【連載】Vol.094「Mike's Boogie Station=音楽にいつも感謝!=」

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実話に基づくハートウォーミングな素晴らしい英国映画「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」DVDリリース!!!


▲DVD「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」

2019年にイギリスで公開された映画「フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて」 (Fisherman's Friends)、今年8月に我が国でDVDリリースされる。実話に基づく本作はコーンウォール州ポート・アイザックの漁師を中心にした10人の男性コーラス・グループ、フィッシャーマンズ・フレンズが英国制覇するというサクセス・ストーリー。ハートウォーミングでありシリアスな人間ドラマであり、そして僕らミュージック・フリークを狂喜させるとても素晴らしい作品だ。本国では 2019年3月に公開、興行成績ランキングで2位を記録。その後のUK/DVDチャートで1位に輝いている。



ネタバレ文になってしまうけど、しっかりこの物語を追ってみたいと思う。
ロンドンの音楽業界で働く仲良しトロイ(ノエル・クラーク)、ドリス(ヴァヒド・ゴールド)、ダニー(ダニエル・メイズ)は結婚間近のヘンリー(クリスチャン・ブラシントン)の独身最後のイベントとしてロンドンから車で4時間半のコーンウォール北部の大西洋岸の田舎へ小旅行。







そこでストリート・ライヴに遭遇、「John Kanaka」を歌う10人組はきっと大きくブレイクすると業界人達。しかしこれはその中の一人、ちょっとお人好しなダニーに対する悪戯だった。ダニーを残して3人はさっさとロンドンに帰ってしまう。ダニーに是非ともスカウトするように“命令”。彼は1752年のロックンロールを歌うフィッシャーマンズ・フレンズとの交渉に入る。ジェイゴ(デイヴィッド・ヘイマン/CS放送の英国ドラマでよく見る著名なベテラン俳優)、その息子ジム(ジェームズ・ピュアフォイ)、その娘アルウィン(タペンス・ミドルトン)、そしてジェイコの曾孫の小学生タムシン(メドウ・ノブレガ)。4世代ファミリーのジムの娘アルウィンが管理するハーバ―・ビューB&Bにダニーは宿泊した。翌朝ダニーは寝坊しながらも漁を体験。この場面での音楽は「The Coast Of High Barbary」(by FF)。船上でゲロンパしながらも彼らをスカウト。ジムの父ジェイゴの勧めもあって遂にグループはダニーとレコーディング契約を結ぶ。



ロンドンへその旨を連絡したところ、このスカウトの件はジョーク、嘘だと判明。そこでダニーはポート・アイザックから脱走しようとするがアルウィンと鉢合わせとなり逆に契約を守ろうとする。



「South Australia」を浜辺で録音するがカモメの鳴き声が入って失敗。改めて教会で録り直す、「Little Liz I Love You」。こうして9曲録音、アルバム完成まであと1曲だ。今度はローワン(サム・スウェンインズベリー)がソロで悲劇の歌「Widow Woman」を熱唱、ダニーを大いに感動させたのである。

そんなダニーはシングル・マザー、アルウィンに恋するように…。彼は改めてフィッシャーマンズ・フレンズを本気になってデビューさせようと奔走する。アルウィンが頑張る船上フォト・セッション、「Le Capitaine De San Malo」(by FF)。

場面は市民の憩いの場、ゴールデン・ライオン・パブでのクイズ大会。MCはパブのママ的存在、ジェイゴ妻のマギー(マギー・スティード)。音楽の部ではこんな問題で音楽ファンをニヤッとさせる。
*ディオンヌ・ワーウィックでお馴染み「Walk On By」の作曲はバート・バカラック(その昔日本ではバカラッチャと言われていたことも、これホントの話し)、では作詞家は? 僕はハル・デイヴィッドとすぐ分ったけど…(ニヤッ)。
*UKヒット・パレードで一番長く1位を記録したアーティストは? ビートルズ、エルヴィス・プレスリー…?!
*「Sorrow Woman」 が収録されているアルバムは? 『On Through The Night』。デフ・レパードあたりは僕ちょっと苦手(冷や汗)。
そんなダニーはアルウィンにこんな問題も…。死後チャート1位を獲得したアーティストは? 彼女はオーティス・レディングと正解する。1968年の「The Dock Of The Bay」とも言っているのに字幕ではそこが省かれている。オーティス・フリークはとても悲しい(涙)。


