【対談】Waive × ν[NEU]が語る、バンドを終わらせるということ「自分たちの棺桶に自分で花を入れている」
ν[NEU]が2025年1月4日の渋谷公会堂ラストワンマン目前の12月12日、最後の対バンに挑む。その相手とは、2026年1月4日の日本武道館ワンマンでの解散を発表している、同じくラストランの途上にある先輩バンドWaiveである。
◆Waive × ν[NEU] 画像
Waiveは2005年に解散し、丸5年後の2010年に再演。幾度かの再演を重ねつつ自身発明による“解散中”というステータスを保った後、2025年末の解散発表と同時に2023年4月に本格再始動した。ν[NEU]は2014年に解散、丸5年後の2019年に、2020年6月から1年の期間限定で復活すると発表した。コロナ禍でその計画は実現しなかったが、二度と復活しない“完全完結”を宣言した上で2023年7月から再始動し、5度目のメジャーデビューや多数のメディア露出を含め、華々しい活動を繰り広げて今に至る。ν[NEU]の設計図を描く頭脳にしてリーダーのヒィロ(B)がそういった復活劇の手本としたのは、Waiveだったという。
対談にはν[NEU]からはヒィロとmitsu(Vo)、Waiveからは田澤孝介(Vo)と杉本善徳(G)といった4人が参加した。解散とは? 復活とは? バンドという生命体にとって生とは何か? 死とは何か?を考えさせられる対話となった。
◆ ◆ ◆
■バンドのブランド価値を
■損ねない復活って何だろう?
──ν[NEU]の最後の対バン相手としてWaiveにオファーした経緯をお聞かせください。
mitsu:元々自分自身は、ν[NEU]が解散する前から、そして解散した後の自分のソロを始める前から、(杉本)善徳さんには個人的にお世話になっていて。考え方だとか、いろいろなことを勝手に吸収させていただいていたんです。バンドを解散した後でソロを自分でやっている人は周りにいなかったので、その時に浮かんだのが善徳さんだったので。当時は25歳だったかな? 自分は17歳から音楽を始めて、全部事務所の人にやってもらっていたから、「領収書って何ですか?」というレベルだったんですが(笑)。善徳さんはそういうこともちゃんと一個一個、馬鹿にせず説明してくれたんですよ。
──優しいですね。
杉本:当時は優しかったんですね。今だともう絶対に無視ですから。「Googleに訊いたほうが早いやろ!」って(笑)。
mitsu:10年前に出逢えたから滑り込めたんだと思います(笑)。当時、復活云々はあまり意識していなかったんですけど、「ソロってどういう感じでやってるんですか?」とか「こういう心境なんですけど」とかリアルタイムで話していて。振り返ると善徳さんがあの時おっしゃっていたことが、3年後ぐらいに“全部当たってた”みたいな。“魔術師だな”という感覚でいたんですね。
杉本:そう思ってくれるのはありがたいですね。
mitsu:自分は年齢的なことも含めて(Waiveが2005年に解散する)前の活動時は通っていなかったので、Waiveさんを認識したのはその時からなんです。でもヒィロは詳しく知っていたんですね。ちょうど自分たちがν[NEU]の復活を意識し始めた時に、ヒィロが“復活はどういう形がいいか?”と考える上で参考にしたのが実はWaiveさんでして。“解散中”という名目だったので、“復活”と言うのが正しいか分からないんですけども。
▲mitsu (Vo / ν[NEU])
──どんなところが特に参考になりましたか?
ヒィロ:僕ら世代の、俗に言うネオヴィジュアル系に分類されているバンドの中には、解散後に復活しているバンドも幾つかあって。その中で、思い出を壊してしまうというか…“復活しなきゃよかったのにな”と思ってしまうバンドも多くみえたんです。復活した最初のライヴはお客さんが入るから、その次のライヴで急にデカい箱を押えてみたけど、結果埋まらなくてメンバー間で喧嘩して、最終的にまた解散したり。稼ぐ目的でイベントばかりやっていたら、お客さんのほうもお金が無くなって、バンドのブランドも無くなって終了とか。だから、ν[NEU]を再び立ち上げる時に、“バンドのブランド価値を損ねない復活って何だろう?”と考えたんです。もちろんLUNA SEAさんとか東京ドーム世代のすごいバンドさんたちの復活もあるんですけど、元々バンギャ男だった僕がずっと見てきた中で、一番はWaiveさん。あとはPsycho le Cémuさんが、復活後もブランド価値を維持しているというイメージがあり、そこを紐解いていきました。
杉本: mitsuとは密に会ってたので(笑)、 「ν[NEU]が復活することになるんですよ」というのをワインを飲みながら話した日のことは覚えていて。“ずっと続けていく”という先々の目的があるんだったら、誰かの手を借りたほうがいいと思うけど、ν[NEU]にとっては“とにかくもう一度、渋谷公会堂をやる”というのが絶対に揺るがないテーマだったから、「その1本だけなら自分らだけでやれば?」という話はしていて。過去を知らないからこそ言ってあげられることはあるなと思ったし、「自分なりにはこう思ってやってきたよ」という話はできたので。その意見に、反面教師としてであれ、意味があったんだとしたら嬉しいですね。
──田澤さんは、Waiveの復活がν[NEU]のお手本となった話を聞かれて、いかがですか?
