ラテン界の御曹司は現実主義
Desi Arnaz Jr.、Frank Sinatra Jr.など、大スターの子供であるという事実が落とす大きな影に脅かされ、彼自身のキャリアが伸び悩んでしまうのはよくあることだ。だがEnrique Iglesiasは当分の間、その名前の呪縛に悩まされずに済みそうだ。 実のところ公式全米デビュー盤となったアルバム『Enrique』で、彼はラテン界の大物歌手である父Julioや、実の兄であるJulio Iglesias Jr.と同じ場所に身を寄せるよりも、明らかに当代ポップシーンのヒットメイカーたちと肩を並べることに、より意識を注いでいたのである。 「勘弁して欲しいよ」Iglesiasはため息まじりに言う。 「僕は誰にもライバル意識なんかないよ。みんな、時間の経過につれて僕が親父をライバル視してるって言い始めたんだよね。最初のうちは単なる比較だったんだけど、しまいには対抗しなくてどうするってけしかけられたりしてさ。もうウンザリだよ。笑い話にもなりゃしない」 「家の中にいつも音楽が溢れてたとか、家族がみんな何かしら楽器をやってたとか、そんな環境で育ったわけじゃないからね。むしろその逆だったと言ってもいいくらいだよ」と彼は言う。 「本格的に曲を書き始めたのは12とか14とかで、まだ全然幼くて…子供の頃の僕は凄く引っ込み思案だったんだ。だからいつも自分の部屋にこもってはひたすら曲を書いてばかりいた。17の時にはバンドと一緒にレコーディングを始めたんだけど、18の時にソロでレコード会社との契約が決まったんだ」 このアルバムは5曲のヒットシングルを生み出した。同じ言葉を母国語とする人々に熱狂的に受け容れられたことで、勿論彼が気を悪くしたはずもない。 「ラテンじゃないんだ、こいつはポップなのさ…メインストリームじゃなきゃアメリカではNo.1にはなれやしないんだから。リアリスティックに行こうよ。もし僕がこのアルバムで成功したとして、それがラテンテイストのせいだって言うなら、このアルバムでその部分を支えてるのは僕だ。僕はラティーノだからね。でもこのアルバム自体は非常にメインストリームな内容なんだよ。君の言ってるムーヴメントっていうのがそういう風につながるなら、それはそれでグレイトだ。でもそうは言っても、いまアメリカで街を歩いていたって、みんながそこら中でサルサを聴いてるってわけでもないし…」 「流行にされちゃうのは凄く怖いんだよね。何故って…僕は永続的なものとして考えたいんだ。ずっと長いことそこに在り続けるものとして捉えて欲しいんだよ。単なるひとつの音楽形態で、ポッと出てきたと思ったらそこで終わり、って言うんじゃなくてね。ラテンミュージックには数多くの色んなスタイルがある。僕はそれをみんなに少しずつ発見していって欲しいんだ…でも結局のところ、この世界がステキなのはさ、曲が良くてアルバムも良ければ、どんな事があったって最後には必ずちゃんと生き残っていられるってところだよね」 by Stepen Peters |