岩盤はオフィシャル・フーリガン【検証】フジロックが20年愛され続ける理由 ~岩盤/GAN-BAN編~
20回目のフジロックが目前に迫った今回は、チケットやグッズの販売を担うフジロックのオフィシャル・ショップ「岩盤/GAN-BAN」のインタビューをお届けする。渋谷のパルコに実店舗を構え、フジロックを運営するSMASHと通信販売サイト『GREENonRED』を共同経営し、苗場の会場では『オフィシャルショップGAN-BAN』2店舗に加え、飲食エリアOASISに『GAN-BAN SQUARE』というエリアを運営し「GAN-BAN BAR」というBARも出店している、フジロッカーにはお馴染みの岩盤だ。だが、フジロックと密接なイメージはあるもののその実体を知る者は少ないのではないだろうか。
“オフィシャル”でありながらも、フジロックを運営するSMASHによるのではなく、岩盤を率いるのは有限会社ベースメント・ムーブメント代表取締役の豊間根 聡氏だ。そして岩盤と言えば、2015年に立ち上げたフジロックに関するメディア「富士祭電子瓦版(FUJI ROCK FESTIVAL ELECTRONIC NEWS)」の盛況っぷりが著しい。中でも「TALKING ABOUT FUJI ROCK」のコーナーでは、沢尻エリカ、ハライチ澤部、広末涼子、ローラ、玉山鉄二×山田孝之などフジロックファンの著名人を次々と発掘してインタビューを実施。大きな話題を呼ぶとともに、一般層へフジロックを伝えることに大成功している。
だが話を訊いてみると、この新しいメディア含め、岩盤がこれまで行ってきたフジロックのプロモーション活動は向かい風も強かったようだ。それでも構わずに「とにかくフジロックを伝えること」に邁進してきた豊間根氏は、岩盤の存在理由、自らの価値観が転倒した1999年のフジロック体験、そしてフジロックに掛ける猛烈な情熱など、すべてを語ってくれた。
◆ ◆ ◆
■“フジロックの応援団”じゃ、大分弱いし、大分違う
■“フーリガン”が一番しっくりきます。悪い意味も含めて(笑)
──岩盤って、フジロッカーにとってお馴染みのようでいて実体はあまり知られていないと思うんです。
豊間根 聡:まず、育ての親が僕であるなら、産みの親は日高さん(日高正博:フジロックフェスティバルの創始者/株式会社SMASH代表取締役社長)です。3回目のフジロックが終わった1999年に「レコードショップをやってみないか?」と言われ、2000年の暮れに渋谷パルコ・クアトロビルの地下一階に店舗をオープンしました。パルコを紹介してくれたのも日高さんです。日高さんがパルコを脅かしたっていう説もありますが(笑)。最初はレコード店だったので、岩盤=ロック・ディスクと命名してもらったんです。
──ああ!
豊間根:日高さん、天才でしょ?
──ひとつスッキリしましたが、そもそも“オフィシャル・ショップ”って何をしているんですか?
豊間根:僕もその問いからのスタートでした。会場のオフィシャル・グッズ・ショップしか浮かばなかったので、開催期間の3日間以外の残り360数日、俺は何をするんだと(笑)。岩盤の役割は、ショップである限り対外的です。実際の業務は時代によって様々な変遷を重ねてきましたが、当時から、ただ業務的なことだけではオフィシャル・ショップとは言えないと思っていました。15年間一貫しているのは、365日「フジロック最高!」と反知性的に言い続けることです(笑)。
──反知性的?
豊間根:つまりオフィシャル・ショップである限り、フジロックを「評価する」といったスタンスは初めから放棄しているわけです。難しいことは置いておいて、とにかく365日「フジロック最高!」と騒ぐことが僕らの役割だと思っています。ご指摘の通り、岩盤が組織として分かりづらいのは、SMASHとは別組織だからだと思います。もう15年ですから、気持ち的には別だとは全く思っていないのですが。ただし別組織だからこそ、「フジロック最高!」と15年騒ぎ続けても論理破綻しない。そこが岩盤の最大の強みかもしれないですね。だって元々論理がないんですから(笑)。メンタリティーしかない。フーリガン・メンタリティー。サッカーのフーリガンが一番近いんですよ。フジロックの応援団じゃ、ちょっとと言うか大分弱いし、大分違います。フーリガンが一番しっくりきます。悪い意味も含めて(笑)。フジロックを盛り上げるためならなんでもやってやるぞ、みたいな。
──やばい団体だ(笑)。
豊間根:ええ、フジロックは内部に岩盤というフーリガン団体を抱えているわけです。SMASHは懐が深い(笑)。他のフェスにはない「機関」ですからね。真冬、週末の渋谷のど真ん中に数百人の徹夜の列を発生させるという、始めた当時は暴挙とも言われた現象を生み出したのも、フーリガン・メンタリティーによるものが大きかったと思います(笑)。
──夏の風物詩がフジロックだとすると、冬の風物詩が岩盤の早割(フジロックの早い割引チケット販売)ですよね。
豊間根:本当にお客さんのおかげだと思っています。心から感謝しているし、あの環境で一晩中並んでくれているお客さんをリスペクトしています。お客さん同士でお互いを思いやってコミュニケーションを取りながら一晩を過ごし、販売を待っている光景は、リトル・フジロックだなって思います。毎年並んでくれている人は気付いていると思いますが、ここ5年くらいは客列に対する注意のアナウンスもしていません。こうした活動を渋谷で15年間続けてこられたのは、間違いなくお客さんのおかげです。お客さんのおかげでフジロックのオフィシャル・ショップは成立したんだなと捉えています。
──ビル建替えのため8月7日からパルコ(パート1&パート3)が一時休業しますが、岩盤ショップはどうなるんですか?
豊間根:店舗は一旦なくなりますが、通信販売サイト『GREENonRED』で販売は継続します。来年のフジロックの開催発表がおこなわれる頃には新たな岩盤の展開が発表できるように準備を進めています。現在セール中なので、全国各地にお住まいの方はフジロックへ行った帰りに渋谷に寄って掘り出し物を見つけて欲しいですね(岩盤サイト内詳細)。
◆インタビュー(2)へ
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