▲日本盤シングル「The Dock Of The Bay」サインはこの曲をオーティスと共作したスティーヴ・クロッパー(僕の大仲良しミュージシャンの一人だ)。 from Mike's Collection

このパブはこのところ赤字続き、オーナーのローワン(サム・スウェンズベリー)は売却を余儀なくされ、そこにダニーが絡む。ヘンリーの花嫁の父が仲介人。ヘンリーの結婚披露宴には音楽関係者が列席するということでフィッシャーマンズ・フレンズは売り込みを兼ねてライヴ披露することになった。ところが披露宴当日ポート・アイザックで遭難事故が発生し、その救急活動のためメンバー全員揃わなかった。そんなこともあってか、彼らはお目出度い席にはミスマッチな「Blow The Man Down」を歌う、勿論ブーイングで売り込みは失敗してしまう。

ところで本作には音楽ファンをニヤッとさせる台詞がいろいろ…。“ジャクソン5”“シャーク団とジェット団”(ウエスト・サイド物語)、そしてタムシンの「おじいちゃんをジャスティン・ビーバーにするの?」。
ダニーの「ビートルズを逃すようなヘマをしたくない」。これはビートルズの売り込みを断ったデッカ・レコードのディック・ロウの有名エピソード。その後ディックはジョージ・ハリソン推薦でローリング・ストーンズと契約する。爺は60年代初期の有名なエピソードはよく憶えている。


▲B4デッカ・オーディションで演奏した楽曲のアセテート盤「Hello Little Girl /Till There Was You」 提供:藤本国彦さん

そしてアルウィンはレコード・コレクターという設定で、レコードを聴かなくなった最近の若者を嘆きアルバムの素晴らしさ力説するのだ(大拍手)。
ダニーとアルウィンはレコード・パーティーしながら結ばれる。ダンス・ナンバーはヒューズ・コーポレーションの代表作「Rock The Boat(愛の航海)」。ソウル・コーラス・トリオ、ヒューズ・コーポレーションは1975年に来日、東京/札幌/大阪/名古屋ジャパン・ツアー。その全コンサートで僕はMCを務めさせてもらった…。


▲ヒューズ・コーポレーション直筆サイン入りコンサート・プログラム from Mike's Collection



台詞には“ボノ”“グルーピー”、そしてジョン・レノンの言葉として“一人で見る夢はただの夢 皆で見れば現実に”も引用される。これは元々1964年のヨーコ・オノの本「Grapefruit」からの一節で、ジョンが80年のラスト・インタビューで引用した。またセリフに“スティングの「Roxanne」”(ポリス)、“レディー・ガガ”、“ポール・ウェラー”も登場。

台詞といえばタムシンとジム爺ちゃんは“トンポットブレニー”という海水魚を釣って来る。残念ながら台詞オンリー、モノホン・ショット見たかった!今度、葛西臨海水族園に行ってみよう…。

フィッシャーマンズ・フレンズがロンドンにのりこむシーンではトム・ロビンソン・バンド「2-4-6-8 Motorway」が爆音で流れる。



そしてグレン・マトロックの「Sexy Beat」だ。オーディション前夜、フィッシャーマンズ・フレンズはロンドンのパブでトラディショナル「Drunken Sailor」をシャウト、他の客もジョインして店内は大いに盛り上がる。



