【インタビュー】ソフトシンセSERUM開発者Steve Duda来日直撃、デッドマウスとの意外な関係

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ダンス・ミュージックを制作するプロデューサーたちに、絶大な支持を受けるソフトウェア・シンセサイザー、SERUM。数あるウェーブテーブル・シンセサイザーのなかでも、直感的な操作感と自在なサウンドメイクを可能にしたグラフィック・ユーザー・インターフェース(GUI)が、このソフトウェア・シンセサイザーの大きな魅力と言える。

実際にSERUMを触ってみると、ストレスを感じさせない操作性が印象的で、“徹底した現場感”を備えたソフトシンセであることがよく分かる。SERUMを開発したXfer RecordsのSteve Duda氏に話を聞くと、彼自身が類い希なミュージシャンとしてのキャリアを持っており、その経験がミュージシャンの目線を忘れない、ユーザーフレンドリーなソフトウェアを生み出せたのだと合点がいった。そんなDuda氏が辿ったユニークなバックグラウンドによる、SERUMの開発経緯をお届けしたい。

◆ ◆ ◆

■BFDは大ヒットするとは思わなかったので
■こちらが驚いたくらい(笑)

──あなたの音楽的なバックグラウンドから話を聞かせてもらえますか?

Steve Duda(以下、Steve)サンフランシスコのシリコンバレーでコンピューターに囲まれて育ち、父親はピアノの演奏していて、母親は音楽を教えていました。私は学生の頃からシンセサイザーに興味を持って、楽器の販売店でアルバイトをしました。週末になると、お店のシンセを家に持ち帰り、マニュアルを隅々まで読み尽くして使い方をマスターしていました。そのときから私はシンセサイザーに関わる仕事に就きたいと思っていて、これなら自分にもできるかもと思っていました。

──その後、実際にはどうだったのですか?

Steve その前に大学で音楽を専攻したのですが、最初は200人近くの生徒がいたのに、最終的には十数人しか残ることができないという難しいカリキュラムでした。無事に単位が取れたときに、先生から“学士を取って音楽の先生になるといい”と言われたのですが、私としては“それしか道はないの?”って思いましたね(笑)。

そのあとでプロオーディオに就職し、Pro Toolsのテクニカル・サポートや当時のマルチメディア・デバイスでもあったCD-ROMの開発に携わる企業で働きました。そのときにグレイトフル・デッドのドラマー、ミッキー・ハートからPro Toolsのオペレーターを探していると会社に連絡がきて、上司に“2週間くらい休暇をとって、やってみるかい?”と言われ、それが私にとって初めてのスタジオ仕事の経験になりました。その後はナイン・インチ・ネイルズのアルバム制作にオペレーターとして関わったのですが、私にシンセサイザーの知識があることを知ると、シンセの音作りなどもやるようになって、彼らのアルバム『フラジャイル』(1999年)の制作をおよそ2年間に渡って手伝いしました。

──Pro Toolsのオペレーターから、もっとミュージシャン的な仕事へとシフトしていったのですね。

Steve そうですね。ナイン・インチ・ネイルズとの仕事を終えてからはロサンゼルスへと引っ越して、フリーランスのエンジニアとして活動しました。でも、音楽制作は面白くて楽しい現場もあればそうでないものもあり、ちょうど飽きてしまった頃に、プラグインに興味を持ち始めました。

例えば当時のドラム音源はベロシティが大きくても小さくても音の表情がほとんど変わらなくて、生ドラムのようなダイナミクスや音色の変化がありませんでした。ですから、モノやステレオなど、さまざまなパターンの生ドラムのレコーディングして多くのサンプルを作りました。その音源で作ったリズム・パターンを聞かせると、プロのドラマーの人でも“あれ? これは生で叩いたドラムじゃないの?”って言うほどの完成度になって、これは面白いなと思い、ソフトウェアメーカーのFX Pansionにこのアイディアを売り込みました。これがのちにBFDになりました。

──そうなんですか? 今となってはBFDは生っぽい質感のドラム・サウンドを作るには欠かせない音源ソフトとして、音源制作者の間では完全に定着した人気ソフトウェアですが、あなたが発案者だったのですね。

Steve 今はBFD3までアップデートされていますが、バージョン1に収録されている音源は私がレコーディングしたサンプルを使っています。でも、あんなに大ヒットするとは思わなかったので、こちらが驚いたくらいでした(笑)。ミュージシャンの作品はもちろん、CMなどでも自分がサンプルしたドラムの音がいろんなところで聴けて、そのことをエンジニアの友人に話したら、これはもうメタ・ミュージックのようなものだねと言わたのがきっかけで、自分だけのオリジナルのソフトウェアを作ろうと決心しました。

──プログラミングの知識はあったのですか?

Steve いいえ、ありませんでした。Visual Studioなどのプラグインを作るためのフリーソフトを使ってシンプルなものから作ってみました。はじめて6時間くらいでゲインやビットリダクションを可変できるプラグインができて、自分でも驚きました。それまでプラグインは魔法使いのような人にしかできないものだと思っていたのですが、自分にもできることが分かったのです。そこからは独学でプラグインの知識を学びました。

◆インタビュー(2)

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