フォークはフォークらしく、ロックはロックらしく
イギリスのロンドンという都市が、Indigo Girlsのような生っ粋のアメリカ育ちのデュオのニューアルバムの誕生の地となるとは、誰にも予測しえなかっただろう。 しかしIndigoのメンバーであるEmily SaliersとAmy Rayは、Sinead O'Connorのバックバンドとして最も良く知られるイギリスのバンド、Ghostlandと共にロンドンでジャムセッションを行なっている時、彼らから大いに触発され、アメリカで行なわれる予定だった彼女達の7枚目のアルバム『Come On Now Social』のレコーディングに、そのメンバーを起用することを即座に決めたのである。 GhostlandのドラマーであるJohn Reynoldsがプロデュースした新作は、幅広い音の領域を網羅しており、このグループには馴染み深いフォークとロックというスタイルが、刺激たっぷりのオープニング曲「Go」から、覚えやすい瞑想感漂う「Fay Tucker」まで全曲にちりばめられている。 Ray曰く、ReynoldsとエンジニアのTim Oliverの助けがなければ、彼女とSaliersが 『Social』に参加したメンバーは、ReynoldsとGhostlandのメンバー、Caroline Dale(チェロ)、Clare Kenny(ベース)、Carol Issacs(ピアノ・オルガン)の他にも、Natacha Atlas、Luscious JacksonのKate Schellenbach、Meshell Ndegeocello、Sheryl Crow、そしてJoan Osborneといったゲストたちが含まれ、特にOsoborneはこの新作の4曲に貢献している。 RayとSaliersと彼女の最初の出会いは、数年前にニューオーリンズで一緒にプレイしたことにさかのぼるが、今回のアルバムでのコラボレーションに結びついたのは、'99年3月にキューバまで足を運んだ時のことだった。 「Amyと私はキューバの人々との文化交流の代表団に加わるような形で出かけたの」とSaliersは語る。 「Joanも参加メンバーの1人だったので、その時にもっと親しくなったわけ。『あなたってすごいわよね。私たちのレコードでも歌ってくれない?』と言ったら、彼女は『もちろん』って。それで、何かいいアイディアがあればとあの4曲を渡したんだけど、次に彼女がやってきた時はあっと驚かされたわ。結局4曲全部に参加してもらったの」 「彼女はもうバンドの一員よ」とRayは笑いながら付け加えた。 「すごく初期の頃の影響としてThe Bandはとても好きなの」 「あの曲は私たちの昔のドラマーの1人だったJerry Marottaのスタジオでレコーディングした…GarthとRickが来てくれて、みんなでライヴで演奏したのよ。そのあとで私はヴォーカル部分をやり直したけれど、彼らのヴァイブといったら…もう言葉では説明できないくらい。信じられないほどすばらしいの。彼らと演奏するのは大、大、大好き。Garthのことも大好きよ。彼の物語るような歌は本当に見事としか言いようがないし、知性に富んでいて、心がしめつけられそうになるわ」 では彼女たちの語り部としての力量はどうだろう。SaliersもRayも『Come On Now Social』が、ソングライターとして成長を続ける彼女たちにとって、注目に値する一歩を記した作品だと異口同音に語る。 「私にとって最高の曲を書くということは、つかみどころのないものを探求するようなこと」 「時々自分の曲の中でもかなり秀作だと思えるのがあって、私もついにその域に到達できたような気になるの。でも、実際には一度もたどり着いてないのよ。“OK、これこそ最高の曲”と言えるところまではね。ただ、今回はとても満足できるアルバムだわ。過去の作品と比べてまた一歩成長が見られると思うから、いい気分よ。一歩一歩進んでいくしかないし、成長し続ける努力をするだけよ」 「私は長いこと曲作りに悪戦苦闘してきて、自分が基準に達してると感じたことがなかったの。グループ内でさえもよ。だってEmilyはあんなにすぐれたソングライターなんだもの」 「このアルバムでは、とても明確なものがあって、とにかく無我夢中でやったわ。いつものように5曲とかじゃなくて、20曲書いて、そこから本当に気に入ったものを選び出した。だから今の自分の状況には満足してる。でもきっと1年後には“もっと良い曲が書けるはずだ”って考えるようになるんでしょうね。そうなることを願っているし。だってそうであるべきでしょ。自分の今の状況にいつまでも満足しているべきではないのよ」 |