【インタビュー】ソフトシンセSERUM開発者Steve Duda来日直撃、デッドマウスとの意外な関係
■チャート一位を獲得した相棒は
■みなさんもよく知っているあの人
──独学で開発を学ぶ際に、難しいと思ったことは?
Steve 問題に直面した際、私は何としても解決しようとするタイプなので、開発に難しさを感じることはありませんでした。解決策が分からなかったときはGoogleで調べていて、本などはほとんど読まなかったですね。そのぶん、多大な時間を要したというのが問題でした。
──BFD以降、あなた自身が開発したソフトウェアはどういったものでしたか?
最初に発売されたソフトはDivine MachineからリリースされたLuciferで、これはオーディオ・トラックをリアルタイムでコントロールするもので、ABLETON LiveのBeat Repeatよりも以前にリリースされたこともあって、DJたちに広まりました。NY出身のとあるDJが、Luciferをコントロールするための専用MIDIコントローラーを作ったから観に来てほしいと言われ、ついでに彼のDJを聴いたのですが、これまでロック畑だった自分にとって、初期のプログレッシブ・ハウスやダークなエレクトロ・ミュージックなどの音楽を初めて聴いて衝撃を受け、これは新しい時代のロックンロールだと感動しました。それが2003年くらいの話です。
──それがSERUMの開発へとつながっていったのですか?
SERUMに至るのはもう少しあとのことで、私はエレクトロ・ミュージックに衝撃を受けて、そういった音楽を自分でも作るようになりました。その頃、インターネットを介して知り合った友人にbeatportのことを教えてもらって、試しにトップ10を聴いてみたら、イーブンのビートにサイドチェインのベース……“あ、これなら自分にも作れそうだ”と思ったんです(笑)。それで、友人と一緒にジョークまがいに“How To Make A Dance Song”というようなテーマで曲を作ったんです、曲名が「This Is A Hook」で、アーティスト名はBSODでした。
何のプロモーションをしたわけでもないのに、beatportのチャートで一位を記録しました。そのときにBSODの片割れだった友人はまったくお金がなかったので、“これは儲かるぞ!”と、喜んでいました。その後、彼はデッドマウスという名前で成功し、それからの活躍はみなさんもよく知っていると思います。
──あのデッドマウスとユニットを組んでいたのですね!?
はい。でも、私は音楽的な成功を経験しても、あまりピンとこなかったので、あらためてソフトウェアの開発に力を入れるようになりました。BFDの新しい音源を開発したり、あとは自分でNerveというドラムマシンのソフトを制作しました。このソフトのGUIはもともとグラフィックデザイナーだったデッドマウスが手掛けてくれました。
彼はその後スターDJとなり、ギャラがとても高くなっていたので、もっと安いギャラの私のところにもDJのオファーが舞い込むようになりました(笑)。それで2011年くらいのときに一度スクリレックスと一緒にDJツアーを回ったのですが、僕の半分くらいの年齢である彼がオーディエンスを盛り上げている姿を見て、この歳でDJを続けていくのは難しいと悟り、これまで以上に本気でオリジナルのソフトウェア開発をしようと決心しました。
スクリレックスとツアーをしているときに、彼がソフトウェア・シンセサイザーを駆使してコンピューターで音楽制作するのを見る機会があって、私もこういうアーティストたちに使ってもらえるようなシンセサイザーのソフトを作ろうと思い付き、彼とのツアーが終わってから3年間ほどかけてSERUMを開発しました。
──SERUMを開発するにあたって、どういうソフトウェアにしようかというイメージはありましたか?
それは多少あったというくらいですね。とにかく自分のオリジナルのソフトウェアを作ろうという気持ちと、自分が買いたいと思えるソフトかどうかを重視しました。私は音楽制作もしていましたから、さまざまなソフトウェアシンセを使ったときに、選べる波形のパターンが少なかったり、GUIの視認性が悪かったりと、“ここをもっと良くしたほうがいい”と感じたことをリストアップして、それらすべてを補えるよものにしようと試行錯誤しました。そのなかで、自分のサウンドをソフトウェアにインポートして、もっと自在なサウンドメイクを“楽しく”できるソフトにしたいと思うようになりました。
──そのために生まれたのが、SERUMの視認性に優れた独自のGUIだったのですね?
ええ、楽しく音作りをするには、波形やフィルターやモジュレーションの動きが目で見えるというGUIが必要でした。GUIに関しては作り上げたものを壊してイチから作り直すという作業を幾度となく繰り返しました。
──そのこだわりのおかげで、SERUMは直感的に使えるソフトシンセだと、音楽制作者からも高い評価を得ています。
Xfer Recordsはソフトの開発からテクニカル/ユーザー・サポートまですべて私ひとりでやっていて、そのなかでもユーザーの方からは「これまでどうやってシンセサイザーが動作しているか分かりませんでしたが、SERUMを使ったことで理解できた」というようなメールを多く受け取っていて、とても嬉しいですね。
──SERUMを開発するにあたってターゲットとなるユーザーは意識しましたか?
もちろんエレクトロ・ミュージックを制作するユーザーに使ってほしいという思いはありましたが、それ以上にまずは自分が作りたいものを追求しながら、いろんな人たちからのフィードバックを参考にしつつバランスを取っていきました。なのでジャンルと問わず、多くの人のインスピレーションを刺激するためのツールになればと思っています。
──高域のクリアさを筆頭に、音質の良さにも定評があります。
ありがとうございます。いくつかのソフトウェアシンセは周波数特性上、高域がロールオフしがちものもありますが、SERUMは全帯域に渡ってフラットでリニアなサウンド設計をしているので、クリアなサウンドが得られるようになっています。この点は開発のときからこだわっていて、サウンドプロダクションの部分では私だけでなく、外部からの技術者を雇って設計を施しました。
──ベース・サウンドに向いたソフトだと言うプロデューサーたちも多いですが、その点についてはどう思いますか?
ええ、確かにそういった使い方をする人もいますね。SERUMはワープモードをはじめ多くの波形モード、さらには数式を入れて波形を作れるフォーミュラ・エディターなど、とにかくたくさんの機能を詰め込んだので、ユーザーがどういう使い方をしてくれるのかはこちらとしては未知数でした。今例にあがったベース・サウンドという点だと、例えばワープ・モードのFM from Bなどは、ダブステップ系のクリエイターに人気がある使い方ですね。
──今度の展望を教えてください。
先ほど話したように、これだけ大ヒットのソフトウェアを抱えながらも自分ひとりで、ソフトの開発からユーザー・サポートまでを担当していることを“クレイジーだ”と言われることもありますが、どうも私はひとりでやるのが性に合っているようです(笑)。
私にとってはSERUMのユーザーがとても大事な存在ですから、何かトラブルがあったときに、できるだけ早く解決してあげたいと思っています。ですから、まずはSERUMをより多くの人に楽しんでもらえて、音楽制作者の夢を叶えられるようなプラグインに成長できるよう、さらなるアップデートを進めていくつもりです。もちろんSERUMのアップデートは常に無償で提供しています。このように今の私はSERUMに割いている時間が大きいですが、その合間でアーティストとコラボレーションした簡単なプラグインなども開発しています。
取材・文:伊藤大輔
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