【インタビュー】BAND-MAID、壮大な物語を描く最新アルバム『Epic Narratives』発売「過去イチを塗り替えている自信がある」

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◾︎「人生とは山あり谷あり」というようなことを音楽で表現することに挑戦してみたいと思った

──さて、この先はアルバムの各収録曲について訊いていきたいんですが、さすがに全14曲となると途中で時間切れになってしまうと思うので、先行シングルなどを除いた「アルバムで初めて音源が世に出ることになる曲」に絞ってお訊きしたいと思います。まず、アルバムの1曲目が「Magie」だというのが少しばかり意外でした。アルバムのタイトルやコンセプトからすると、ある意味ちょっと大仰なオープニングになるのではないかと思っていたところ、今やすっかりお給仕でもお馴染みの楽曲が聴こえてきたので。

SAIKI:いろいろと思い悩んだ結果ですね、曲順については。

小鳩ミク:いつものことではあるんですけど、曲順を決めたのは最後でしたっぽ。すべての曲が揃って、アルバムのタイトルも決めた後で並べてみたんですっぽ。

SAIKI:最終的には多数決で決めました。ほぼ全員、「やっぱりこの曲が1曲目だな」という意見でした。

──ひとつ基本的な確認なんですが、「Magie」を読むときのアクセントは後ろにあるんですよね?

小鳩ミク:そうなんですっぽ。小鳩もよく間違えてSAIKIに指摘されてますっぽ。(笑)



──マギーと普通に読むと女性の名前みたいですけど、これはドイツ語で、英語でいうところのmagicに相当する単語ですよね?

SAIKI:そうなんです。基本的には響きで選んだ言葉なんです。それに加えて個人的に、なかなかヨーロッパに行けていないことについて引っ掛かるものがあったんですね。なかでもドイツには何回も行っていて縁も感じているので、ドイツ語にしようと思ったんです。そこで普通に英語の「magic」にしちゃうのは少しストレートすぎるかなというのもあったので、英語以外で探したいというのもありましたし。フランス語にも同じ綴りの単語はあるんですけど、そっちだと読み方が“マジー”になってしまうので……。

──フランスのファンがドイツのファンに嫉妬するかもしれませんよ、今の言葉を聞いたら。

小鳩ミク:大丈夫ですっぽ。他の曲に小鳩がフランス語のタイトルを付けているので問題ないですっぽ(笑)。

──なるほど! 12曲目に「Toi et moi」という曲がありますもんね。せっかくなので次はその曲について。このアルバムの中においてはダークな部類に入る楽曲ですね。しかもコンパクトにまとまっています。従来であればもう少し長い曲になっていたんじゃないかと思えるところがあります。

KANAMI:ちょっと尺を短くしてみようということを実際、意識していました。リフでがっつり引き込んでいくような曲は必要だなと思いましたし、やっぱり皆さんリフで盛り上がっていく曲を気に入ってくださるので、BAND-MAIDらしいリフ感を出せる曲をイメージして作りました。そのリフ自体についても何パターンか作ってみて、その中からみんなで選んだものなんです。展開の面でも「これがBAND-MAIDだよね」という感じを出すことを考えましたね。


──歌詞的にも攻撃的ですよね。かなり強気な感じがするのでてっきりSAIKIさんが書いたのかと思っていましたが、こちらの作詞は小鳩さんだったんですね。

小鳩ミク:確かに強気ですっぽね。実際、今までになかったぐらい強い感じにしようと思って書きましたっぽ。小鳩はこれまで意識的に、あまり強くなり過ぎないように、直接的になり過ぎないようにしていたところがあったんですっぽね。想像していただく部分を大事に残してきたというか。ただ、SAIKIが積極的に歌詞を書くようになったことも影響しているかもですけど、今までだったら「ちょっと恥ずかしくて嫌かも」とSAIKIが言っていたであろうものにも「いいよ!」と言ってくれるようになってきたんですっぽ。それなら、敢えて強くいってみようかなというところが出てきたんですっぽ。SAIKIにこんなふうに罵られたら喜ぶ方もいらっしゃるだろうな、という考えも持ちつつ(笑)、自分の書く歌詞にはこういう強さを前面に出す感じのものがこれまでなかったので、1曲あってもいいのかな、と考えながら書きましたっぽ。

