「M-SPOT」Vol.001「ステキな音楽を届けたい」

世界のメジャーシーンはもとより日本国内のインディペンデント・シーンにおいても、感動を引き寄せ興奮を煽る魅力的な音楽が続々と誕生し、日々様々な配信サイトから世の中に放たれている。星の数ほど存在する作品の中で、アーティスト本人からのリコメンドをもとに素敵な音楽を発掘し、ひとりでも多くの人々へ楽曲/アーティストを紹介しようとする企画…それがTuneCore JapanとBARKSとの楽曲ピックアップ企画“「M-SPOT」~Music Spotlight with BARKS~”だ。
TuneCore Japanにて応募作品を募ったところ、あれよあれよと数百に及ぶ作品が投稿されてきた。インディペンデント・アーティストの熱量に感服しながらも、キュレーターとして堀巧馬(TuneCore Japan)、DJ DRAGON(BARKS)、烏丸哲也(BARKS)がそれぞれに曲を聴き込み、率直な感想を突き合わせてみた。
◆ ◆ ◆
──BARKS烏丸です。このコーナーでは堀巧馬(TuneCore Japan)、DJ DRAGON(BARKS)とともに、素敵な音楽を紹介していくことを目的としていますが、それにしてもものすごい応募数ですね。TuneCore Japanには毎日どれくらいの投稿があるんですか?
堀巧馬(TuneCore Japan):楽曲やアーティストの数は公表していないんですが、2022年の時点ですでに累計100万楽曲を配信していましたから、更に増えている感じですね。
──毎日、何十何百曲というペースなのかな。
堀巧馬(TuneCore Japan):しかも年々加速度的に伸びているので、ものすごい楽曲量になります。
──であればこそ、自分の作品の素晴らしさをいかにアピールするか、というスキルもアーティストには欠かせないかもしれないですね。どう魅力を伝えるか、どのようにリスナーにリコメンドするのか。
堀巧馬(TuneCore Japan):これだけ莫大な数の音楽作品が世の中にあって大量の情報が溢れてくる中で、パッと「この曲いいかも」と思わせる要素も無視できないですよね。どこでどう聴かれるのか、本当に一瞬の響きの中で、聞き手の可処分時間を輝かせないといけないわけですから、そういったエンタメ要素は重要かもしれないです。
──確かに。

堀巧馬(TuneCore Japan)
堀巧馬(TuneCore Japan):そういう観点で曲作りに臨むとピュアな芸術的要素を減らしてしまう反面もあって、むやみに薦めるわけではないんですけど、制作段階からそういった意識を持つことが、良くも悪くも波及力の違いにつながるという現実は知っておいたほうがいいかもしれない。もちろん、そこに支配されて作ることが正しいことかどうかは、また別の話と思いますが。
──確かに、パッと聴いて「お、いいかも」と思わせるというポイントは重要ですね。世の中に残っていくヒット曲は、そういう要素があるからこそ人の心を惹きつけてやまないという現実もある。ステキなエンターテイメントに仕上げる大切さですね。それをテクニックと言うといやらしいですが。
堀巧馬(TuneCore Japan):いやらしいですかね(笑)。でもだからこそ、この「M-SPOT」という企画はTuneCore japanにとっても意義があるんです。今のリスナーが新たな音楽と出会うきっかけは、リコメンドですよね。CDショップで試聴して買うみたいな行為はなくなって、リコメンドがどんどん強くなっている。リコメンドって要はデータですから、どうしても再生数といった「数字」がついてくるんです。たくさん聴かれるものがいいとされるロジックは仕方ないと思うんですけど、「数字」と「いい音楽」はイコールなようでイコールじゃないところもあるので、「まだほとんど聴かれていない曲だけど、僕らはめちゃめちゃ刺さりました」みたいなリコメンドの仕方って、今の時代にこそ価値があるんじゃないかなって思えます。
──全く同感で。
堀巧馬(TuneCore Japan):もちろん今聴かれてるものがそうじゃないっていうわけではないですよ。データとしてもそうだし、ちゃんといい曲でもあるとは思うんです。けど現にバズる楽曲も、実は2年前ぐらいにリリースされていて、今になって急にバズることもある。むしろそっちの方が多かったりもするので、リリース当初でいいか悪いかなんて、絶対判断できないものなのですが。
──時代性もありますね。1980年代シティポップの再評価なんて、当時ソーシャルとかリコメンドといった概念のない時代に作られた音楽ですからね。そんな2025年の今ですが、今回の応募作品を聴いて気になった楽曲はありましたか?
堀巧馬(TuneCore Japan):結構多かったんですよ。いっぱい引っかかりました。で、「何が引っかかったのか」を、自分に問い正す必要があるな、とも感じました。例えば、じぐざぐづの「アロワナ」という曲は、ちょっと目新しいサウンドですよね。この「目新しい」というのは「最新のトレンド」という意味ではなく、個人的には「なんか、久々に聴いたな、この感じ」みたいな感覚で、個人的にそういうのに刺さりがちなんですよ。そんな「アロワナ」に対し、烏丸さんは…
──「今時なサウンド」とコメントしました(笑)。
堀巧馬(TuneCore Japan):僕は「この感じ、なんか久しぶりに聞いたかも」と感じた。面白いですよね。
「アロワナ」まとめリンク:https://linkco.re/eavA9QXh
──世代によってとらえ方が違うのかも。どちらも「いい」と思ったけど、その理由が違うというか感覚が違いますね。
堀巧馬(TuneCore Japan):そうなんですよね。この手のバンド・サウンドって、特に音源で聴くともっと加工されたサウンドが多い印象で。でも結構ストレートなサウンド感だなという印象が強くて、めっちゃカッコよくないですか? もうイントロのベースからすごい気持ちよくて1発でやられたんすよね(笑)。
──こんなイントロで始められると、ライブでめっちゃ盛り上がりそう。
堀巧馬(TuneCore Japan):こういうの…アトモスフィアというんですか?その空間がふわんと急に広がる感じ。僕がもともとベースサウンドが大好きで、そこからシンセで空間が一気に広がっていくところで、鳥肌立ちました。
──どこのバンドなんですか?
堀巧馬(TuneCore Japan):福岡です。もともとじぐざぐづというバンド名は 知っていたんですけど、聴いてみたら結構ダントツで好きかもしれない。

じぐざぐづ
──いわゆるアマチュアのレベルではないですよね。結構ゴリゴリにキャリアのあるバンドでしょ?
堀巧馬(TuneCore Japan):でも意外なことに、世にリリースされているじぐざぐづの音源って、まだ3曲しかないんです。しかも全部2024年に配信されたもの。配信開始されてからまだ1年も経っていないんです。結成自体が2023年4月ですから。
──いや、それはおかしい(笑)。であればその前のメンバー・キャリアが相当あるはず(笑)。
堀巧馬(TuneCore Japan):それぞれのメンバーで、いろんな音楽、いろんなジャンルのバックグラウンドがありそうですね。ぜひ皆さんにチェックしていただきたいと思っています。
協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.
じぐざぐづ
◆じぐざぐづページ(TuneCore Japan)
◆「M-SPOT」~Music Spotlight with BARKS~
◆BARKS「M-SPOT」まとめページ
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