<FRF05>感動のレッド・マーキー、圧巻のライヴを見せたクラムボン
とにかく天候に恵まれなかった今年のフジロック・フェスティバル。特に悲惨だったのが、ビッグ・アーティストが軒並み出演した2日目。午前中こそテンションの上がる快晴であったが、開演時間を迎える正午すぎ頃から空は見る見るうちに雨雲で覆われていった。まさに、土砂降りという表現がぴったりなこの2日目は、雨による気温の低下とともにぼくのテンションも急降下。正直、この2日目の途中まで、ぼくのテンションはかなり低かったことをここに証言します。では、なにをキッカケにそのテンションが回復したのか? それがこれからレポートを綴るクラムボンのライヴであったわけです。
降ったり止んだりが続く天候のなか、苗場の冷たい雨に冷やされきった身体を引きずって午後7時頃、フィールド・オブ・ヘブンから遠路はるばるレッド・マーキーまで下山してきた。もちろん、クラムボンを観るためである。降り続いた雨で足場は緩くなり、ちょっと移動でも予想以上に体力を消耗。レッド・マーキーに着いた頃のぼくは、ヘトヘトだった。三十路も近くなると、この道程は結構な苦行なのだ。しかし、若干遅れ気味で進んでいたタイムテーブルのおかげで、どうにかこうにかスタート前には到着することができた。
いっぱいいっぱいの状況でレッド・マーキーに入ると、中はクラムボンの出演を待ちきれないオーディエンスですでに興奮状態。約20分押しで始まった彼らのショウは、ベスト盤にも収録された「パンと蜜をめし上がれ」でスタート。待ちわびた観客たちの歓声に応えるかのように、メンバーも熱狂的なパフォーマンスを披露した。ベースのミトは、コーラスでシャウトしすぎて息が切れてしまい、MCをヴォーカル&ピアノの原田郁子に譲ってしまうほどであった。なかでも圧巻だったのが、“フェスなどではあまりやらない”という「ララバイサラバイ」。曲が進むにつれ、徐々にドラマティックな展開を見せるこの曲が演奏されると、会場は歓喜ともため息ともつかない感覚に支配された。そして壮大な展開を見せるクライマックスでは、美しいブルーのライティングと相まって、音楽のもっとも美しい瞬間を体験することができた。その後、半ば放心状態となったレッド・マーキーだったが、その活気はすぐさま取り戻されることとなる。そう、あの会場にいた誰もが待ちの望んでいた曲、「サラウンド」がプレイされたからだ。この日、この瞬間レッド・マーキーでこのステージを観た人たちは、“音楽”の持つポジティヴなヴァイヴを具体的に感じることができたはずだ。なぜなら、その時そこにいた人たちはみんな笑顔で、本当に幸せそうだったから。もちろん、ぼくも本当に最高の気持ちだった。
「サラウンド」の演奏が終わるとメンバーは、ペコリと会釈をして会場を去った。しかし、レッド・マーキーは拍手喝采の渦。そして、アンコールの要求だ。なりやまない拍手の中、メンバーが再び登場し、ベースのミトがこう語った“これからやる曲は、新潟の地震が起こったときに流れたニュースを見て、作りました。この曲はどうしてもココでプレイしたかった”。そして、「バイタルサイン」が始まった。
原田郁子のヴォーカルとピアノ、ミトのベース、そして、伊藤大助のドラム。メンバー各々の演奏力を最大限にまで発揮したこの曲は、まさに圧倒的な迫力と凄まじいまでのエモーショナルを放っていた。しかし、佇まいは、あくまでクール。そこがクラムボンのクラムボンたる所以だろう。その飄々とした存在感の中には、恐ろしいまでの音楽に対するヴィジョンと情熱が込められている。そんな3人が奏でた「バイタルサイン」から、ぼくはロックの新しい形を感じることができた。
最後の一曲の演奏が終わっても、会場であるレッド・マーキーの興奮は収まることがなかった。拍手は鳴り止むことを知らず、いつまでも響いていた。たぶん、この日のクラムボンのライヴは、伝説として語り継がれる類のものだったと思う。ぼくはそんな歴史的なライヴを観ることができて本当に興奮していた。そして、この3人の音楽好きが起こした奇蹟を、ぼくは決して忘れないだろう。
取材・文●宮崎敬太
Photo/Masanori Naruse
クラムボン
2005/7/30 RED MARQUEE
パンと蜜をめしあがれ
はなれ ばなれ
インパクト
アンセム
ララバイ サラバイ
ハレルヤ
