【ライブレポート】加藤和樹、「これからも歌い続けることで目には見えないそのエネルギーを皆さんの心に届けていければ」

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加藤和樹が、6月27日、東京・渋谷さくらホールで<Kazuki Kato Concert Tour 2024 ~Respection~>のファイナル公演を開催した。

“歌い継いでいきたい日本の名曲のカバー(Respection)”を中心に構成された、スペシャルライブ。バラエティーに富んだ選曲に酔いしれると共に、加藤が歌手/俳優として積み重ねてきた表現力の妙に唸る充実の一夜をレポートする。

◆ライブ写真

バンマスを務める吹野クワガタのピアノに導かれ、静かにステージに現れた加藤。1曲目「接吻」(ORIGINAL LOVE)をスマートな大人の色気たっぷりに歌い始めると、ステージの照明だけでなく、オーディエンスが身に付けているシンクロライトと連動し会場が全てピンクに染まった。視覚的な効果も加わって、ステージと客席が柔らかくひとつになっていく。イントロの大胆なベースのフレーズが印象的だった「ワインレッドの心」(安全地帯)は、発売から40年以上経っても圧倒的な存在感を放つ孤高の名曲。「カサブランカ・ダンディ」(沢田研二)では、頬を張り倒したりタバコを指に挟んだり、サビで両手の親指を立てるなど当時のままの仕草もさらりと取り入れられていた。「そう、それそれ!」というポイントがちゃんと大切にされているのも、<Respection>シリーズの醍醐味だ。


最初のMCではまず、この暑さの中集まったファンの体調を気遣いながら「最後まで楽しんでいってください!」と挨拶。大切なバンドメンバーを紹介したあと、「普段は暴れ回ったりするんですけど(笑)、今回は“Respection”というカバー曲を中心にしたライブ。聴いたことのある楽曲や思い出のある曲もあるかと思うので、思いを馳せながらじっくり聴いてください。今日はファイナル。出せるものを全部出していきたいと思うので、僕の歌をぜひ受け取ってください」と語りかけた。

次のパートは、物語を紡ぐように丁寧に歌い上げた「メロディー」(玉置浩二)から始まり、最新作「Liberation BOX」にも収録されている「Another Orion」(藤井フミヤ)、「366日」(HY)を披露。これはどの曲にも感じたことだが、“楽曲”として数分間にまとめられた主人公の人生観や一生を賭けたラブストーリーが、まるで自身の体験や記憶のように聴こえてくるのは、役者としていろんな人物を演じてきた加藤ならではの表現力に包み込まれるからではないだろうか。「青空」(THE BLUE HEARTS)ではなるべくシンプルに、ストレートに。映画「君の名は。」の主題歌になった「スパークル」(RADWIMPS)では、壮大なスケールで描かれる音楽劇を1人で演じきるように、変幻自在の歌声と原曲への愛溢れるパフォーマンスで楽しませてくれた。


2回目のMCでは、「(コロナ禍を経て)皆さんのその温かい手に、握手に、どれだけ力をもらっていたかを改めて実感しました。やっぱり、この場所を無くしたくないなと思いました」と、最新作『Liberation BOX』のリリースイベントで久しぶりにライブ会場以外の場所でも歌えている感謝を伝えた加藤。また、「僕自身も東京や名古屋で天災を経験したからこそ、何かできることがないかと考えていた」と振り返りながら、そのリリースイベントの最後に金沢で歌えることになった喜びを語った。

「ハナミズキ」(一青窈)、「さよなら大好きな人」(花*花)、「瑠璃色の地球」(松田聖子)と女性曲を3曲披露したパートでは、楽曲の世界観を表現するというよりも、目の前にいるひとりひとりの心の一番近いところで歌っているような温かい距離感が感じられた。歌い終えた加藤は「「さよなら大好きな人」がリリースされた当時はすごく悲しい歌だと思っていたけど、ライブで歌っていく中で、すごく前向きなさよならなんだと感じるようになった」と自身の心境や解釈の変化について語っていたが、この“Respection”シリーズもまた、私たち聴き手にとってはその楽曲の思いがけない表情や解釈に気づかせてくれる機会だ。オリジナルのバージョンを聴いた時には見えなかった景色が広がったり、言葉の奥にあるもうひとつの意味にハッとしたりする楽しさがある。加藤は「歌はその時々でいろんなことを思い起こさせてくれるし、(左胸を指して)ここと直結してるんだなと感じる。音楽には不思議な、説明できない力があると信じている。これからも歌い続けることで、目には見えないそのエネルギーを皆さんの心に届けていければ」と抱負を語っていた。


ライブもいよいよ終盤。力強く前向きなメッセージをみんなで共有した「全力少年」(スキマスイッチ)から始まり、凛々しくもセクシーな身のこなしでジャケットを脱ぎながらクラップを煽った「ギャランドゥ」(西城秀樹)では、情熱的なボーカルを響かせる。会場が真っ赤な光に包まれた「DESIRE」(中森明菜)は、昭和という時代の魔力を感じさせる名曲。"魅せる"という表現がぴったりのパフォーマンスでオーディエンスの心を射抜いていた。

