「お定まりのロックンロール・バンドになる気はさらさらなかった」 と、SlipknotのパーカッショニストShawn Crahanはいう。彼は増えつづけるファンの間では、ピエロの顔の「6」として知られる。 「自分たちが聴きたい音楽、プレイしたい音楽、ファンとして買いたくなる音楽をやると決めていた。何もかも嫌になっていたんだ。それまでいたバンドには全部嫌気がさしていた。そこで公式も方程式も、問いも答えもみーんな捨てちまって、さあ、フィーリングの合うことだけやろうぜ、それでどうなろうと誰がかまうもんか、と思ったのさ」ところがどっこい、かまう人がいたのである。昨年、どこからともなくわいて出た――いや一応アイオワ州デモインなのだが、ヘヴィメタルなどお門違いの場所――Slipknotの2ndアルバム『Slipknot』は、米国だけで売上50万枚となり、ヨーロッパ、日本、オーストラリアでもかなりの売れ行き(セルフリリースの1stアルバムは、今ではコレクターズアイテムだ)。昨年夏のOzzフェストではショウの人気をかっさらい、秋にはCoal Chamberのサポートアクト、また最近ではヘッドラインとして小規模なツアーを行ない、いずれも観客を熱狂させた。 バンドの驚異的成功は、ワン・ツー・パンチで繰り出す強烈なヘヴィサウンドと、どぎついライヴショウによるところが大きい。9人のメンバーはそれぞれ名前の代わりに0から8までの番号で呼ばれ、お揃いのオレンジ色のオーバーオールを着て、ハロウィン物からCrahan独自のぞっとするようなピエロまで、様々な気味悪い仮面をつけている。そしてステージ狭しと互いにガンガンぶつかり合うのだ。Crahan自身、WCWアプローチのライヴパフォーマンスのおかげで頭や目、背中、腕など傷だらけだ。
奇をてらった大袈裟なステージがバンドのサウンドより受けているのでは?と訊くと、Crahanはこう答える。 「オレたちが売れたのは音楽があってこそだし、今だって音楽が一番大事に決まってる。ほんとだぜ。さっきもイタリアで5000席の会場がソールドアウトになったと言われたばかりさ。しかもオレたち、イタリアには行ったこともないんだぜ。向こうではショウのことは知られてないし、音楽が受けてる証拠じゃないか」
確かにこれほど商業的でないサウンドのバンドがメインストリームとなったのは、SlayerやPanteraの輝かしい時代以来のことである。Slipknot は全米放映のテレビ番組『Late Night With Conan O'Brien』にも進出を開始し始めた。 「初めからオレはマネジャーやみんなに、Slipknotを出してくれる番組があるとすればConan O'Brienだね、と言ってたくらいさ」 とCrahanは満足そう。 「Conanは新しいキワモノが好きなんだ。どういう結果に終わろうと、Slipknotを出演させる番組があるということ自体、オレたちのようなバンド全体にとって大成功だと言いたいね」 なんと、いつもは言いたい放題のCrahanにしては謙虚な言葉だ。「Slipknotのようなバンド」など1つもありはしないというのに。メジャーレーベルのタレントスカウト担当者が、デモインで2匹目のドジョウを探していると言われるくらいなのだ。そんなことにはおかまいなく、Crahanは自分たちの使命遂行に集中している。それはお上品な音楽ファンに揺さぶりをかけること。 「できるだけ多くの人々を感染させたい。いろんな人種や言語、年齢の人々をね。それがオレたちにとっての成功なのさ。互いに憎みあってる人々を一堂に集めるんだ。メタルなんか大嫌いというお堅い連中も一緒にして、とにかくエネルギーを発散させる。それがオレたちのねらいなんだ」
by Don_Kaye
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