田澤:Waiveが解散した時にトリガーを引いたのが自分だったりもしたので、復活することがもう精一杯でしたね、当時の僕は。それが誰にどう思われているとか、そこまで考える余裕がなかったので。その後、幾度となく再演して今に至るわけですけど、当時はその未来もなかったわけですよ。最初の再演は“これっきり”だと思ってやったし、自分のことでいっぱいっぱいだったというのが正直なところです。結果として、この様(さま)が人様にとってちょっとした標(しるべ)になったのであれば、それはもう嬉しいですね。
──今日は、ν[NEU]のお二人からWaiveに訊きたいことがたくさんあるそうです。
田澤:どうぞ、めっちゃ訊いてください(笑)。
ヒィロ:僕はWaiveさんを復活前からずっと知っていますし、元々関西ソフトヴィジュアル系が大好きだったんです。Waiveさんが何回か再演されているのを観て、ν[NEU]復活の時に考えたのは“なぜWaiveさんってブランド価値が落ちないんだろう?”ということだったんです。で、内情を知らない僕がファンとして観て思ったのは、“あ、また観たい”というところでまた終わってしまうからだ、ということ。復活してはまた解散…厳密には解散中なんですが…そういうのが、“いつまで経っても抱かせてくれない女の子”みたいな感覚でじれったくていいと。満足させたら終わっちゃうなと。現役で走り続けてきたバンドにはやっぱり勝てないと当時の僕は思っていたし、メンバーみんなブランクがあったし、その中でもどうやったら維持できるか? Waiveさんの復活を参考にして、満足させないまま、お客さんがどうやったら納得してくれるか?について、mitsuくんと2人で「じゃあ、どうやってプランを考えようか?」という話をしていたんです。
mitsu:頭を使ってプランニングをするほうがヒィロで、自分はもうちょっと脳筋寄りで。Waiveさんのライヴは何度か観させていただいているので、どの公演だったか記憶が混ざり合っているんですけども、ライヴ終了後に「HEART.」が流れた時があって、それが印象に残っているんですね。映画のエンドロールみたいな形で「HEART.」が流れて、自分はもう立ち上がることができなかった。自分は善徳さんから入ったので、やっぱり善徳さんがステージに立った時のカッコ良さ、例えばですけど、大きく見えたというのと。田澤さんの圧倒的な歌唱力。ブランド価値というよりは、強さだと思っていたので、とにかく圧倒的にカッコ良かった。ヒィロの“抱かせてくれない女の子”というのと理由は違いますけど、“もう一回観たい”という気持ちが強い点は共通しているかなと思います。
▲ν[NEU]
──“また観たい”という気持ちにさせる意図はWaiveにあったんでしょうか?
田澤:いや、意図してないですね。もしそれがZepp Tokyo公演だったとしたら、僕、最後の演出を知らなかったんですよ。上からハートが落ちてきた演出じゃなかったかな?
杉本:その時はたしかに、田澤くんにはその演出を内緒にしてた。
田澤:そうなんですよ、これが彼が一人で背負っていた部分で。それが一回ではなく、メンバーの僕らが知らないことって他にもあった気がする。当時のWaiveの再演は、今持っているスキルを存分に注ぐけれど、現在進行形(のWaiveの姿)というよりは、“ファンにとっての在りし日を崩さずにやらねばならない。それを全力で再現するんだ”というマインドだったんです。2023年4月に再始動を発表するまでの再演は、 “在りし日を”というのが僕のモットーでしたから。
──解散に関して「十字架を背負っている」という意識についてはBARKSでも繰り返し語っていらっしゃいましたもんね。
田澤:誰が何と言おうとね。「もうええやん」ってメンバーでさえ言ってくれるけど、それはそれで「ありがとう」と受け止めて、「でもね…」という部分を僕は持っとかなあかん。そう思ってた。
mitsu:これはすごく勝手なイメージなんですけど、自分たちサイドから今のお二人を見て、“似てるな”という感覚が強かったんですよ。ν[NEU]の場合もヒィロがバンドのいろいろなプランを考えて、自分はとにかく歌に専念する。今、田澤さんのおっしゃった十字架の話をヒィロもずっとしていて。内情は全く違うとは思うんですけど、こちらが勝手にWaiveさんの後を追ってるような、そんな共通項を感じて惹かれていたんだと思います。“先に走ってくれている”みたいな感覚があります。
──「“また次がある”という安心感を与えないからこそ、また観たくなる」というのは作戦だったんでしょうか?
杉本: 1本1本のライヴでは結構そういうことも考えますけど、プロジェクトをあえて中途半端なところで終わらせて、“1年後にもう一回やったらまた寄ってくるんじゃない?”みたいな打算的なことは全く思っていなくて。常にやりきってはいるんです。ただ、自分たち自身が“まだ観たい”というところで終わらせていたとは思う。“やりきったらもう二度と会うこともないでしょう”というかたちにはできなかったのかなという気はします。
──自分たちがWaiveに飽きたくなかったと。
杉本:でもやっぱりそれさえも、それぐらい全力で挑めるような状況を作らないと、“やりたくない”になっちゃうんじゃないのかなというのがあって。自分たち自身でフィールドをガン!と上げないと、自分たちの中で燃えるものを作れないよなと。そういうことで、今のターンになっただけで。その都度、自分たちが満たされてしまったら“本当の終わり”が来てしまう、ということを知っていたというか。振り返ってみると、そうだった気はするな。
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