急逝という予期せぬ事態に直面してしまう。一度足を止めざるを得なかったという有村が、再び歩き出すための第一歩となったのが、7月3日にリリースされた『re-arrange ALBUM「≒demo」』だ。

空間的な音像が特徴的だったこれまでのイメージから一変し、再生した瞬間に溢れ出すノイジーなギターと力強いビートに心が突き動かされる。メランコリックな空気や繊細さはそのままに、エレクトロサウンドからロックバラードになった「≒rentogen」、ツービートで駆け抜けるパンクに変貌した「≒jukyusai」、ガレージロック的アプローチの「≒mata,otsukisama」などなど、1曲ごとの変貌と斬新なアレンジに驚くはずだ。

レコーディングには、1stアルバムから参加しているTHE NOVEMBERSやTHE SPELLBOUNDの小林祐介、lynch.や健康でも活動する悠介、cuneやBLUEVINEの生熊耕治という個性派ギタリストたちが集結、それぞれのキャラクターを発揮した。結果、ソロ始動時からリズムを支える鳥石遼太(B)と高垣良介(Dr)とともに、有村の新しい扉を開いてみせている。自身を見つめ直すリアレンジという作業を通して、有村竜太朗が得たものとは? 仲間たちとの充実した制作を振り返りながら、じっくり語ってくれた。


   ◆   ◆   ◆

■残ったメンバーと僕とでこの個人活動を続けたい
■意味合いを持つ人に参加してほしかった


──既発曲のリアレンジによるアルバムを作ろうというアイデアはどこから出てきたんですか。

有村:ソロ名義のライヴでは、アンコールで本編と同じ曲を違うアレンジで演奏するっていうことをやっていたんですよ、曲数が足りないから。

──はい。

有村:そもそも個人作品に関しては僕、あんまり外を意識せず、内に内に向かって作っていて。ライヴでもわりと、“内省的に表現しているところを外から見て楽しんでもらう”っていうスタイルだったんですね。僕も演者としてそれを楽しんでいたんですけど、人間的には結構二面性があるじゃないですか。だから、アンコールでは来てくれた人と遊びたいという感じで、オーディエンスが声を出しやすいようなアレンジにして演奏していたんです。空き時間とかに、僕が適当にギターを弾きながら考えたラフなアレンジなんですけど、それはそれですごく自分たち的にも楽しかったし、面白くて。それが今回のアルバムの元になりました。

──それを、このタイミングで音源化したのは?

有村:2018年の『デも/demo #2』のあとは、Plastic Treeのアルバム作りに集中しようと思っていて。2020年3月にアルバム(『十色定理』)を出したんですけど、そのツアー直前に世の中の状況が変わってしまった。コロナ禍でバンドのツアーができなくなったり、ソロのライヴも中止になったり。しばらくは新たな制作に向き合う気持ちになれなかったんですよね。どちらかというと、配信ライヴとか新しいことにチャレンジするほうに神経を使っていました。そういう中で、セッションライヴからずっと一緒にやってきて、ソロもサポートしてくれていた……そもそも僕がソロを始めた理由のひとつでもあるギターのhiroくんが亡くなってしまって。ちょっと個人活動自体を…もうやめようというほどではなかったんですけど、どうやっていいかわからないなっていう気持ちになっちゃったんですね。


▲有村竜太朗

──そうですよね。

有村:今後の活動について、ほかのサポートメンバーやスタッフやいろんな人と話をしていたんですけど、やっぱりみんなかなり落ち込んでいて。今までhiroとやってきたことを終わらせたくないという気持ちは共通していたんですけど、なにせ空いた穴が大きかったから。なにから始めていいかわからないという気持ちで、悶々としている期間が続きました。その時に、ライヴでのリアレンジを思い出したんです。当時、「あとから聴き返しても意外といいね」っていうふうに、hiroを含めたみんなで言ってたんですよ。「いつか全曲、このアレンジでライヴをやりたいね」とか「“音源作りたいね」ってことを打ち上げとかでしょっちゅう話していて。4曲くらいはライヴ用にできていたし、実際に作る話も出てたんです。