──「SAIKIさんを使って罵る」というのはえらく大胆な発想ですね(笑)。

SAIKI:あはは! この歌詞が来た時も、私は普通に言ってました。「なんか小鳩っぽくないね。どうしたの? 何か嫌なことでもあったの?」って(笑)。

小鳩ミク:憶えてるっぽ(笑)。この曲は、このアルバムの中ではだいぶ前というか最初のほうにできていたものだったので、あとから他の曲で柔らかさを足していけばいいっていう流れでもありましたっぽ。

SAIKI:タイトルのイメージからすると歌詞とのギャップがありますよね。この歌詞の曲にこのタイトルを持ってくるのは小鳩らしさだなと思いますし「小鳩、日本語では結構強いこと言うんだな」という感じではありました(笑)。

小鳩ミク:タイトルについては英語でも考えていたんですけどっぽ、なかなかしっくりくる言葉が見つからなくて。そんな中、フランス映画などを通してフランスの方たちはすごく意思表示がはっきりしているイメージが自分の中にはあったので、それもフランス語の言葉をタイトルに選んだ理由のひとつになっていますっぽ。

──僕は「Forbidden tale」を聴いた時に、まさしく『Epic Narratives』というアルバムの表題に似つかわしい壮大さを感じました。このインタビューの冒頭で「これまでになかったような展開の曲」という発言が出ていましたけど、それが指しているのはきっとこの曲のことですうよね?

KANAMI:そうですね。実は前々からSAIKIには「展開がめっちゃ多い曲が欲しい」と言われていたんですね。そして、これを作っていた当時の私は、たまたま身近な人の死があったこともあり、「命とは?」「生きるとは?」といったことを考えていたんです。そこで「人の人生とはどういうものか」、「人生とは山あり谷あり」というようなことを音楽で表現することに挑戦してみたいな、と思ったんです。山あり谷ありでいろいろと変わっていく中でも、ずっと変わらない芯のような部があるはずなので、それをリフで表現して……なんか自分で言っていて照れくさくなってきますけど(照笑)。

SAIKI:照れないでください!(笑)

小鳩ミク:カッコいいっぽ!

──要するにリフが定点のようなものになっていて、人生の変化を見守っているような感じでもあるわけですね?

KANAMI:そのとおりです!

SAIKI:これはもう、最初に聴いた時からとても素敵だなあと思っていた曲で。聴いていてとてもイメージが湧きました。まさにこういう曲が欲しかったんです。


──この曲の歌詞はSAIKIさんによるもの。「人生山あり谷あり」というのとは少し違うように思いますが、人生観みたいなものも出ているように思います。ここで表現したかったのはどんなことでしたか?

SAIKI:日々、音楽の素晴らしさというものを実感しているんですけど、そんな中で音楽の歴史について調べている時に、遠い昔に歌うことを禁じられた歌だとか、語ることを禁じられた物語というのがあるということを知ったんですね。だけど今では、現代の技術でそれを復元して聴けたりするチャンスがあったり、かつて禁じられていた物語が今ならば読めるという現実がある。そこで、つまり芸術って消えないものなんだなと気付かされて、そのこと自体がすごくロマンティックだし、なんて美しいことなんだろうと思ったんですね。そこにKANAMIが言っていたような「人生とは何か?」という問いを重ねながら「人生を音楽で表すとどうなるのか?」と考えてみた時に、「生きる」ことは「今、私たちがここにある」ということだと思ったんです。もしも仮に私たちの身体が無くなってしまうことがあっても、誰かがいつかこの音楽を繋いでいってくれるかもしれないという希望を感じながら書いていったものなんですよね。自分たちの音楽が未来に残っていくことになったらいいな、と考えながら。BAND-MAIDなんて知るはずもない未来の人たちが、たとえばこの曲を切っ掛けにその存在を知って、その音楽が誰かの背中を押すようなことになったら素晴らしいことだな、と思って。私もそういうことを経験しているんですね。私が音楽を好きになった時にはもうこの世界にいなかったミュージシャンが、たくさんいるわけじゃないですか。だけどその方たちの音楽に勇気をもらったり、音楽の素晴らしさを教えてもらったり、背中を押してもらったことがあるので、私もいつかそうなれたらいいなと思って、この歌詞を書いたんです。