翌日メンバーはレコード会社へ、「Oh You New York Girls」。スタッフは好感を持つのだがエクゼクティヴはオリジナリティを求め不採用、maybe next time。でも若手スタッフから女王誕生日にTVで国歌斉唱を頼まれる。ポート・アイザックからの中継だ。そこで彼らが歌ったのは「Got Save The Queen」ではなくコーンウォールの「The Trelawny National Anthem」だった。関係者は激怒した。
一方でパブ売却についてローワンはジムには未説明。険悪な雰囲気になる。
そんな時「The Trelawny National Anthem」動画がWebで再生回数100万回以上を記録。レコー会社は吃驚、急いでダニーへ連絡しグル―プとの契約を申し出る。新聞見出しは“100万ポンドの漁師バンド”、全国で注目される。デヴィッド・エセックス「Gonna Make You A Star」が流れる中、多くの取材陣が村におしかける。ダニーはじめ地元民、そしてグループのメンバーらがインタビューを受ける。



その一方でパブの売却が正式成立となりダニーは気が咎める。
そんな或る日、老漁師ジェイゴが海を見ながら静かに息をひきとっているのを妻マギーが発見する。「The Leaving Shanty」(by FF)でジェイゴをR.I.P.。
そしてパブの新オーナーはチャールズ・モンタギュー(クリストファー・ヴィリエ)であることが判明、彼は曰くつきビジネスマンだとジムが説明。パブは取り壊されホテルが建設されるだろうと。この話しはダニーの紹介から始まったことが分かり、彼はジムからポート・アイザック退去命令を下される。
傷心のダニーはロンドンに戻る。音楽はUKシンガー=ソングライター、ジンダーの「Keep Me In Your Heart」。2012年のアルバム『Crumbs Of Comfort』収録。素晴らしいバラード、ロッド・スチュワートにカバーして貰いたい…。
ダニーがロンドンを離れ再びポート・アイザックへやって来る。ゴールデン・ライオン・パブ最後の日。ジムはローワンに謝罪し皆に拍手される。そこへダニーが現れロンドンのフラットとパブを交換したと報告する。以前と同じくローワン達がパブを続けることになる。そしてアルウィン&ダニーも元の鞘に戻るのだった。
そんなパブではラジオのカウント・ダウンが放送中。
12 位 ジェームス・ラスト 『Eighty Not Out』
11位  フローレンス・アンド・ザ・マシーン
10位  パオロ・ヌティーニ 
9位  初登場 フィッシャー マンズ・フレンズ


▲CD「Port Isaac's Fisherman's Friends」 from Mike's Collection

これは実際のUK/Official Album Chart Top100、2010年3月2日付のランキングだ。改めて記載してみる。
(12)Eight Not Out/James Last
(11)Lungs/Florence & The Machine
(10) Sunny Side Up/Paola Nutini
(9) Port Isaac's Fisherman's Friends/ Port Isaac's Fisherman's Friends ここに初登場!



このアルバムは英国ではゴールド・ディスクを獲得し、トラデショナル・フォーク・アルバムでは最高売り上げを記録した。
お祝いにパブで皆歌う、「No Hopes, Jokers & Rogues」。



目出度し、目出度し!!



エンディングはまず「Fisherman's Blues」(by FF)。彼らは2011年2月、“BBC Radio 2 Folk Awards”受賞。字幕シーンで本作2度目の登場「Durunken Sailor」。カット・フォトに横断歩道を渡るフィッシャーマンズ・フレンズ、勿論ここはB4でお馴染みアビーロードだ。そしてロール・エンドは「Union Of Different Kinds」(by FF)。
改めて言わせていただく、これは何度も何度も観たくなる素晴らしい映画作品である。本作登場のフィッシャーマンズ・フレンズのナンバーはサントラCD『MUSIC FROM THE MOVIE FISHERMAN'S FRIENDS KEEP HAULING』で是非ともフル・ヴァージョンでお楽しみいただきたい。


▲CD『MUSIC FROM THE MOVIE FISHERMAN'S FRIENDS KEEP HAULING』 from Mike's Collection

そして日本での映画公開直前の監督インタビューが下記で楽しめる、これもチェック・イット・アウトだ。
https://fansvoice.jp/2020/01/10/fishermans-friends-foggin-interview/

*DVDジャケット写真&作品シーンからの写真提供:アルバトロス

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