「M-SPOT」Vol.015「初音ミクの魅力、素晴らしい声、ずば抜けた歌唱力、そしてよくできた生成AI音楽」

2025.04.29 11:00

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前回Vol.014で紹介したボーカロイド作品に続き、まだまだ紹介しておきたいアーティストは目白押しだ。初音ミクの魅力、素晴らしい声、ずば抜けた歌手力、そしてよくできた生成AIの音楽…それぞれの魅力をひとつひとつ咀嚼し理解を深め、よりたくさんの音楽を楽しむことができれば、それだけで十分、理屈はいらない。

今回も魅力的なアーティスト/楽曲をピックアップしリコメンドするのは、TuneCore Japanの堀巧馬と進行役の烏丸哲也(BARKS)である。

  ◆   ◆   ◆

──前回ボカロP作品から、二人組ユニットによるぶっ飛んだ作品などをご紹介しましたが、まだまだ注目したい作品は目白押しですね。

堀巧馬(TuneCore Japan):前回で紹介した、にほしかの「レイトネス」などは、supercellとかryoさんあたりがシーンを牽引していた時代を思い起こさせますが、例えば北浦和Pの「ティアーズ(feat.初音ミク)」という曲は、更に遡った正当派と言いますか、メルトとかハルクとかが注目されていた頃のテイストがすげえ伝わってくるんですよね。僕はあの時のボカロの曲がすごく好きなんで。

──あの頃、みんなが耳にした「初音ミク・チューン」ですね。

堀巧馬(TuneCore Japan):これなんですよ、これ。あの世代のサウンド感とか調教の仕方とか、初音ミクっぽさをしっかりと残してくれている。「あえて残している」のかどうかはわからないですけど。

──いや、でもこれ、今2025年にリリースしているんだから、狙ってますよね。

堀巧馬(TuneCore Japan):確実に狙っていると思うんですよね。


北浦和P

──あの頃の初音ミクに比べると、ちょっとウィスパーボイスっぽさというか息漏れ声に聴こえるのは気のせいかな。

堀巧馬(TuneCore Japan):どうなんだろう。でも、それこそ昔みたいにものすごい高音…ハイノートに行っていますよね。そのあたりがメルトとかのイメージと重なるところかもしれない。スーパーセルの曲とかジミーサムPの「Calc.」とかも凄いハイノートに行っていますから、逆に最近の楽曲の方が普通の人も歌えるメロディ感ですよね。

──確かに。あの頃は、初音ミクじゃないと歌えないところにひとつの美意識がありましたしね。

堀巧馬(TuneCore Japan):そうだと思います。「歌ってみた」とかももうちょっと後ですからね。ま、それでも、これを平気で歌っちゃうバケモンみたいな人も出てくるんですけど(笑)。

──バケモン…というつながりで紹介するのは気が引けるんですが、ハイトーンの美しい声色の男性シンガー・ソングライターをひとり発見しましたよ。YU-Gというアーティストの「Get it done」です。

堀巧馬(TuneCore Japan):綺麗な声ですね。めっちゃクリアですね。

──ミックスボイスだと思うんですが、元々はヒップホップ集団を結成し、その後クラブシンガーとして活動していたという経歴なんです。で、今は作家としてKing & Princeやなにわ男子、Aぇ!group、Kis-My-Ft2、Sonar Pocket…といったアーティストに楽曲提供しているという。凄くないですか?

堀巧馬(TuneCore Japan):すごいっすね。

──それでこんな美しい声を持っているなんて、何足のわらじを履きこなしているんですか、って話。

堀巧馬(TuneCore Japan):確かに、これはいい意味でバケモンですね(笑)。


YU-G

──こういう人がTuneCoreに潜んでいるんですよ。怖いわ。

堀巧馬(TuneCore Japan):エス・ティ・ワイさんみたいな存在ですかね。あの人も僕はバケモンだと思っているんで。

──バケモンと言えば、歌バケモノもいらっしゃいますよね。

堀巧馬(TuneCore Japan):Kotoneとか。Vtuberの方ですが。

──あ、Kotoneこと天神 子兎音ですね。彼女はオバケですね(笑)。

堀巧馬(TuneCore Japan):歌唱力オバケですね。

──Vtuberでは天神 子兎音ですが、Kotoneはバーチャルアーティストとしての名義だそうです。さすがの歌唱ですよね。抜群のリズム感とこの声、超気持ちいい。

堀巧馬(TuneCore Japan):気持ちいいですね。そのうえで芯の力強さもあって、ちょっとLisaっぽいところも感じますね。繊細さと力強さが両立している女性ボーカルって、そんなに多くはないですからね。


Kotone(天神 子兎音)

──カッコいいなあ。僕はレルエもスキですよ。パンチのある歌唱ではないですけど清涼感がありますもんね。

堀巧馬(TuneCore Japan):やっぱ、男性ハイトーンのいい声ですよね。レルエは『モンスターストライク』アニメ主題歌「キミソラ」で知りました。

──「キミソラ」のリリースが2020年ですから、結構キャリアもありますね。

堀巧馬(TuneCore Japan):先のYU-Gさんとはまたちょっと違うタイプというか、喉が広そうな声というか。


レルエ

──声質とか歌い方とか発声で個性や好みって生まれると思うんですけど、Resonance Divaというアーティストの「Eternal Snow」もいいなと思ったんです。カッコいいな、声も歌い方もいいなって思ったんです…けど、これ、AIだったんです。「え、生成AIなの?」と知った途端に、いいと思ったことに悔しさを覚えまして(笑)。

