【ライヴレポート】ν[NEU]、完全完結「俺たちの希望はみんなです。気づけてよかった」

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ν[NEU]が1月4日、渋谷公会堂にてラストライブ<since2009〜2025 ν[NEU] FINAL LIVE『エンドロール 〜何よりも大事な君へ〜』>を開催した。同公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。

◆ν[NEU] 画像

ν[NEU] の旅が遂に“ゴール”を迎えた。活動期間5年を経て過去に一度解散を迎えるも、それぞれの人生を送る中で解散から5年後にメンバーが再会。これをきっかけに再び動き出してから5年、実に15年に及ぶ旅路の完全完結だ。その壮大な物語を締めくくる最後の日の記録となる。


2025年1月4日、“あの日(一度目の解散ライブ/2014年12月29日)”と同じ渋谷公会堂にて迎えたファイナルライブ<エンドロール 〜何よりも大事な君へ〜>。開演と同時にスクリーンに映し出されたヴィンテージな箱の中には数々の思い出の写真や映像が入っていて、最後は笑顔を浮かべたリアルタイムな4人の写真を収めて閉じられた。「あの日、1曲1曲を棺桶に入れるような思いで演奏していた」と、10年前の解散ライブを振り返るたびに語っていたメンバーの言葉がふと頭をよぎったが、先ほどまで見ていた箱は棺桶という寂しいニュアンスのものではなく、未来へ残すためのタイムカプセルか、もしくは宝箱のようなポジティヴな意味を成すものに感じられた。

思いを馳せる映像が流れる最中、静かにメンバーが各々のポジションにセットすると「PULSE」からライブはスタート。唯一無二を目指してガムシャラに生きた、誇れる過去に目を向けるように足並みを揃え、彼らの原点である曲から、完全完結の瞬間へのカウントダウンをはじめた。これ以降もセットリストには10年前の解散ライブの流れを汲んでいるところが散見できたものの、ここでν[NEU]が見せたかったものは、ただ思い出を辿るような懐かしさではなく、この期に及んでもなお進化を続ける姿だった。それは「カレイドスコープ」や「LIMIT」で示した、高みを目指す飽くなき精神を示した場面や、抜群なロックテイストで聴かせた「Jumping Lady!」と、いずれもパワーアップしたバンド力を発揮するところに表れていた。


「ν[NEU]ファイナルライブ<エンドロール 〜何よりも大事な君へ〜>、お越しくださりありがとうございます。あけましておめでとう! まさかこの挨拶から始まるとは思いませんでしたが、今日は本当に来てくれてありがとうございます」

と挨拶したmitsuは、来てくれたすべての人へ「最後の機会に会えて嬉しい」と伝えながら、ν[NEU]の復活は求めてくれる声があってこそ叶えることができたという感謝も言葉にした。最後ということを噛みしめるあまり、どうしても力が入ってしまうがゆえに漂っていた緊張感を打ち砕いたのは、メンバーの和気藹々とした様子をライブカメラで映しながらハートフルに包んだ「The 25th Century Love」、「妄想接吻」や「LAB」のようにν[NEU]が最も得意とするライブ感。中でも一際印象的だったのが、バンドサウンドのアタックを格段に強めた「NewWorld」だった。自然と表れる進化した部分と変わらない良さを絶妙なバランスでミックスしている。これが復活以降、過去を凌駕する勢いで築き上げてきた今のν[NEU]の姿であり、そこへ挑戦し続けてきた一つの成果でもある。


前日、眠れずに落ち着かなかったというmitsuと同じく、この日を迎えるにあたっての感情は集まった人の数だけあったことだろう。話を振られたЯeIが「今日がいちばん調子がいい」と言ったのにはヒィロも「嬉しい」と話したが、体の不調を訴えながらも一向に病院へ行かないЯeIがこれまでも度々話題に挙がっていたことから、「ν[NEU]完結後、病院に連れてきます! これがリーダーとしての最後の使命です!」と笑いを誘っていたところにも、いつもの感覚が蘇ってくるようでもあった。

