東京都内で今、「もっとも音楽を感じることができる街は?」といえば、真っ先に名前が挙がるのが下北沢だろう。何しろ、ライブハウスの数がハンパないし、リハーサルスタジオに楽器屋、レコード&CDショップ、ロックTシャツなども豊富な古着屋、レアな音楽雑誌がも見つけられる古本屋もあちこちにあるから、本格的に音楽活動したい人から単なる音楽ファンまで、毎日どっぷり音楽に浸れる要素が揃っている。
また、小田急線と京王井の頭線が利用でき、新宿まで小田急線の急行で8分、渋谷には井の頭線の急行でわずか4分というアクセスの良さもあり、下北沢周辺に住みながら将来の夢を実現しようと頑張っている若者たちも多い。そんな下北沢のカルチャースポットを紹介しつつ、後半では老舗ライブハウス「下北沢 CLUB Que」の代表・二位徳裕氏に下北沢ライブハウスシーンの今と昔についてお話を伺ってきたのでお届けしよう。
ひしめき合う大小30前後のライブハウス
シェルター、Que、GARAGE、251等、1990年代から営業を続ける店から、LIVEHOLIC、近松といった近年オープンした店まで、大小30前後のライブハウスが夜な夜な音楽を発信している。
シェルター Que まずは駅の東口改札を出て、三軒茶屋方面に歩いて行き、有名アーティストが多く出演しているGARDENから、音楽食堂とライブのmona records、アコースティックライヴやトークイベントも開催している風知空知、440やCLUB 251を経由して茶沢通り沿いのTHREE、BASEMENTBARまで。ライブハウスの場所をチェックしながら、街を歩いてみてはいかがだろう。
下北沢ならではのサーキットイベント
<Shimokitazawa SOUND CRUISING>ライブハウスが多いこともあって、サーキットイベントの開催が多いのも下北沢ならでは。2019年で8回目の開催となった<Shimokitazawa SOUND CRUISING>、THEラブ人間が主催している<下北沢にて>、若手アーティストをフックアップする<KITAZAWA TYPHOON>、<KNOCKOUT FES>、<SHIMOKITAZAWA SNAZZY TUNES>などなど、丸一日、下北沢の街で音楽にどっぷり浸ることができる。
バンドでも個人でも24時間音が出せる街
バンドをやりたい、1人で弾き語りをしたい、初心者だけど楽器を練習したい。そんな気持ちに100%応えてくれるのが、駅周辺にあるリハーサルスタジオだ。
サウンドスタジオノア 下北沢店24時間営業のサウンドスタジオノア 下北沢店、ガードアイランドスタジオ 下北沢南口店及びウェスト店から、リンキィデンクスタジオ 下北沢1st(営業時間9:00〜6:00)、リンキィデンクスタジオ 下北沢2nd(営業時間10:00〜24:00)など、遅くまで営業しているスタジオばかり。
カユいところに手が届く楽器店も
大規模な楽器屋さんを求めているなら、新宿や渋谷、池袋、お茶の水などに行ったほうが早い。しかし、ここ下北沢では、ライブハウスやリハーサルスタジオの近くに、弦やピック、シールド類、エフェクター用の9V電池(これが意外とコンビニになかったりする)など、「あっ、あれがない!」というときにカユいところに手が届く店があるので、以下にご紹介したい。
セカンドストリート楽器館 下北沢店
2019年6月にオープンしたばかりの中古楽器専門店。ギター、ベース、エフェクターなどのアクセサリーが充実している。ズラリと並んだ色んなメーカーのエレキ、アコースティックを眺めているだけでワクワクするお店だ。
LITTLE BY TECH
楽器のトラブルで困ったときは、迷わずここへ。修理やメンテナンスのみならず、楽器のことがよくわからない初心者の相談にも乗ってくれる。弦やピックはもちろん、ギターのブリッジを調整したいときに必要な六角レンチだってある。まさにバンドマンの駆け込み寺的なお店だ。また、BiSH、BiSらのサウンドプロデュースを手掛けていることで知られる松隈ケンタが代表を務める音楽制作チーム・スクランブルズが運営する音楽スクール・スクランブルズ ミュージックカレッジ(SMC)を併設しているところにも注目。
ハードオフ下北沢店
意外とその存在を知られていないのがこちら。ご存知、ブックオフのハード版だが、あなどるなかれ。2Fフロアには中古楽器はもちろん、アンプ、エフェクター、小物もしっかり取り揃えられている。ちょっとレアな製品が売られている場合もあるから、しっかりチェックしておきたい。
ロックファッションや音楽情報の宝庫
茶沢通り沿いにあるディスクユニオン下北沢店をはじめ、音楽の街らしくあちらこちらにレコード&CDショップが点在している。アーティストにもファンが多いのが老舗アナログレコード店フラッシュ・ディスク・ランチ、洗練されたオシャレな店内でインディーズアーティストの音源と出会えるJET SETなどなど。知らない音楽と出会う喜びがあちこちに転がっている。
また、シカゴ、STICK OUT、VALONをはじめ、数百円でも買えるオシャレな洋服だけでなく、着物などの和装も揃っちゃうのが下北沢の古着屋さん。個性的なファッションをリーズナブルに手に入れて、ライブの衣装にするバンドマンも多い。メガネだって、“インディーズ系めがね店”北沢めがね工房に行けばThe Birthdayのチバユウスケモデルのサングラスが手に入ったりするから音楽ファンにはたまらない。
“絶対音楽好きな店主がやってるはず”な飲食店
街を歩いているうちに、ふと入った店で音楽と出会うこともある。下北沢には、音楽関連の店じゃなくても音楽好きが経営してそうな店がある。凛とした佇まいで味も文句のつけようがない絶品の蕎麦屋・蕎麦切り 正音では、いつ行っても店内にマニアックなブルースが流れている。オーティス・ラッシュやらライトニン・ホプキンスなど、絶対ホンモノがわかってる感じのアーティストをチョイスしているのが渋い。しかし、わざわざ店主に「ブルース、好きなんすか?」なんて声をかけるのは、野暮というもの。ブルースに浸りつつ、蕎麦をササっと手繰っていざ、ギター片手に下北沢のクロスロードへと向かうのだ。
蕎麦切り 正音一番街にあるムムリック・マーフィーはアコースティックライブも行われるミュージックBAR。店内に流れるBGMはロック、ブルース、R&B、ソウル、ジャズ、メタルとまさにオールジャンルで、店主の選曲センスを楽しみながらつまむ料理が、これまた美味だ。音楽好きはもちろん、ライブを終えたアーティストも顔を出すアットホームなBARである。
ムムリック・マーフィー 下北沢のひとつ隣の小田急線世田谷代田駅のSOUL麺 代田店は、その名の通りソウルフルなラーメン屋さん。BGMにソウルミュージックが流れていたり、オーティス・レディングのイラストが飾られていたりと、まさにソウル音楽が好きな店主がやってそうだ。魂を揺さぶるクリーミーでコク深い鶏白湯スープを是非。
こんな風に、普通にお店をやってる人も絶対音楽マニアだったりする街だから、自分の地元には音楽の話が合う人がいなかった人も、きっと音楽で誰かと仲良くなれる。下北沢はそんな街なのだ。