カントリー界の歌姫が笑顔で振り返る充実の1年

ポスト
LAUNCH JAPAN: Discover Music - Read


カントリー界の歌姫が笑顔で振り返る充実の1年

 

 

Faith Hillと話していて誰もが最初に気に留めるのが彼女の笑顔だ。それは自分自身とまわりの状況を、完全に快適なものと捉えている女性の穏やかでリラックスした笑顔である。そうした快活な態度は見せかけのものではなく、彼女には微笑むだけの理由がたくさんあるのだ。

わずか7年間でミシシッピ州の小さな街にいた隣の家の可愛い娘ちゃんが、世界的にグラマラスなディーヴァになったのである。事実、HillはVH-1の番組Divas Liveで尊敬するヒーローたちと共演し、数々の音楽賞を勝ち取ったのはもちろんのこと、アカデミー賞にも登場したほかスーパーボウルで国歌を歌い、4枚のアルバムを合計で1200万枚以上も売り上げたのだ。キャリアでの成功にとどまらず彼女は'96年にツアー仲間で“ソウルメイト”のTim McGrawと結婚、その後の2年間にMaggieとGracieという2人の娘を出産している。

レコーディング活動を3年間休止したのち、'98年にはサードアルバムの『Faith』を発表、シングル「This Kiss」の力もあってメインストリームで脚光を浴びるに至った。'99年にリリースされた最新アルバム『Breath』で、彼女はアメリカでいちばんホットなニュースターのひとりという運命を背負ったのである。そして、こうした経験を経てもHillは自分自身に忠実であることに変わりはなく、ものごとを自分のやり方でこなしてきた。

私の音楽が拡大し、イメージが変わっていくことをすべての人が受け入れているわけではないわ」とHillは認める。「だけどたいていの場合は、音楽産業はとても誇り高い世界だと思う。本当にそう感じるの。私はカントリーミュージックを離れたわけじゃない。“クロスオーヴァー”という言葉は私にとっては受け入れるのが難しいものよ。なぜってクロスオーヴァー(横切る、渡る)というと、何かを後に残してもう戻らないって感じがするの。私自身にはそんなつもりは全然ないのにね

私のやっていることが気に入らなかったり、賛同できなかったりする人たちはいるでしょうけど、その人たちのことを気にかけてはいられないわ。彼らのための音楽を作っているわけじゃないもの。私はファンのために音楽を作っているし、自分がやりたいことをやっているのよ。それが私にとってリアルなことなの。自分の音楽が受け入れられていることは感じているけど、その状況がたとえ変わったとしても気にしちゃいられないのよ。受け入れられるというのは素晴らしいことだけど、自分の音楽が受け入れられなくなるときが来ても、私は自分のやり方を続けるしかないでしょうね。挑発するつもりで言ってるんじゃなくて、それがありのままのかたちなのよ

受け入れられるかどうかは、もはやHillにとっては問題ではないようだ。彼女は大変な人気者になり、顔も知れ渡ってしまったため、公衆の面前で匿名を保つのはほとんど不可能である。「1年前と比べても全然違っているし、難しいことになっているわ。そうした類の名声はまったく初めてのことだから、まだ対応に苦労しているの。それも私の人生の新しい一部なんだし、優雅に対処しようとしているわ。私が追求しているキャリアのひとつの側面でもあるのよ。だからといって引きこもるわけではないの。行きたいところには行くし、とにかく優雅に対処するつもりでいるのよ。ナッシュヴィルに住んでいて素晴らしいのは、Timと私はどこにでも出掛けられるということね。みんなは私たちを知っているし、親しげな表情や何年も知っている人たちを見かけるのは素敵なことよ。ナッシュヴィルだと多少はノーマルなライフスタイルが送れるわね

Hillは疑いもなくスーパースターだが、女性としての内面は変わっていないと彼女は主張する。そして音楽と美貌の両面で彼女が成し遂げた変化をめぐる、さまざまな議論を一笑にふしたのだった。「私は成長しただけよ。ファーストアルバムを録音した時は25歳の若さだったけど、今では32歳になった。その間に培った自信や人生の経験がアルバムを作るたびに重要な役割を果たしてきたのは確かなことね。変化を受け入れるのは楽しいことよ。いつも同じ人間でいるというのは退屈だわ。女性というのはいつでもヘアスタイルを変えたり、いろいろなファッションを試したりしているでしょ。それは楽しいからよ。簡単に色んな可能性を試せるというわけ。ファーストアルバム以来たくさんの変化があったけど、私は素材の選択にもより深くかかわるようになっているわ。スタジオにいるのもずっと快適になってきてるしね。でも人間としての私は変わっていない

私の見かけのせいで、みんなは私が自分を自動的に変化させているように誤解しているのよ。私は自分が誰だかわかっているし、そのことは重要だわ。アーティストとしては今でも成長を続けていると思うし、昔から今までだけじゃなくて、これから将来に向けてずっと成長していくつもりよ

Hillは自分の音楽的なテイストは何年もずっと変わっておらず、それは彼女が常に素晴らしい歌のファンであり続けたからだと付け加える。「自分を感動させてくれる素材を見つけようと努力しているだけなの。とってもたくさんの曲を聴かなくちゃいけないから、そのプロセスはとても難しいように思えるでしょう。でも正直言って、振り返ってみればそれほど困難なことではなかったわ。なぜなら素晴らしい歌というものは必ず浮上してくるからよ。もちろんレコーディングしなかった曲もあるけど、それはその歌が素晴らしくなかったからというわけじゃなくて、その時に作っているレコードにフィットしなかったというだけのことなの。『Breath』ではたくさんの曲を録音したから、どの曲をレコードに残して、どれを外すかを決めるのにとっても苦労したわ。私はファンが最初から最後まで通して聴いてくれるようなレコードを作りたいの。2、3曲だけを選んで残りの曲は聴かないというのは嫌。全体としてひとつの作品になるようにしたいのよ