そして、ライブのちょうど中心部、言わば心臓部分に位置していたのが、メジャーシーンでリリースした楽曲たち。直前のMCで、「ν[NEU]を体感する最後の時間をかけがえのないものにしよう」と、心を一つにしたことを画にするようにメンバーが中央を向き合いながら届けた「RED EMOTION~希望~」をはじめ、ポップな「恋模様」と激情を露わにした「最愛と渇望の日々」で愛情を届けると、「APOLLON」では人が生きる上で必要なことを優大に歌い上げていく。

そして、しばし暗転を挟んで披露された「ひとりじゃない」。途中、湧き上がる感情を堪えるようにメンバーのほうを振り返りながら歌うmitsuにヒィロが微笑みかけたシーンは、いよいよカウントダウンも残り少なくなっていることを実感させた。絆を感じさせる“ひとりじゃない”というストレートな言葉の持つ意味が、時を越えてこの先も生きていく上でのエールのような形になるとは、誰が想像できただろう。当時、「心や技術が追い付かずに自信を持って届けることができなかった」と語られたこれらの楽曲に力を持たせることができたのは、紛れもなくメンバーの成熟したこれまでの人生があってこそのことだ。


「ν[NEU]は10年前に完成していて、曲も出し尽くしました。バンドの気持ちも伝え尽くしたんですけど、ただ一つだけ、終わり方がよくなかった。長くやってきたバンドなのに、ファンの子を裏切る形で終わってしまったことが悔しくて、むなしくて、だから僕はガムシャラに他の仕事をしていたんだと思います。でも、解散してから10年かかったんですけど、ちゃんと終われそうです」

終盤に差し掛かった頃、ヒィロは、復活に至った胸の内をしっかりと伝えていた。まさしく、ν[NEU]の復活において最もエネルギーとなったのが、後悔を払拭するということ。そして、今度こそ、終わりという事実を納得のいく形でみんなと共有することだった。その心構えを十分に整えて臨んだラストスパートには、ν[NEU]のライブにおいてクライマックスを作り上げる楽曲が用意されていた。〇・×をサインして一体感を持って楽しめる「YES≒NO」ではゼロヒャクで活動してきた信念が引き立ち、“楽しいが一番であるべき”といわんばかりの「cube」「in my secret...」。極めつけと言わんばかりに畳みかけたキラーチューン「ピンクマーブル」でダンスフロアと化する会場は、これぞν[NEU]が作り出した伝説というべきものだったが、「みんなの気持ちが形になって見えるような曲」と表したmitsuもまた、曲中に何度も「ありがとう!」という言葉を交えるドラマチックな形を作り上げていた。


「生まれ変わってもまた、ν[NEU]やろう。そのときまた俺、リーダーやるから。そう思えば寂しくないよ。また会えるから、大丈夫」というヒィロの言葉が、最後の瞬間を迎える覚悟を与えくれたように思う。そしてmitsuの「そろそろ行くわ」の一言に、その背中を見届けるときが、ついにきたのだと感じた。「一生懸命歌います、みんなの心にずっと残るように」と突入したのは、「エンドロール」。曲調や綴られた言葉が力強いものであるように、ν[NEU]が描き出すエンドロールには、いかにもお涙頂戴な演出などない。そこにν[NEU]というバンドの持つ強さを感じながら、“もっと一緒にいられるよう解けない魔法で願いを叶えて”と何度も繰り返したシンガロングを通して、メンバーとν[NEU]フリーク(ファン)が心を一つにする景色が絶景であればあるほどこみあげるものがあった。しかし、この終わりに向かう実感こそ、完全完結に必要なものだったのだ。

「俺たちの希望はみんなです。気づけてよかった、本当にありがとうございました…これから俺らも、みんなもきっと、大丈夫です」と、「everlasting light」でウイニングランを全員で踏みしめるように一歩ずつ進んでいく。この日用意された楽曲を「僕らν[NEU]というものを見せるための曲」と話していた通り、「everlasting light」こそ、“何よりも大事な君へ”刻み込むべきメッセージであり、ν[NEU]が現在に見つけた生きざまでもあった。


そして、アンコールに応えてメンバーが登場すると、一人ひとり言葉を残していった。

「最後まで楽しかったです。解散のはずなんですけど楽しかったな、それくらい色濃い時間でしたね。この光景を目に焼き付けてこれからの人生、元気で生きます。皆さんも、元気で! 泣かなかった~、ごめんなさい(笑)。本当に、泣くよりも楽しいほうが強かったので。お互い元気に生きて行きましょう、バイバイキン!」──タクミ(G)