imagination
シカゴ
サラウンド
・アンコール
バイタルサイン
BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
降ったり止んだりが続く天候のなか、苗場の冷たい雨に冷やされきった身体を引きずって午後7時頃、フィールド・オブ・ヘブンから遠路はるばるレッド・マーキーまで下山してきた。もちろん、クラムボンを観るためである。降り続いた雨で足場は緩くなり、ちょっと移動でも予想以上に体力を消耗。レッド・マーキーに着いた頃のぼくは、ヘトヘトだった。三十路も近くなると、この道程は結構な苦行なのだ。しかし、若干遅れ気味で進んでいたタイムテーブルのおかげで、どうにかこうにかスタート前には到着することができた。
いっぱいいっぱいの状況でレッド・マーキーに入ると、中はクラムボンの出演を待ちきれないオーディエンスですでに興奮状態。約20分押しで始まった彼らのショウは、ベスト盤にも収録された「パンと蜜をめし上がれ」でスタート。待ちわびた観客たちの歓声に応えるかのように、メンバーも熱狂的なパフォーマンスを披露した。ベースのミトは、コーラスでシャウトしすぎて息が切れてしまい、MCをヴォーカル&ピアノの原田郁子に譲ってしまうほどであった。なかでも圧巻だったのが、“フェスなどではあまりやらない”という「ララバイサラバイ」。曲が進むにつれ、徐々にドラマティックな展開を見せるこの曲が演奏されると、会場は歓喜ともため息ともつかない感覚に支配された。そして壮大な展開を見せるクライマックスでは、美しいブルーのライティングと相まって、音楽のもっとも美しい瞬間を体験することができた。その後、半ば放心状態となったレッド・マーキーだったが、その活気はすぐさま取り戻されることとなる。そう、あの会場にいた誰もが待ちの望んでいた曲、「サラウンド」がプレイされたからだ。この日、この瞬間レッド・マーキーでこのステージを観た人たちは、“音楽”の持つポジティヴなヴァイヴを具体的に感じることができたはずだ。なぜなら、その時そこにいた人たちはみんな笑顔で、本当に幸せそうだったから。もちろん、ぼくも本当に最高の気持ちだった。
「サラウンド」の演奏が終わるとメンバーは、ペコリと会釈をして会場を去った。しかし、レッド・マーキーは拍手喝采の渦。そして、アンコールの要求だ。なりやまない拍手の中、メンバーが再び登場し、ベースのミトがこう語った“これからやる曲は、新潟の地震が起こったときに流れたニュースを見て、作りました。この曲はどうしてもココでプレイしたかった”。そして、「バイタルサイン」が始まった。
原田郁子のヴォーカルとピアノ、ミトのベース、そして、伊藤大助のドラム。メンバー各々の演奏力を最大限にまで発揮したこの曲は、まさに圧倒的な迫力と凄まじいまでのエモーショナルを放っていた。しかし、佇まいは、あくまでクール。そこがクラムボンのクラムボンたる所以だろう。その飄々とした存在感の中には、恐ろしいまでの音楽に対するヴィジョンと情熱が込められている。そんな3人が奏でた「バイタルサイン」から、ぼくはロックの新しい形を感じることができた。
最後の一曲の演奏が終わっても、会場であるレッド・マーキーの興奮は収まることがなかった。拍手は鳴り止むことを知らず、いつまでも響いていた。たぶん、この日のクラムボンのライヴは、伝説として語り継がれる類のものだったと思う。ぼくはそんな歴史的なライヴを観ることができて本当に興奮していた。そして、この3人の音楽好きが起こした奇蹟を、ぼくは決して忘れないだろう。
取材・文●宮崎敬太
Photo/Masanori Naruse
クラムボン
2005/7/30 RED MARQUEE
パンと蜜をめしあがれ
はなれ ばなれ
インパクト
アンセム
ララバイ サラバイ
ハレルヤ
imagination
シカゴ
サラウンド
・アンコール
バイタルサイン
BARKS夏フェス特集2005
https://www.barks.jp/feature/?id=1000010016
FUJI ROCK FESTIVAL '05特集
https://www.barks.jp/feature/?id=1000001735
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