WIRE01 9月8日@横浜アリーナ 【タイムテーブル】 18:00~ DJ TASAKA (TOKYO) 19:20~ MONIKA KRUSE (BERLIN) 20:40~ SECRET CINEMA (ROTTERDAM) 21:10~FUMIYA TANAKA (TOKYO) 22:30~ DENKI GROOVE (TOKYO) 23:00~ WESTBAM (BERLIN) 00:20~ URAL 13 DIKTATORS (HELSINKI) 02:10~ C.J. BOLLAND (BRUSSELS) 02:40~ HELL (MUNCHEN) 04:00~ JEFF MILLS (CHICAGO) |
『WIRE01 COMPILATION』 Ki/oon Records発売中 IKSC2-407 2,730(tax in) 1 hypersperd(short) 2 UFO 3 psychoLectro 4 thalysman 5 phoenix rising 6 perfect storm 7 you like that? 8 guru meditation 9 nothing's gonna change(lexy & k-paul remix edit) 10 909time 11 voice out 12 like this(wire mix) 13 route 27
| | 日本中のテクノ・アーティスト/ファンが横浜アリーナに集結する年に一度の祭典<WIRE01>が幕を閉じた。
以来、数日が経つというのにまだ名残りおしさが体から完全に抜けない。 ああ、またレイヴ病にかかってしまったようだが、とりあえず<WIRE01>のコンピに始終耳を傾けてその情景を思い出す。ヘッドホンから4つ打ちのベースが聴こえてくると、クラウドの熱気と幸福な笑顔、横浜アリーナを駆けめぐるグリーンのレーザー、おせじにも美味とは言えない売店の食事さえ、すべてが愛おしく思え、目を閉じては9月8日の至福な一晩を反芻せずにはいられない。
今年で3回目を迎える<WIRE>も、前売りは完売、数少ない当日券は開場1時間前に販売する、という有様。横浜アリーナの入り口付近に沢山の人が所在なさげにたむろしたが、彼らは当日券を買いそびれた人達なのだろうか。
そんな同士達の姿に後ろ髪ひかれながらも会場入りしたのが21:30。メガ・フロアにあふれる人混みをかきわけDJブースに田中フミヤの姿を確認する。いつも通りクールでタフな出で立ちだ。が、そのクールさがパーティという場にあまりそぐわない気もする。クラウドも少々、不完全燃焼の様子。“このままで終わってほしくはないな”という願いを持ちつつ、半分惰性でリズムをとっていた私の耳に、突然強烈なキックが飛び込んでくる。と、同時にクラウドの叫声…。 田中フミヤは確信犯的なDJだ。
前半の地味めの選曲が後半に生きる、生きる。刺激に飢えていた耳に電子音が一音一音、クリアになって脳みそを刺激する。しかし、そんな会場の盛り上がりにフミヤは最後まで迎合することなく、始終淡々とプレイし続けた。そして、そのマイペースさがかえってフミヤのカリスマ性を感じさせるのであった。 | ▲卓球、TASAKAはいつも真剣 | そんなフミヤのプレイを堪能しつつ、会場にジワジワとくるざわめきを感じた。フミヤの盛り上がりとは別の空気だ。“これから何かが起こる”というあの感じ。アリーナを見渡すと、半分のクラウドはフミヤのいるDJスペースの方を向き、残りの半分は反対側にある、誰もいないLIVEスペースの方向を向いている、という奇妙な光景が目に映る。
と、その時LIVEスペースに明かりが点く。現われたのは、そう、電気グルーヴ(以下、電気)。「誰だ!」「電気グルーヴだ!」のMCと共に、卓球ともうすっかり電気になじんだDJ TASAKAに光が当たる。
そして、瀧が登場。すごい歓声。今年のコスチュームはフェティッシュ系カウボーイとも呼ぼうか、編み上げのレザー・ショーツにバンダナを巻き、手にはなぜかミラーボール、という出で立ちだ。もはや、電気は、結成10年目を迎え、世界のテクノ界、いや日本のミュージック・シーンに"ブランド"として存在するまでになった。巨大なオーケストラの指揮者のように、瀧が手を耳にかざすとクラウドは叫び、瀧が両手をあげると会場もそれに従う、といった有り様だ。 | ▲今年はチョット地味なピエ~ル瀧 | (今回のWIRE01参加者の多くが感じたことだろうと思うが)瀧が歌わなかったのは意外であったし、おそらく多くのクラウドは電気にネタ系ライヴを求めていたのだと思う。けれども、「スコーピオン2000」~「フラッシュバックディスコ」~「wire wireless」と繋げていく流れのある構成は電気のライヴとしては新しい試みだと思うし、電気のテクノ・アーティスト的な面が顕著に現われたライヴであった。
待ちわびていた電気のライヴが終わり、一息つこうと思うがま早い。"ウエストバーム"のサンプリング・ネタと共に、パーティの王者、ドイツ・テクノ界の重鎮、ウエストバム様の登場だ。レスラー体型&坊主頭の容姿に似つかわしい、低音を効かせたplay、スクラッチを駆使した派手な技。そしてパーティを知り尽くした幅広い選曲と、クラウドの要求に速攻応えるテクニック。このノリが最後まで続くのだからたまらない。スケジュールも半ばだというのに、ついつい彼の時間に多大なエネルギーを費やしてしまった。もちろん、バムの方でもそんなクラウドへのレスポンスを忘れない。DJブースを囲む柵の上に座ったり、レコードを頭に乗せておどけてみたり、ついにはフロア中を駆け回るパフォーマンスを披露。そして最後にははまりすぎ、のプロレスラー・コスチュームを着てフィニッシュ。
ここでしばし休憩をとり、次の石野卓球まで息をととのえる。 卓球のDJで感じたことは、やはり<WIRE>は卓球のものなのだな、ということである。クラウドのノリはここで統一感を持ち、DJブースにはジュリ扇を持った瀧が、そしてバムが卓球の側で楽しんでいた。卓球の方でも海外のヒット曲をいち早く取り入れたプレイで会場をハッピーな空気で包み込む。そう、皆が卓球と共にパーティを祝っているという統一感だ。 | ▲デトロイト・テクノの帝王、Jeff Mills | そしてトリは、デトロイト・テクノ / ミニマルの帝王ジェフ・ミルズ。間違いなく今年は彼が圧勝だ。ジェフの得意技「Change of Life」のカット・インで観衆は狂喜。 この異常な空気をかぎつけてか、一度は減ったはずの会場がなぜかまた人で溢れ、通路は次々と入場制限でふさがっていく。
これまでのDJがディスコやトランスといった複数のジャンルにまたがったクロスオーバーなプレイを披露した中、ひたすらミニマルを極めた彼のこだわりが際だつ。単調なリズムが、ジェフの手によって幾層にも重なり、トリッキーなサウンドへと変化する。そして総体として、もはや"ジェフ・ミルズの音楽"としか形容しようがない世界へと会場をいざなっていった。
DJのプレイ聴きたいのなら、クラブに行けばいいじゃないか、と考える人も多いと思う。しかし、レイヴの醍醐味というのは単に音楽を聴くことだけが目的ではなく、そこに存在してパーティの一員として楽しむ、ということが重要なのだ。揃いのLOOPAやWIRETシャツで踊るオーディエンス。各アーティスト、オーディエンスがパーティの一部となり、音楽と溶け合う集合体がレイヴでありWIREだ。そしてこの感動は、wireに参加しないことには理解できないものだ、と確信している。 |
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