堀巧馬(TuneCore Japan):いや、なんかわかります(笑)。「うわ、いい声、いいアーティスト見つけちゃった」って思ったのに(笑)。

──いや、いいと思ったことを否定はしないんです。でも「なぜがっかりなのか」って、それは「シンガーが実在しない」「ライブが観れない」というところなんです。

堀巧馬(TuneCore Japan):そういうことですよね。

──そうなんです。ライブって一期一会で曲の表情が変わったり、感動の度合いも変化するでしょ?「それを味わうことはない」という残念さ、がっかり感。それを一言でいうと「あんだよ、AIかよ」と(笑)。

堀巧馬(TuneCore Japan):わかります。さらに言えば、初音ミクなどのボカロ系とAIは音声合成技術という点で語られますけど、ボカロ系ってライブで観れるんですよね。

──初音ミクはアーティストとして活動する存在ですからね。

堀巧馬(TuneCore Japan):でもこれ、100パーセントAIじゃないとは思うんですけど。

──どうなんでしょう。「AI音楽プロジェクト」というのが、どこまでの意味なのか。


Resonance Diva

堀巧馬(TuneCore Japan):裏側って分からないですから、例えばトラックはSUNOで作って、歌は実はちゃんと歌っているという可能性もあるじゃない?

──確かに。ちょうど生成AIが出てきた時代の狭間だからこその、悩ましい思いなのかもしれないですね。

堀巧馬(TuneCore Japan):いやほんとに、これからどうなるかっていうところで。

──技術のスピードに対して認知も法整備も全く追いついていないという現状がありますけれども、「音楽そのものはいい」と思ったことは事実ですから、それを自分でどう咀嚼するかって話でもあって、「この音楽がどうのじゃなくて、お前の価値観とか人生観の話だろ」って思ってます(笑)。

堀巧馬(TuneCore Japan):AIの楽曲で育った子なんて、それが当たり前になりますもんね。いいんだったらいいじゃんってやつですね。

──ほんと、そういうことです。音楽が感情を揺さぶることに変わりはありません。ではまた次回も素敵な音楽と出会いましょう。

協力◎TuneCore Japan
取材・文◎烏丸哲也(BARKS)
Special thanks to all independent artists using TuneCore Japan.

北浦和P

新米ボカロPですが、これから積極的に作曲活動をして参りますので宜しくお願い致します♪
◆北浦和Pページ(TuneCore Japan)

YU-G

大阪府出身。男性としては珍しい繊細で伸びやかなハイトーンボイスの持ち主にして、繊細且つニヒルな歌詞・曲作りに定評のあるシンガーソングライター。 学生時代にヒップホップ集団・JIDAI MASTERを結成し、その一員としてキャリアがスタート。その後もクラブシンガーとして、関西圏のクラブを中心に年間100本以上のライブをこなした。 2010年には1stアルバム「I’m Still In Here」をリリース。R&B、ヒップホップをベースにしたストリート感あふれる楽曲群は、自身の強力な個性をアピールするのに十分だった。以後、現行のトレンドも柔軟に消化しながら3作のオリジナルアルバムと1作のベストアルバム発表。そのいずれもが幅広い音楽ファンを虜にした。 近年では、その鋭いセンスを武器に音楽作家としても活躍。これまでにKing & Prince、なにわ男子、Aぇ!group、Kis-My-Ft2、Sonar Pocket、Zipang Opera、斉藤壮馬など今を代表するメジャーアーティストに楽曲を提供し、自らの新しいポテンシャルを最大限に開花させている。 歌手としても、クリエイターとしても全力。いくつもの才能を使い分けるYU-Gは、現代でもっとも注目を集め得る孤高のアーティストと言えるだろう。
◆YU-Gページ(TuneCore Japan)

Kotone(天神 子兎音)

エンターテイメントを通じて信仰を集めるためにYouTubeで動画投稿を始めた京都出身の神様。500歳+α。 ポンコツ信者(ファン)からの愛称は「子兎音様」「子兎様」「噛み様」。 アーティストとしては「Kotone」名義で活動中。 タレント(Vtuber)としてのビジュアルはライトノベル『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズを手掛けるイラストレーター・いのうのいぢ氏が担当。 バーチャルアーティスト「Kotone」としてのビジュアルは、時代を象徴するイラストレーターをとりあげる『ILLUSTRATION』シリーズにも選出された赤倉氏が担当。
◆Kotone(天神 子兎音)ページ(TuneCore Japan)

レルエ

透きとおるようなハイトーンボイスとエレクトロサウンド、ギター、バイオリンによる、個性的なメロディーが特徴の3人組バンド。 『METROCK 2019』、『JOIN ALIVE 2019』、2年連続となる『PIA MUSIC COMPLEX』等の大型フェスへ相次いで出演。2019年9月18日に初のフルアルバム「Alice」をリリース。収録曲「時鳴りの街」がTBS系テレビ『CDTV』9月度エンディングテーマへ抜擢。 アニメ『モンスターストライク』最終章『エンド・オブ・ザ・ワールド』主題歌へ初となる書き下ろしの新曲「キミソラ」が決定。2020年3月4日にモンストアニメ主題歌「キミソラ」を含む1st EP「Eureka」をビクターエンタテインメントからリリース。
◆レルエページ(TuneCore Japan)

Resonance Diva

あなたの心に感動を与える歌姫。AI音楽プロジェクト始動。 J-POP/HardCore/Metalを中心とした楽曲を配信。 バラード系が得意。
◆Resonance Divaページ(TuneCore Japan)