「時代が変わっても、変わらない音楽の良さ。時代が変わって新たに気づく、曲の良さもある。シティーポップが世界で流行ったり、ファッションもまた、いろんな時代を巡って人々の元に届いたりしている。ひと世代違ってたらまた違う人生だったと思うけど、今この時代、この瞬間、一緒の空間で同じ気持ちを共有できていることがすごく嬉しいです」

柔らかい笑顔でそう語った加藤が本編最後の曲として選んだのは、「歌うたいのバラッド」(斉藤和義)。歌い手としての素直な気持ち、決意であると同時に最高のラブソングでもあるこの曲を、目の前の「あなた」に向け心を込めて届けた。


アンコールではもう一度バンドメンバーを紹介し、8月に行われるプラネタリウムのリハが終わったことや、今年はしっかり夏休みを取る話などをリラックスしたムードでトーク。すっかりお馴染み(!?)になってきたローディーのモッチー、グンちゃんとのやり取りで爆笑させた後は、最新作『Liberation BOX』からアッパーなナンバーを立て続けに披露した。ロックバンドのフロントマン然としてエレキギターをかき鳴らした「ReTaker」、体に染み込んだロックンロールで客席をダンスフロアに変えた「Twenty Flight Rock」、そしてオーディエンスの歓声と熱狂が加わってこそ完成する「Shake Body!」。5月に行われた<Kazuki Kato LIVE”GIG”2024~Liberation~>の盛り上がりをギュッと凝縮させた、まさにこの日の第2部ともいうべきボリューム感だ。

アンコールの締めはもちろん、食欲をそそる黄色のライトに照らされた「マシマシLove Call」。"推し"に対する熱い思いを漲らせた加藤のパフォーマンスと、手振りや合いの手のコールで応戦するオーディエンスの熱気が相まって、とんでもないエネルギーが渦巻くエンディングとなった。


8月にはプラネタリウムツアー<加藤和樹 LIVE in the DARK tour -星空リサイタル vol.2->、そして40歳のバースデーを迎える10月には<加藤和樹 40th Birthday LIVE in Billboard Live>も開催。出し惜しみすることなく、常にマシマシのテンションで音楽への愛を爆発させている加藤和樹の次なるステージにも注目だ。

また5月に開催された<Kazuki Kato Special LIVE”GIG”~ Count Down KK 2~>、<Kazuki Kato Concert Tour 2024 ~Respection~>の模様は、8月と9月にCS衛星劇場で放送されることも決定しているのでこちらもお見逃しなく。

取材・文◎山田邦子

セットリスト

6月27日(昼の部・夜の部共通)
M-1接吻
M-2ワインレッドの心
M-3カサブランカ・ダンディ
M-4メロディー
M-5Another Orion
M-6366日
M-7青空
M-8スパークル
M-9ハナミズキ
M-10 さよなら大好きな人
M-11 瑠璃色の地球
M-12 全力少年
M-13 ギャランドゥ
M-14 DESIRE -情熱-
M-15 歌うたいのバラッド

アンコール
M-22 ReTaker
M-23 Twenty Flight Rock
M-22 Shake Body!
M-23 マシマシ Love Call

<加藤和樹 40th Birthday LIVE in Billboard Live>

2024年10月6日(日) ビルボードライブ大阪
1stステージ 開場14:00 開演15:00 (ゲスト:豊永利行)
2ndステージ 開場17:00 開演18:00(ゲスト:豊永利行)

2024年10月7日(月) ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場14:30 開演15:30
2ndステージ 開場17:30 開演18:30(ゲスト:朝夏まなと)

2024年10月8日(火)  ビルボードライブ横浜
1stステージ 開場14:30 開演15:30
2ndステージ 開場17:30 開演18:30(ゲスト:鎌苅健太)

プラネタリウムツアー<加藤和樹 LIVE in the DARK tour -星空リサイタル vol.2->

【出演】加藤和樹 /吹野クワガタ(piano)

東京公演
日程:2024年8月26日(月)・27日(火)
時間:1st Stage 開場18:00/開演18:30 2nd Stage 開場20:00/開演20:30
会場:コニカミノルタプラネタリウム天空 in東京スカイツリータウン(R)

福岡公演
日程:2024年8月31日(土)
時間:開場15:30/開演16:00 1公演のみ開催
会場:福岡市科学館ドームシアター(プラネタリウム)

神戸公演
日程:2024年9月1日(日)
時間:1st Stage 開場15:30/開演16:00 2nd Stage 開場17:30/開演18:00
会場:バンドー神戸青少年科学館ドームシアター(プラネタリウム)

【特設サイト】https://planetarium.konicaminolta.jp/livedark/katokazuki2024/

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