AKANE:私はこの曲を聴いた時に、明るい未来とか、ポジティヴで綺麗な印象を受けていたので、そこに演奏面でゴチャゴチャ詰め込んで崩したくないと思ったんですね。人の耳に残り、心に響く曲にしたかったので、ドラムについてはBAND-MAIDの曲にしてはめずらしく、同じリズムを繰り返していく感じになっています。セクションごとに変化をつけるにしても、スッと耳に馴染むような感じの、メロディを際立たせるためのドラムに徹したところがありましたね。とにかくメロディを届けたい、という気持ちが強かったんです。

MISA:この曲にはストーリー性も感じますし、展開も面白いなと思っていたので、シンプルさも残しつつ、セクションによってキャラクターの違いを出すことも意識しながら演奏しました。ピッキングのタッチを変えてみたりとか、そういったことも試みながら。


──なるほど。そして「Magie」と同様、すでにお給仕ではお馴染みの楽曲としては、「Brightest star」も収録されています。いわゆる小鳩曲(小鳩がメインボーカルの楽曲)ですが、序盤の歌唱での声の使い方、ニュアンスの出し方などにすごく巧みさを感じました。

小鳩ミク:ありがとうございますっぽ。この曲は自分の中ですごく成長点になるものだなって、最初に歌詞を書いている段階からとても思っていて、だからこそすごく技も必要とされる曲でもあるので、歌い方についてどうしていこうかと考えた時に、今までやったことのない雰囲気の歌い方にも挑んでいきたいなと思いつつ……歌うというよりも呼びかけているような感じにしていきたかったんですっぽね。実際、cluppo(小鳩によるソロ・プロジェクト)では、曲によっては話しかけているような歌い方というのをやっていたんですけど、BAND-MAIDの小鳩ミクとしての歌い方でそれをやってみたいなというのがあったんですっぽ。そして、この曲を最初にKANAMIからもらった時には、すごくポップな感じのイメージがあったんですけど、そこで敢えて歌詞にはダークさを盛り込ませてもらおうと思って、そこで人間の表裏一体な感じを歌い方でも伝えられたらな、と思っていろいろ工夫してみたんですっぽ。意識的に歌い方にも幅を持たせようと思って、考えてみた結果ですっぽ。

──歌詞の中では「I’m game」という言葉がキーワードになっているように思います。直訳すると「私はゲームだ」になってしまいますが「私はリスクを覚悟で挑む心づもりがある」というような意味なんですよね?

小鳩ミク:そうなんですっぽ。大概こういう時って「準備はできてる?」みたいなことを言いがちだと思うんですけど、それはちょっと違うかなと思ったんですっぽ。むしろ「こっちはやる気充分なんだけど、ついてこられる?」みたいな強さを出したいなと思ったので、そういうニュアンスを出せる言い方はないかなと思って結構探したんですっぽね。結果的に[I’m game」という言葉は、この曲の歌詞を書いていた最後の段階まで悩んだ末に入れることにしたんですっぽ。たいがい小鳩は日本語の雰囲気を基に英語を探っていくんですけど、漫画だったか小説だったかは記憶が定かではないものの、本の中でgameという単語をそういう意味合いで使っている文章を見つけて、「あ、これはいいかもしれないっぽ」と思って、さらにそれについて調べてみたりした結果、こうなったんですっぽ。


──それこそ「こっちは本気で世界征服を目指しているんだぞ」ということを言いたい時にも使えそうですよね。そしてこの曲はギターソロも印象的です。いわゆるギターソロ然とした感じでは全然ないのが新鮮ですし。

KANAMI:あれは単音をハモらせているんです。気持ち的には、小鳩がボーカルだけじゃなくギターでもいちばん輝けるような楽曲にしたいというのがあって、そこで当初は小鳩がソロを弾くという前提で考えていたんですけど、私と2人で一緒に弾けるようなソロにしたら面白いかもなと思い立って、単音でハモらせるソロにしたんです。だから他の曲にはない感じのソロになっていると思います。お給仕でも盛り上がりますしね。

小鳩:私にとってはプレッシャーでしたっぽ(笑)。

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