【インタビュー】ロバート・グラスパー、世界から賞賛された衝撃作『ブラック・レディオ』から、さらなるネクスト・レベルへと進む続編『ブラック・レディオ2』をリリース
現代ジャズの最前線をいくピアニスト、ロバート・グラスパー。彼が率いるエクスペリメント(以下、RGE)は、ジャズとヒップホップやR&Bを融合し、2012年発表の『ブラック・レディオ』は第55回グラミー賞最優秀R&Bアルバムを受賞した。ジャズとして『ブラック・レディオ』を聴くことは可能だが、それよりグラスパー自身の中ではR&Bアルバムを作るという意識が強く、それはジャズをR&Bのようにもっと身近な音楽として聴いてもらいたいという気持ちから来るものだった。そしてグラミー受賞で自信を得たRGEは、『ブラック・レディオ』のコンセプトをさらに押し広げ、続編『ブラック・レディオ2』を発表した。
アルバム構成は前回に続きRGEの演奏を軸に、一曲ごとにゲスト・シンガーを変えたセッション集となっている。メンバーはグラスパー以下、デリック・ホッジ(ベース)、ケーシー・ベンジャミン(サックス、ボコーダー)と、ドラマーのクリス・デイヴがソロ活動などで多忙のため、マーク・コレンバーグへ代わった。若手だが、グラスパーもその個性を認めるプレイヤーだ。
全体的にはR&B色がより強まった印象だが、それはブランディやフェイス・エヴァンスなど新たな参加ゲストの顔ぶれからもうかがえる。ラッパーでは古くからの馴染みであるコモンのほか、スヌープ・ドッグも参加する。
「前は友だちや知り合いに参加してもらったけど、今回はそれにプラスして、面識がなくても一緒にやってみたい人がいたら、色々なつてを頼って声を掛けた。だから、より世界が広がったものになっているよ。ブランディやフェイス・エヴァンスは中学や高校時代によく聴いて、僕にとってアイドルみたいな存在さ。それで今回参加してもらうことができて本当に嬉しくて、ワクワクしたよ。スヌープも昔よく聴いてたけれど、実は彼は大のジャズ・ファンなんだ。『ブラック・レディオ』もとても気に入ってくれて、自分もこんなアルバムだったら出たいという話を知り合いから伝え聞いて、それじゃあということで話が進んだ」
前作からの流れで、ネオ・ソウル系のアーティストも顔ぶれが豊富だ。
「ジル・スコットが歌う“コールズ”だけど、実は彼女の新しいアルバムに参加していて、そのセッションで僕もアルバムを作ってるから参加してよという話になった。その時にふと思いついたフレーズがあって、ピアノを弾いてジルに聴かせたんだ。それが気に入ってくれたからテープに入れて渡して、後で歌を入れてくれて生まれた曲なんだ」
▲(C) Mike Schreiber
「ノラとは高校時代からの友人だけど、なかなか一緒にやる機会がなくて、ずっと待っていたんだ。今回それが叶ってとても満足だよ」
スティーヴィー・ワンダーのカヴァー曲「神の子供たち」には、2012年12月にコネチカットの小学校で起きた銃乱射事件の被害者への追悼の意が込められている。グラスパーの友人が事件で子供を亡くし、また彼自身にも幼い子供がおり、他人事ではないという気持ちがこの曲に繋がった。カヴァーにはもう1曲、ビル・ウィザーズの“ラヴリー・デイ”もある。
「老若男女の誰もが知ってる曲をアルバムに入れたいと思って録音したけど、マネージャーがそのテープをビル本人に聴かせてあげたら、とても喜んでスタジオに遊びに来てくれた。そこで彼からのメッセージをもらい、頭の部分に入れたんだ」
とのことだが、全体的には前回に比べオリジナル曲の割合が増えている。
「今回は全体の曲数も多くて、たくさんの曲を作ったけど、そうした点でソングライティングに力を注いだアルバムだ。それと、僕だけでなく他のいろいろなソングライターともコラボしている。プロデューサー的に言えば、より作り込んだアルバムだね」
取材・文●小川充
『ブラック・レディオ2』
10月23日(水)発売
TYCJ-60005 ¥2,415(tax in)
1.ベイビー・トゥナイト(イントロ)
2.アイ・スタンド・アローン feat. コモン&パトリック・スタンプ
3.ホワット・アー・ウィー・ドゥーイング feat. ブランディ
4.コールズ feat. ジル・スコット
5.ノー・ウォーリーズ feat. ドゥウェレ
6.トラスト feat. マーシャ・アンブロージアス
7.イェット・トゥ・ファインド feat. アンソニー・ハミルトン
8.ユー・オウン・ミー feat. フェイス・エヴァンス
9.レット・イット・ライド feat. ノラ・ジョーンズ
10.パーサヴィア feat. スヌープ・ドッグ&ルーペ・フィアスコ
11.サムバディ・エルス feat. エミリー・サンデー
12.神の子供たち feat. レイラ・ハサウェイ&マルコム=ジャマール・ワーナー
◆ロバート・グラスパー オフィシャルサイト
この記事の関連情報
ディナー・パーティー、<LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023>に出演決定
クリス・ブラウン、グラミー受賞を逃しディスったロバート・グラスパーへ直接謝罪
音楽ライブ配信“MUSER”、欧名門ジャズレーベル“Djazz”と提携し豪華アーティストたちの貴重なライブ映像を独占配信
ロバート・グラスパー、『BLACK RADIO III Supreme Edition』10月14日デジタル・リリース&新トラック「Therapy pt.2-Ft Mac Miller」公開
【インタビュー】ロバート・グラスパー、美しい旋律ともに「君ならできる」とメッセージ
ロバート・グラスパー、新AL『Black Radio III』を2月25日にリリース&先行トラック「Black Superhero」MV公開&プリオーダー開始
ロバート・グラスパー、 2022年5月に日本初開催となる新世代ジャズフェス<LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL>2日目ヘッドライナーに決定
<LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2022>開催。初日ヘッドライナーにドリカム
ロバート・グラスパー、『BLACK RADIO 3』収録予定の新曲「SHINE」発表