【インタビュー連載 Vol.1】HYDE、「<黑ミサ>は特別なもの。これで最後に」
ソロ活動20周年の幕開けとして2020年末から2021年3月にかけて敢行された画期的なアコースティックツアー<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>に始まり、現在は20年前にリリースされたHYDEソロ活動の原点というべき1stソロアルバム『ROENTGEN』をオーケストラで再現するツアー<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>を開催中だ。並行して京都・平安神宮にて行なわれたスペシャル公演<20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU>を大成功に収め、来たる10月30日および31日には千葉・幕張メッセ、11月23日および24日には地元である和歌山のビッグホエールにて今年のオーケストラコンサートの集大成とも呼ぶべき<20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021>の開催も発表された。
◆HYDE 画像
音楽を筆頭としてエンタメ業界にはコロナ禍の逆風が容赦なく吹きつけているが、そうしたなかでHYDEは決して諦めることなく、自身に何ができるのか道筋を模索し続け、見事にその在りようを世に標榜した。この状況下でこれほどにも精力的な活動展開は、もはや偉業と言っていい。
このたびBARKSではそうしたHYDEのソロ20周年にさまざまな角度からスポットを当て、3ヵ月にわたってインタビュー連載をお届けする。第一回となる今月はいよいよ大詰めを迎えるオーケストラツアー<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>、初日は荒天に見舞われながらも透徹した世界観を作り上げた平安神宮での<20th Orchestra Concert 2021 HYDE HEIANJINGU>を振り返り、さらには<20th Orchestra Concert HYDE 黑ミサ 2021>開催についてじっくりと聞いた。
◆ ◆ ◆
■ツアーなりライヴがあることで
■日々努力しようと思う
──<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>も追加公演を残すのみとなって、いよいよ終盤に差しかかりますが、ここまでの手応えはいかがですか。
HYDE:めちゃめちゃいいですよ。このご時世ですからコンサートを開催すること自体、難しい状態ではありますけど、たくさんの方に足を運んでいただいて。この間も北海道公演がソールドアウトしたんですよ。札幌文化芸術劇場 hitaruという会場だったんですけど、その会場で、しかも収容率100%でソールドアウトするのは今年に入って初めてだったそうで、大入り袋をいただきまして。それってつまり、僕が今やっているコンサートの形がコロナ禍というこの状況に合ってると証明されたってことなのかなと。やっぱり感染予防対策を考えたらお客さんは声を出せない、できるだけ接触を避けるっていうのが必然になってくるじゃないですか。そこはしっかりやれていますし、お客さんには声を出せないぶん、じっくり音楽に浸ってもらえる。みんなの声が聴けないのは寂しいですけど、ちゃんと心に届く歌を歌いたいし、受け取ってもらえている実感もあります。今この時代ならではのものが作れているんじゃないかと思いますね。
──当初、このタイミングではライヴハウスでのツアーを予定されていたんですよね。コロナ禍以前から計画されていたアグレッシヴなスタイルを突き詰めていこうという。でもコロナ禍の長期化を鑑みて、今年始めに急遽ホールでのオーケストラコンサート開催に方針を転換されたと伺いました。言ってしまえばイレギュラーな事態だったと思うのですが、短期間でここまで完成度の高いステージを実現されるのは並大抵のことではなかったでしょうね。
HYDE:たしかに大変は大変でしたよ。2021年の計画として、当初は毎月1曲ずつロックな激しい曲をリリースして夏頃にアルバムを出して、それに伴うツアーを開催するつもりでいたので。でもコロナ禍は収まりそうにないし、そんな状態でライヴハウスツアーをやってもきっと不完全燃焼で終わってしまう。<HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE>で着席のライヴもやり方次第ですごくいいものになるってわかったし、そういう形であれば未来が見えると思えたので発想を変えたんです。いつか制作しようと思っていた『ROENTGEN 2(仮)』をこのタイミングで作ることに決めて、ツアーもこれまでほとんどライヴでやってこなかった『ROENTGEN』をコンセプトにしたオーケストラツアーだったら今年のソロ活動が滞りなくできるなと思ったので。
