【インタビュー】加藤和樹、「いろんなことを経験しましたから。歌でもお芝居でも、言葉の出方が違ってくると思います」

ポスト


加藤和樹が、シングル「夏恋/秋恋」を9月28日(水)にリリースした。同作は4月リリースの「春恋」から連なる“春夏秋冬”を通じて続いていくコンセプトシングルであり、「春恋」では恋に傷ついた主人公が一歩踏み出す姿が描かれながらも、続く「夏恋」では新しい出会いに心惹かれ、そして「秋恋」では新しい恋心に気づいてしまう……そんなドラマチックな連作となっている。各曲を表情豊かに歌い上げている加藤は、今回のインタビューで「“歌うこと”は自分の中で初めて芽生えた“目標”だった」と話した。アーティストデビュー10周年を迎える今、ミュージシャンとして、俳優として、そしてひとりの男性として、彼は何を思うのか。その真意をライター杉江優花女史が訊いた。

◆加藤和樹 画像

  ◆  ◆  ◆

■ よちよち歩きの赤ちゃんが、立って、歩いて、ついには走れるようになった──
■ 自分としてはそんな感覚です(笑)

──アーティストデビュー10周年となる今年、ファン投票によるベスト20曲ライヴや、なんと全82曲を2日間で披露するという全曲ライヴを行われたりもしていますが……そういう中で、どんなことを感じられていますか?

加藤和樹:夏の全曲ライヴでは、“こんなに曲があったんだな”ってあらためて思いましたね。ファンの方と握手会をさせていただく機会には、「初めて知ったときは小学生でしたけど、結婚して子どもも生まれました!」なんていう報告をしてもらえたりして。10年経ったんだなぁって、すごく感慨深いですね。僕の場合、最初は右も左もわからない中で音楽を始めたので、本当にゼロからのスタートだったんですよ。

──学生時代にバンドを組まれていたりとかは?

加藤:一切ないんですよ、そういう経験が。そもそも、18歳のときに“ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト”を受けたのも、なんとなくテレビに出たいっていう軽い気持ちからだったんです。だから、上京後は自分の思い描く理想と現実のギャップに打ちのめされて、半年ほどで芸能界を一度離れ、1年半くらいアルバイトをしていたんですよ。何をしたいとか、誰みたいになりたいっていう目標もなかったので。でも、音楽に出会い、そこで「歌いたい」という明確な初めて目標ができて、ありがたいことにデビューすることができた。ただ、それまで人前で歌ったことなんてなかったし、何も知らなかったことを考えると……よくやってこられたなと、自分でも思います(笑)。

──今では作詞・作曲も手掛け、ギターも演奏される加藤さんに、そんな時代があったとは。

加藤:よちよち歩きの赤ちゃんが、立って、歩いて、ついには走れるようになった、みたいな。自分としてはそんな感覚です(笑)。

──4月にリリースした前シングル「春恋」、そして今回のシングル「夏恋/秋恋」と聴かせていただいても、加藤さんの歌の力にどうしたって心が動いてしまいますから。

加藤:ありがとうございます。そう感じていただけたなら嬉しいですね。それこそ10年前に比べれば、成長したなぁと自分で感じたりして。昔撮ったMVを観たりすると、ちょっといたたまれなかったりしますからね。目が泳いでいたりするし(笑)。

──初々しさがあると(笑)。

加藤:そうそう。役者の仕事をしていたとはいえ、それもまだ駆け出しのころに音楽を始めたので、撮られるということにまだまだ慣れていないっていうことが丸出しで。初ライヴの映像を見返したりしても、本当に恥ずかしい(笑)。ま、そういう時期から応援してくださっている方もいるわけで、本当にありがたいことだなと思います。

──全曲ライヴなんかは、普通に考えればリスキーだと思うんですけど……ファンの方々への愛と感謝があるからこそ、ですよね。

加藤:この10年、ファンのみなさんと一緒に歩んできて、感謝は本当に尽きないし……今の自分がどれだけできるかっていう挑戦の意味もあって。それをやり遂げられたら、きっと次のステージへ行けるんじゃないかっていう想いもあったんですよ。

──それにしても、ご自分の曲とはいえ、82曲の歌詞をすべて頭に入れるって想像を絶するレベルです。

加藤:いや、想像を絶しますよ(笑)。それに、フルコーラス歌う曲もあれば、構成的に短縮させた曲もあったので、リハーサルもこれまでになくハードで、もう体育会系のノリでしたもん。でも、やってみたら意外とできちゃって。早くも「15周年ライヴで、また全曲ライヴを」みたいな要望を早速ファンの方たちからいただいていて、きっとそうなるんだろうなぁっていう気はしています。ははは。

──高いハードルを跳べてしまうと、次はさらに上へ行くことを期待されてしまいますからね、怖ろしい(笑)。でも、楽しんでくださるファンの方たちの笑顔が、また糧になりますよね。

加藤:まさにそうなんですよ。お客さんとの団結感がこれまでで一番生まれたと思うし、やり遂げた達成感も大きかった。ファンの方たちにしろスタッフにしろ、人に恵まれたなと、本当に思います。

──お互いに想い合う、本当に素敵な関係なんですね。さて、「春恋」に始まり、今回の「夏恋/秋恋」、そしてこの後に続くであろう「冬恋」と、一人の女性の揺れ動く恋心を表現するプロジェクトは、どういう経緯で始まったものなのでしょうか。

▲シングル「夏恋/秋恋」通常盤

加藤:これまでもいろいろな試みはしてきたわけですけど、10周年という節目でテイチク・インペリアルレコードに移籍をしたタイミングで、また新たな挑戦をしてみたいなと。シンガーソングライターのCHIHIROさんとタッグを組んで、女性目線で描いた“恋の処方箋シリーズ”を自分の歌声で表現してみたいなと思ったんです。

──加藤さんといえば男っぽいロックなイメージが強いので、新鮮な驚きがありました。

加藤:そうなんですよね。それに、バラードを歌うことはあるし自分自身で書くことあっても、女性が書いたバラードはあまり歌ってこなかったし。

──いざ歌ってみると、新たな発見があったりして?

加藤:ありました。女性目線で歌詞を書いたこともあるけど、これは自分からは出てこない優しい言葉だな、柔らかい表現だなって思ったり。それが自分自身、歌ってみてすごく新鮮だったし、なおかつ男としてもわかる!って思うところが多々あって。

──恋をしたことがある人なら、どうしても共感してしまうフレーズが曲それぞれにたくさんありますよね。失恋を描いた「春恋」なんかは、切なすぎますけど。

加藤:一歩踏み出さなきゃいけない曲なのに、立ち止まってしまう自分がいたりする。(リスナーに対して)“こうなりなさい”とか“こうしなさい”とかっていう無理強いは決してせずに、自分と向き合うことができる曲だな、って思ったりもしました。


──わかります。むやみやたらに背中を押そうとするのではなく、そっと寄り添ってくれるというか。そういうもののほうが、むしろ立ち上がったり歩き出すきっかけをくれるような気もします。

加藤:それは、自分の音楽のテーマでもあるんですよ。僕自身、音楽を聴いて人生が変わったわけで、僕の歌も何かのきっかけになればいいなと。

◆インタビュー(2)へ
この記事をポスト

この記事の関連情報