「親が楽しんでいる姿を見るのが、子どもの幸せ」“こどもフジロック”の核心
フジロック開催20周年を記念して立ちあがったプロジェクトに【こどもフジロック】がある。2018年で3年目を迎えた【こどもフジロック】は、フジロックに子連れで参加する人にとって役立つ情報の収集/発信/シェアや呼びかけを行っており、「子どもも大人もフジロックを思いっきり楽しもう」という想いが活動のベースとなったものだ。
もちろん「役立ち情報」が得られることも重要だが、一方で未だ「そもそもフジロックという過酷な環境に子供を連れて行くことの是非」を問う向きもある。【こどもフジロック】プロジェクトを推進する主催者は、複雑で様々な問題を内包する「フジロックとこども」というテーマに、どのようなポリシーを持っているのか? フジロックを主催するSMASHの石飛智紹氏と【こどもフジロック】のスタッフを務める早乙女‘dorami’ゆうこ氏に、率直な意見をぶつけてみた。
◆ ◆ ◆
■ 親が本当に解放されているシーンなんて、普段の子育て生活ではあまりない
──フジロックが「お子さんも連れてきて!」とアナウンスし始めたのっていつ頃ですか?
石飛智紹(以下、石飛):1997年の第1回目からです。
──それは日高さん(日高正博/株式会社SMASH代表取締役社長)のコンセプトですか?
石飛:そうです。“3世代で楽しめるフェスをつくろう”というコンセプトでしたから。初年度からキッズランド構想はあったんです。「プールを作ろう」とかね。1999年の苗場1回目で具体的にキッズランドが作られました。
──石飛さんは何故キッズランドやこどもフジロックに関わっているんですか?
──「こども対応」と言っても2種類ある気がします。「託児所あります」とか「授乳コーナ完備」というのは、フェスを楽しみたい親御さんへのフォロー/ケアですよね? 「子供が楽しめるフェスを作る」とは視点が全く違う。「子どもも一緒にフェスを楽しもう」という視点と、「子どもを連れてきても大丈夫」というサービスの充実を、混在させて論じてはいけない気がする。
石飛:完全に別ですね。だからフジロックでは「ショッピングセンター型のサービス」は一切しません。
──やっぱりフェスを楽しんで欲しい?
──なるほど。親が喜んでいる顔を、初めて子供が見ることになるかもしれない。
石飛:「素の家族を楽しんでもらえる環境づくり」みたいなことかもしれないですね。子どもが輝いていれば「連れてきてよかった。…私も楽しんでいいのかなぁ」と繋がるような設計を心がけてます。
──ドラミさんの息子さんのように1歳でフジに行くってチャレンジですよね?
ドラミ:そう思っていました。友人や同世代が子どもと一緒に行っている話を聞いたりして「自分も行きたいなぁ、でもいつごろ行けるかなぁ」って思っていたんですけど、実際に経験したことがないので答えが出せなかったんですね。そんなときに【こどもフジロック】のスタッフというチャンスをもらって不安な気持ちを飛び越えることができた。行ってみたら「あぁ、なんだ。行けるんだ」ということがわかったので、「行けるんだっていうことを伝えたい」というのが【こどもフジロック】をメンバーとしてやらせていただいているひとつの原動力です。
──でも人目も気になりませんか? 「小さいお子さんも一緒で素敵だな」とみてくれる人もいれば、「こんな小さい子を連れてくるなんて、親としてどうかしている」とネガティブにとらえる人もいる。
ドラミ:正直…私も独身時代はネガティブに見ていました。「こんな雨のなか赤ちゃん大丈夫かな」「夜、どうなんだろう」とか。子どもが楽しんでるのかもわからないし。だからこそ自分が「連れていきたい」と思ったときに矛盾が生じる。まぁ、周りに迷惑をかけなければ人の目なんか気にしなくていいと思ったんですけど、バラードで「ぎゃあー!」って泣かれたらいやだし…。
──難しいですね。
──初回から小学生は無料なのに、全然気づいていない。
ドラミ:親という立場にならないと必要な情報を取りにいかないですよね。乳児用のテントがあるとか、キッズランドの中には授乳スペースがあったり、その中には“ママーズ”と呼ばれるボランティアのお母さん方がいたりして、目を配ってくれている。困ったことがあったりすると手を差し伸べてくれて。
──それは心強い。
◆インタビュー(2)へ
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