【速レポ】＜REDLINE＞SATOH、内に秘めた思いは熱く

ライブを見たことがなかろうが、曲を聴いたことがなかろうが、そんなことは音楽の前では関係ない。楽しかったり、ままならなかったりする自分の日常と思わず重ねてしまうリリック、自然と体が動いてしまうサウンド、そして人懐っこいライブパフォーマンスでSOUL STAGEを踊らせたのはSATOHだ。

◆ライブ写真

コロナ禍に活動を本格化させ、今年1月にメジャーデビューを果たした彼ら。おそらくこの日初めてSATOHのライブを見る人も多いだろう、SOUL STAGEに集まったオーディエンスに向けて最初に届けられたのは、ELLEGARDEN「ジターバグ」のカバー。名曲をSATOHらしいダンサブルなアレンジにリメイクすると、さらに、一斉に座らせてからジャンプさせるなど、さっそく＜REDLINE＞の観客と遊び始める。


さらに「TOKYO FOREVER」のタイトルを使ってコールアンドレスポンスを誘うなど、どんどんオーディエンスの心に入り込んでいく。しかし、フランクなステージングの裏で、内に秘めた思いは熱く。Linna Figg（Vo）は「ブチかましにきたんですけど、みんなはブチかませますか？」と焚き付ける。そう焚き付けられては、こちらもブチ上がらないわけがなく。「初めて見た人が多いと思うんですが、気にしないで騒げますか？ みんな21世紀に生きてるんだから」と話してから始まった「21 century boys」では、そのキャッチーなサウンドに、最初は音楽にあわせて小さく体を揺らしているだけだった人も、曲が進むにつれどんどん体を揺らして、しまいには大盛り上がりで手を上げている。これが音楽の力、そしてSATOHのライブの力だ。


Linna FiggがフライングVを手にして、「去年の春にアルバムを作ったときにはこんな大きな場所でやることは……想像はしていたけど、本当にできるとは」と感激を口にしてから披露されたのは、まさに2023年3月にリリースしたアルバム『BORN IN ASIA』収録曲の「RAINBOW」「ゆらせJP」。彼ららしい言葉選びで綴られるリリック、癖になる譜割りとLinna Figgのハスキーな声、Kyazm（G, Mani）の感傷的なギターソロと、SATOHが彩る日常が、次々と目の前で繰り広げられていく。

中でも最も引力が強かったのは、「彼女に捧げます」との前置きから届けられた新曲「愛し合うとして」。ギターを置いてハンドマイクに持ち替えたLinna Figgが、あふれんばかりの言葉を乗せたラップと美しいメロディで《あなたのために死にたい》と歌う同曲。珠玉のバンドサウンドと共に、ロマンチックなラブソングを甘く、丁寧に響かせた。


しっかりラブソングを聴かせたあと、再びフランクに戻ると「声出ししとく？」と訊ねて「Fuse」でシンガロングを煽り、最後に届けられたのはポップなロックチューン「Big Man」。Linna Figgはひょいっとステージ前の台へ飛び乗ったあと、さらにフロアへ飛びこみ、ここまでのライブで縮まったオーディエンスとの距離を、物理的にも縮めてそのステージを結んだ。

文◎小林千絵
写真◎ Taka"nekoze photo"