人畜無害なくらいなら嫌われた方がいいね

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人畜無害なくらいなら嫌われた方がいいね

(未だに)美しいからといってでGavin Rossdaleを嫌ってはいけない。'94年のKurt Cobainの自殺によって悲しい空中分解を遂げたグランジ。その残骸から現れた彼のバンドBushは、このジャンルのヘビーでドラマチックなサウンドに頑固なまでにこだわり続けている。

音楽界が急激にスケートパンクやスカの明るい方向に移り変わっていった中で、これは並大抵の芸当ではないだろう。しかし、Bushに有利に働いた大きな利点が二つあった。

一つは、大げさだがどうしようもなくキャッチーなデビュー作(『Sixteen Stone』は、罪深き快楽「Everything Zen」「Little Things」「Glycerine」を生み出した)、そしてもう一つはRossdale自身である…彼は、おそらく'90年代のロック界最大の男性アイドルだろう。

このあまりにおいしい組み合わせは、これまた'90年代ロック界最大の女性アイドルであるNo DoubtのGwen Stefani(Courtney Loveのファンには申し訳ないが、Rossdaleの親友でもあるこのグランジの女神は、アイドルの範疇に入らない)とRossdaleとの親密な関係や、まったく目新しさの感じられなかった2作目『Razorblade Suitcase』によっても、いかほども傷つくことはなかった。Bushはある方程式を見つけて、抜け目なくそれに食らいついた。そして批評家たちの酷評にもめげず、驚くべき粘り強さでその人気をキープし続けた。

そしてミレニアムを目前にしたその時、Bushを最も手ひどくこき下ろした者さえもが、このバンドが'90年代をうまく乗り切ったと認めざるを得なくなった。今もStefaniと幸せな関係を続けているRossdaleは、ステージでの存在感も、カバーボーイ顔負けの美しさもまったく失っていない。

バンドの他のメンバーたちも変わらず(Dave Parson:ベース、Nigel Pulsford:ギター、Robin Goodridge:ドラムス)、急激な変化もなければ、脱退騒ぎも、バンド内の争いすらない。このバンドのパーフェクト記録に傷をつけた唯一の問題は、契約違反の申し立てと次の3rdアルバムのリリース権をめぐる、所属レーベルTraumaとの法廷闘争だろう。

法律上の問題を解決して、ついに待望の3rdアルバム『The Science Of Things』のリリースへの道が開けたBushは、再び意気揚々とシーンに登場した。

トレードマークであるBushサウンドから大きく逸脱することはないものの、1stシングル「The Chemicals Between Us」でも明らかなように、この新作では、エレクトロニック・サウンド風の新機軸が加えられている。

しかしRossdaleは、人生とは決まった設計図に従うことに他ならない、と割り切っているようだ。アルバムのタイトルもこのことを表していると彼はいう。

(Scienceは)本当は、人々はほとんどの場面で方程式に従って生きている、という意味なんだ」と彼は説明する。

「他人との付き合い方、望まない状況に置かれたときに自分の居場所を見つける方法。言い換えれば、その場所に自分が存在している理由が分からなくても、状況を判断して理解することができるんだ

彼は続ける。

愛情と本能を別にすれば、ほとんどの物事は説明がつくことばかりだよね。ほとんどの物事に論理を当てはめることができるっていうか。僕はそういう風に、明白な“科学”を使ってあいまいな“物事”を分析していくのが好きなんだ。つまり、どうしたら物事がうまくいくか、うまくいかないときがあるのはどうしてかってことをね

Rossdaleは、音楽業界の法律問題に縛られていた時期のことをこう語る。

アルバムの内容には別に何の影響もないと思うよ。単にリリースが6か月も遅れただけでね」と、彼は肩をすくめる。

どんなことだって一緒でさ。何かの理由で物事が妙な方向に行くことはよくあるけど、結局はいい方向に向かっていくんだよ

あの問題で変わったことって、ほとんどないと思うよ」とRossdaleは続ける。

つまり大事なのは、いいレコードができたかどうかってこと。いい作品なら、一度発表されてしまえばあとは同じさ。例えば僕の好きなアルバムの中でも、発売日まで思い出せるものなんかないしね。僕らとファンにしてみればちょっとイライラさせられたけど、少なくとも今はもう解決してるんだ。僕らが意地を張り続けていたら、問題がもっと長引いて、ひどいことになっていたかもしれないよ

『Science』発売のゴーサインを待っていた活動停止の間に、Rossdaleは自分が怒りを感じていたこと、さらに多少の強迫観念に取りつかれていたことを認めた。

僕は常に作曲や仕事をして、レコードのことを考え、問題に真っ向から取り組んでいた。気の休まる間もあんまりなかったよ。それが僕の不安感をさらに大きくして、Bushのキャリアを別の方向に向かわせたんだ。悪い面をあおって、問題をこじらせることになってしまったんだよ

だが、いい面もある。Bushはついに批評家の敬意を受けなくてもいい地点にまでたどり着いたとRossdaleは考えているのだ。

僕らは生き残れたと思う。前のアルバムで奴らを振り切ることができたんだよ」と彼はバンドが常に抱える批判者について言及する。

でも僕はね、両極端なバンドだってことをまったく気にしちゃいないよ。“まあ……人畜無害なバンドだね”なんて思われるくらいなら、僕らのことを大嫌いな奴がいた方がいい

Rossdaleは説明する。

僕らのことを本当に好きな人がたくさんいて、そうでない人もたくさんいる。その中間の層に取り入りたいとは思わないね。そこから得られるものはとても少ないと思う。だから、僕らは今やっていることをやり続けて、自分たちのできる範囲で変化していこうとするだけさ。それは達成できてると思うよ、そうだろう? このアルバムでも、僕ららしい音の中に当然いくつかの変化はある。それでも、Bushらしさが損なわれるほどじゃないんだ

僕らには、とても忠実ないいファンがいるけど、これはただカッコいいビデオを2、3本そこら中で流して得たものじゃないんだ。ツアーに出て演奏をして、みんなが実際に僕らを近くで見たり聴いたりできるようにした結果、獲得できたものなんだよ

Bushサウンドの確立に成功したこともさることながら、Stefaniとの関係のほうもうまくいっているらしい。このふたり、これほどの有名人カップルとしては珍しいくらい固い絆で結ばれている。

同業者と一緒にいられるのは心強いよ。ただマズいのは、ふたりとも同じくらい忙しいから、時間を見つけるのが大変なんだよね。だけど相手が経験したいいことも悪いことも理解できるだろ、そこがふたりの絆になってるんだよね。つまり、お互いをとてもよく理解できるってこと。こういう相手とめぐり会えて良かったよ

公私ともに絶好調といった感じのRossdale。だが、Bushの成功はバンドの人生観を多少なりとも変えてしまったのではないだろうか。

僕らは全員いい生活をしてるけど、それについてはみんなずいぶん感謝してるんだ。僕らはいつも、まわりで自分のことを特別だと思ってる奴がいるとすぐさまやっつけたものさ」とRossdaleは反発する。

でも、あまり長くこんなことをやってられる奴はいないね。ときどき、スケジュールがあまりにきつくて、すぐにかんしゃくを起こすようなことがあるけど、1日20時間も働けば誰だってそうなるだろ…2年もすれば、我慢も限界になってくるよね

このカリスマ的なフロントマンはちょっと考えてから、自分をたしなめる振りをして続けた。

概して、僕らはとても親しみやすくて、気安い感じだと思うよ…もうちょっと手抜きしてもいいのかもね、実は!

by Wendy Hermanson

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