──それがきっかけになったと。

有村:そう。新しく動き出すとっかかりのひとつとして、それを音源化するならすぐできるかもっていうことで始まりました。単純に“これやってなかったな”とか“あれやりたかったな”っていう素直な気持ちから、このプロジェクト自体の気持ちを外に向けていかないと、前に進めないみたいなところもあったりして。さらに、こういうアレンジですごく楽しいライヴができたら……なんていうか、頭で考える以上のもっと意欲的な部分が動くかなって。最初からそこまで考えてたわけじゃないですけどね。

──ソロを続けるための起爆剤というか、エンジンをかけるみたいな気持ちだったんですね。

有村:再起動するためっていうところはあるかなと思います。最初はもっと漠然と、ミニマムなプロジェクトとして始めたつもりだったんですけどね。たとえば、それこそ盤にしないで配信だけでもいいし、スタジオ一発録りでもよかった。でも、リアレンジのデモを作り始めたら、だんだん楽しくなってきて、作り込みたくなってきちゃって。ちゃんと音源作品として残したいなっていうふうに、半年くらいかけてですけど意識が変わっていきました。



──アルバムを聴いた時、すごく開けたロックアルバムだったので驚きました。それこそ1stの『デも/demo』は特に、竜太朗さんの世界を深掘っていく印象だったので。

有村:どっちも好きなんですよね。外に向けたアレンジをライヴでやってみた時に、個人作品でもカタルシスを感じて、どんどんテンションが上がっていく方向にもいけるんだっていうのは新しい発見でした。別に、一つの曲に対して一つのアレンジが絶対正解ってわけでもないし、アレンジの変化も楽しんでもらえたら面白いと思います。

──全体的に、サウンドがローファイに仕上がっていて。そこもロックアルバムだと感じた大きな要因なんですが、こだわった部分ですか?

有村:結果的にそうなった感じなんですけど、ローファイサウンドはすごく好きなんですよね。手作りでいろいろやっている感じを出したかったのはあるかもしれない。だから特に、今回のリアレンジに一番向いてる音質なのかなと思います。もともとは1990年代のガレージパンクっぽい音のアルバムも好きだし、もっとそっちに寄せてもいいなと思ってたんです。だけど、デモを作ってたらいろんなことがしたくなっちゃって。ガレージっぽくまとめるよりはちゃんと音の分離も考えつつ録っていきましたね。

──ミックスで調整したというより、録音段階でいろいろ試して?

有村:両方ですね。でも、最初のドラム撮りの時から、どうやってもローファイサウンドにしかならないなっていう印象はありました。アレンジ的にそれが正解だなって。


▲小林祐介(G)

──そして、小林祐介さん、悠介さん、生熊耕治さんという3人のギタリストが参加されています。音源やライヴにも参加されている3人ですね。

有村:そうですね。hiroが亡くなって、いろいろ悩んで……やっぱり残ったメンバーと僕とでこの個人活動を続けたいと考えた時に、当然ギタリストが必要になるわけで。バンドみたいに完全に固定メンバーというわけじゃないんですけど、できるならずっと続けたいし、一緒にやるにあたって意味合いを持っている人に参加してほしかったんです。小林くんは前から僕ともhiroとも仲良くて、1stアルバムから参加してるメンバーのひとりみたいな感じだったので、引き続きお願いしました。

──生熊耕治さんと悠介さんは?

有村:耕治は僕と同世代で、なおかつ僕がhiroと10年以上やっていたセッションイベントにもよく出てくれてたり、仲良くしてくれてたすごいギタリストなんです。で、自分の中でもうひとりピースが足りないなと思った時に、声をかけたのが悠介くん。ちゃんと話したのはlynch.さんと対バンした時の打ち上げが初めてだったんですけど、すぐに仲良くなったんですよ。オルタナやシューゲイザーも好きだったりとか、Plastic Treeのことを好きって言って話をしてくれたり。あと、hiroのバンドte'の作品も全部聴いていて、hiroのギターがすごく好きって言っていて、それをhiroに伝えたらすごく喜んでいたんですよね。そういう経緯で、hiroが亡くなったあとのライヴのサポートとして参加してもらって。一緒に音を出したら、やっぱりすごくしっくりくる感覚があったんです。今回こういう作品を作るにあたって、どうしても悠介くんに参加してほしいってことでお願いしました。

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