「今、タクミの言った“楽しかった”がすべてなんですよね。過去を大切に思ったり、今を大切に思ったりしてるから、復活って当たり前に賛否両論あったと思うんです。自分も個人的には否定的な人間だったから、簡単に賛同なんてできないと思ってたんですけど、彼らとたくさん旅をしていて、少しずつ普通のお兄さん? おじさん?(笑)からν[NEU]になっていって。気づけば毎回ライブがカッコよくなっていって。この復活劇は、相当上等なものになったと思います。だって、泣いたり笑ったりっていう空間をちゃんと今も作れてるから。それは、崇高なものだと思う」──夢時(サポートG)

「復活してよかった、としか言えないですね。みんな、ありがとう。生きていればまたみんなで集まれるかもしれないしね。……病院、行きます(笑)」──ЯeI(Dr)



「不思議と寂しくもないし、悲しくもない。僕らにとっての希望はみんなです。僕にとっての希望も見つかりました。僕は希望を探したくてヴィジュアル系バンドマンを目指しました。そして、希望を見つけられたから、今日で終われます。僕にとっての希望は、ν[NEU]でした。本当に、どうもありがとうございました」──ヒィロ(B)

「タクミがどこかで言ってたけど、ボーナスタイムみたいな、もう二度とないような時間をもう一度味わわせてもらった気分です。もう一度愛してもらうことは簡単じゃないと思いながらも、本当に楽しいと思える時間を過ごさせてもらいました。ありがとうございました。まあ、死ぬわけじゃないんで。俺も歌っていくし、みんな各々生きていくから、たまには顔出して、元気だよって言ってあげてください。一方通行じゃないよ、お互い思いあってると思うよ。泣いたり笑ったり、いい時間をありがとうございました」──mitsu(Vo)


そして、「泣いて悲しい終わり方だけは嫌だったんで、何の曲がいいかな?と思って、1曲選びました」と、正真正銘のエンディングを飾ったのは、「明日からも頑張って生きてこうな!」とmitsuが会場中に笑顔で語り掛けながら歌った「スプラッシュ!」だった。メンバーチェンジ前の、初期ν[NEU]から演奏し続けてきた楽曲ということにも触れていたが、この曲を通してこれまで繋げてきたすべてのν[NEU]という歴史に終止符を打つことができたようにも思う。演奏中、「10年前の解散ライブでは泣けなかった」と話していたヒィロが涙を流せていたこと、そこへタクミが思いかけず駆け寄っていたのを目の当たりにして、思わず“ああ、これで終われる”とふと心の中でつぶやいたのだった。こうして、ν[NEU]はしっかりと完全完結という目的と希望を伝えるという使命を全うし、ゴールテープを切った。

ν[NEU]が旅を続けていた目的は、希望を探すことだった。その答えを探す旅の終着地点で、ν[NEU]は人々の心の中で永遠となることができただろう。mitsuの言葉を借りるならば、「形がなくなっても、消えてないよ。思いだすたびにそこに存在してる」ということだ。この日からν[NEU]という生命体は、彼らに出会った人々の心の中で未来永劫生き続けていく新たな旅に出たのかもしれない。それぞれの人生の中で永遠となったν[NEU]へ、Bon Voyage。これからのそれぞれの人生が、よき旅になりますように。


取材・文◎平井綾子
撮影◎菅沼剛弘

■ν[NEU]<since2009〜2025 ν[NEU] FINAL LIVE『エンドロール 〜何よりも大事な君へ〜』>2025年1月4日(土)@東京・渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA) セットリスト

01. PULSE
02. カレイドスコープ
03. LIMIT
04. Jumping Lady!
05. The 25th Century Love
06. 妄想接吻
07. LAB
08. NewWorld
09. RED EMOTION ~希望~
10. 恋模様
11. 最愛と渇望の日々
12. APOLLON
13. ひとりじゃない
14. YES≒NO
15. cube
16. in my secret...
17. ピンクマーブル
18. エンドロール
19. everlasting light
encore
20. スプラッシュ!

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