──結果として大正解でしたね。20年の時を経て生演奏で披露する『ROENTGEN』は歌っていても楽しいですか。
HYDE:そうですね。でも想像以上に難しくもあるんですよ。だからMCでも言ってますけど、当時の僕だったら歌えなかっただろうなと思います。歌えたとしてもきっとつらかっただろうし、下手だったでしょうね。そうそう、今回は全体的にキーを1音上げてるんですよ。もともとライヴを想定したアルバムではなかったのでキーがすごく低いんですけど、歌いやすいように1音上げて。
──たしかに音源ではかなり低音で歌っていらっしゃいます。
HYDE:本当に家で聴くためだけのアルバムだったんですよ。特に僕、デヴィッド・シルヴィアンとか好きだから、あえて低音を意識して作ったんですけど、やっぱりあそこまで低いとライヴでは表現しづらいというか、声が通りにくい。これまでにも『ROENTGEN』の曲を演奏するときはキーを上げることが多かったんですけど、今回はいっそのこと一律で上げちゃう?って。
──ライヴでキーを下げるって話はよくありますが、上げるっていうのはあまり聞いたことがないです。実際、歌いやすくなりましたか。
HYDE:声は通りますよね。ただ、1音上げたうえで今のスキルをフルに使って頑張っても、ところどころ「ああ、ミスったな」っていうのがあるんですよね(笑)。ホント難しいんです、すごく。でもこのツアー中に1本1本直せるところはできる限り修正しているので、トータルでの完成度はどんどん上がってきてると思います。面白いコンサートになってきていますよ。
──20年前と比較してご自身の声の音域が上がったとか下がったとか、あるいはより滑らかになったり、広がったり、そういったことは感じていらっしゃいます?
HYDE:歌い方が正確になったというか、そういう歌い方を身につけたんです。だから今はすべてが通るようになりましたね、低い声も高い声も。そういった意味でも20年前に<ROENTGENツアー>をやっていたら、いいものはできなかったと思っていて。ま、若い頃のパワーやエッジ感みたいなものはないかもしれないけど……特に若い頃のL'Arc-en-Cielの雰囲気なんてたぶん今は難しいでしょうね、やろうとも思わないですけど(笑)。それはテクニックでカバーしていけるでしょうし。
──観ていてまったく違和感を感じませんから。
HYDE:ありがとうございます。昔はあんまり練習してなかったけど、今は練習してるからね。そのぶん落差がないのかも。むしろよくなって聴こえるのかもしれないですね。
──練習というのは、喉の鍛錬とかもされるんですか。
HYDE:鍛錬というよりも意識ですかね。喉って外から見えないから、なかなか論理的な説明ができないじゃない? だから鍛錬というより、頭のなかで「まっすぐにこう歌ったほうがいいんじゃないかな」とか意識することが大事だなと思ってて。そうやって修正していく。この前、ディストーションボイスの先生に歌い方を教わったんですけど、舌の奥を上に持ち上げると歪みが増幅するって聞いて。それをクリーンな発声にも活かしてみたらどうなるんだろうって考えたんですよ。特に僕、ファットに歌うことがクセになってるところがあって、そこで声が詰まることがよくあったので。「じゃあ、あえて舌の奥を上げて歌ったらどうだろう」って試してみたら結構いい感じに声が通ったんですよ。この手を使ったほうがいいんだなとか、そういうことをやっていくと最終的に全部の音域で声が通るようになってくるんです。不思議なもので。
──面白いです。そういうチャレンジを今も常に繰り返している。
HYDE:まさにそう。このツアーは意識して、なるべく変なクセを取るようにして歌ってますね。
──<20th Orchestra Tour HYDE ROENTGEN 2021>でHYDEさんが最終的に目指しているものはなんでしょうか。
HYDE:なんだろう……歌が上手くなればいいな、かな。ある程度、それは達成できそうな感触はありますね。完璧は無理ですけど、こういう機会でもないと練習しないしね(笑)。こうやってツアーなりライヴなりがあることで日々努力しようと思うし、自分自身でそうやって目標を作っていくことは重要だなと思います。
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