最終的に『Breath』に収録された作品群は、自身でトーンを決めるような曲だったわ。あらゆる人にとって何か意味のあるものだと思う。ファンにもっと私のことを伝えたかった。私の好きな音楽のスタイルを多く取り入れてね。特に最後に入っている“There Will Come A Day”は、私が歌いながら育ってきたような類の曲よ。誰が何と言おうと、私は自分のルーツからまったく遠ざかってはいないわ。私が音楽的に楽しめるものをできるだけ多くカバーしている素材を、いつでも可能なかぎり探そうと努めているの。私は音楽のファン、それだけのことよ。私をインスパイアする音楽も、私がやりたいと思うような音楽もたくさん存在してるわ。スタジオに入ったり、ステージに上がったりするたびに、私は何かを学ぶし、それを次にやろうとすることに取り入れていくのよ

だが、次のことを考える前に、Hillは毎日を楽しんだり想い出に浸ったりする時間を費やしているようだ。「この1年ほどは素晴らしい時期だったわ」と彼女は熱っぽく語る。「スーパーボウルで国歌を歌ったのは、私のキャリアにおいて重要な瞬間だった。今でもあの時の気分を思いだすのよ。Diva Liveに出演して、世界で最高の歌い手たちと同じステージで歌ったのも最高だったわ。たった一晩のうちにあれだけの人たちと出会って、同じステージに同時に立つなんてことは、他の場所ではできないでしょうね。“Let's Make Love”のビデオをTimとパリで撮影したのも、信じられないほどスペシャルな出来事だったわ

オスカー出演はクールな出来事だったわね」と、2000年の彼女にとってもうひとつのキャリアの記念となったイヴェントをHillは振り返る。「ニューヨークからの飛行機を降りたところだったの。家族と週末を家で過ごせるのにわくわくしていたわ。街へ出掛けて何か楽しいことをするつもりでいたのよ。そのときLili ZanuckとBurt Bacharachからの電話が入って、日曜の夜の受賞式にWhitney(Houston)の代わりに出演できないかってね。少し考えたいし、夫にも相談したいと答えたわ。それでTimと話をしてやることに決めたの。約2時間後には飛行機に飛び乗っていたわね。控えめに言っても嵐のような慌ただしさだったわ。自分がやっていることがあれほど注目された瞬間は初めてだったから、エンジョイするチャンスもないままに終わってしまったの。確かに素晴らしい経験だったけど、もっと準備する時間があればよかったと思うわね。でも、たまにはああいったシチュエーションも悪くないわよ。あまり考え込まずにとにかくやるしかないんだから

しかし、この1年のHillにとって最大のハイライトは、夫と一緒に回ったSoul2Soulのツアーだったようだ。「ファンのリアクションが驚くほど良かったの。カントリー音楽のファンは素晴らしいわ。たいていのファンは私たち両方のキャリアを初期からずっと見守ってくれていて、2人の変化や成長も知っているし、その一部になっていることを誇りにさえ思ってくれているのよ。良い時も悪い時も私たちの歌が彼らの役に立ってきたことや、みんなのいい想い出になっていることを知るのは格別の気分だわ。“This Kiss”のヒットとSoul2Soulツアーのおかげで、新しいファンがずいぶん増えたけど、彼らの反応も圧倒的なものよ。こんなリアクションこそ、私が子供の頃からずっと夢に見続けてきたことなの

Hillは自身のキャリアにおいて、まだまだ想い出を作ることになりそうだ。実際にファンが彼女を映画のスクリーンで見る可能性は高いだろう。「映画に出たいの、本当に優れた映画にね」とHillは認める。「たくさんの脚本を読んでいるところで、とても気に入ったものがいくつかあるのよ。私にとってはまったく未知の世界だから、有利なことも不利なこともあるでしょうね。有利なのは強引にドアへ足を突っ込めること、不利なのは本当にいい演技をしなくちゃいけないことよ」と彼女は笑って言う。「だから、自分自身の人間性からあまり離れていないと思える作品を探しているの。私がすぐに思いを込められて、ナチュラルに演じられるキャラクターでなくちゃだめでしょ。私はファンの人に「彼女はこんなこともできるんだ」って思ってほしいんだけど、何もそれは音楽的なことでなくてもいいのよ

キャリアだけがHillの関心事ではない。家族ともっと多くの時間を過ごし、もっと多くの子供を作るために、彼女はツアー活動をしばらく休止する計画だという。「私にとって最も重要なのは家族なの」と彼女は誇らしげに強調した。「Timにとっての良き妻、良きパートナーでいることが何より大事。たしかにキャリアも大切だし意味は大きいけど、私にとって家族がすべてなのよ。Timと私は人生の一部としてお互いを受け入れようと努めているの。私たちは毎朝一緒に起きて1日ずっと過ごし、そしてその時に目の前にある事態に対処するのよ。幸せになる努力をすることが大事だと思うわ。眉をしかめるより微笑むほうが簡単だけど、人間はときとして気が変になるよりも幸せになるほうが難しかったりするのよ。狂気とはそれくらいとなり合わせのものだし、ときには怒るということがずっとたやすいと思えるの。だけど私は笑顔でものごとに対処したほうが報われるということを学んだのよ。私は幸せ、そしてそれが微笑みの源なのね

 

この記事をポスト

この記事の関連情報