キャサリン・ジェンキンスの放つ、極上パフォーマンス
歌姫と呼ばれるシンガーは数多くいるが、美しい歌声、それに美貌の両方を兼ね備えた正真正銘のディーヴァ、キャサリン・ジェンキンスが、UKでこれまでで最大規模となるコンサートを開いた。ロンドンでは2万人収容のO2アリーナで公演。パフォーマンス、セット、衣装どの面においても、ウエストエンドで上演中のミュージカルに勝るとも劣らない素晴らしいステージとなった。
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キャサリンは2009年、エディット・ピアフの「La Vie En Rose」、「ゴッドファーザー~愛のテーマ」といったクラシックなポピュラー・ソングだけでなく、クイーンの「Who Wants To Live Forever」、エヴァネッセンスの「Bring Me To Life」、ボブ・マーリーの「No Woman, No Cry」などロックやレゲエをカヴァーしたクロスオーバー・アルバム『I Believe』をリリース。今回の公演もこのアルバムのトラックを中心に行なわれた。
そのセットリストだけでも興味深いところだが、オーケストラと共にシアター・スタイルで展開されたステージ・セットが、楽曲と美しいヴォーカルを最大限に引き出した。大掛かりなセットであるにもかかわらず、ほぼ1曲ごとに総入れ替え。テーマもそのつど変わり、それぞれにストーリーが存在する。キャサリンもセット同様、村娘、カルメン、プリンセス、悲劇のヒロイン、歌姫と七変化。そして、ディーバ然とただ立ち尽くしたまま歌うのではなく、バック・ダンサーとともにダンスや演技を交えながらパフォーマンスする。ロマンチックなシーンもあればユーモラスなシーンも。そしてアクロバット的な要素もあり、通常のクラシック・コンサートではなく、『オペラ座の怪人』や『レ・ミゼラブル』のような一流のミュージカルを見ているような気分にさせてくれた。
どのセットも素晴らしいものだったが、とくに印象的だったのが「Angel」で男性ダンサーと踊りながら空中に舞い上がる場面。ディズニーのアニメーション映画『Sleeping Beauty』のラスト・シーンを実写化したような幻想的で美しいものだった。また、アルバムの中でも圧倒的なパフォーマンスをみせたエヴァネッセンスのカヴァー「Bring Me To Life」で巨大な蝶に変貌するシーンも、ショウのラストを飾るに相応しいドラマチックで壮大なフィナーレとなった。
まさにディーバの名に相応しいキャサリンだが、彼女が愛される理由はそれだけにあらず。指揮者やオーケストラの奏者、ゲスト・シンガー、そして観客に向かいていねいに感謝の言葉を述べる姿は(ウェールズ訛りが入り)素朴で可愛らしく、どうして彼女が、敷居の高いクラシックの枠を超え国民的シンガーになり得たのかがわかる。
この夜のセットリストは以下の通り。
「Till There Was You」
「I Believe」
「Parla Piu Piano - Love Theme From The Godfather」
「Angel」
「No Woman, No Cry」
「Fear Of Falling」
「La Vie En Rose」
「Adaggio」
「Love Never Dies」
「Ancora Non Sai」
「Se Si Pierde Un Amore」
「Carmen Medley」
「La Califfa」
「Endless Love」
「Who Wants To Live Forever」
「Bring Me To Life」
「Nella Fantasia」
来日公演はいますぐにとはいかないかもしれないが、彼女の歌声が満喫できる『Believe』(輸入盤)が日本でもワーナー・ミュージック・ジャパンより発売中。クラシックは苦手という人にも、オーケストラをバックによりドラマチックになった「Bring Me To Life」は是非、聴いてもらいたい。
『Believe』の収録トラックは以下の通り。
「Love Never Dies」
「Bring Me To Life」
「Angel」
「I Believe」
「Who Want To Live Forever」
「Parla Piu Piano - Love Theme From The Godfather」
「Endless Love」
「Till There Was You」
「La Vie En Rose」
「La Califfa」
「No Woman, No Cry」
「Fear Of Failling」
「Ancora Non Sai」
Ako Suzuki, London
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