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LIVE in 台湾 総括レポート [LIVE編]

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言葉の壁を乗り越えて、温かいピースな空気に包まれたライヴ


「イツナロウバ」フル・ライヴ映像

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「ナビ」フル・ライヴ映像

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10/25、台湾は北京市にある“台湾国際会議中心”(タイペイ・インターナショナル・コンベンション・センター)でKICK THE CAN CREW(以下、KTCC)のライヴが行なわれた。 これは、KTCCが台湾観光協会より親善大使に選ばれた一環のイベント。SARS余波を吹き飛ばし、台湾観光の再燃に一役買うというもの。そう、彼らは台湾でも大人気で、KTCCを含め台湾の日本に対する注目度も高い。(前々日の10/23には小田和正がライヴをやっていた!) この夜、会場は既に地元のヒップホップ・チームのオープニングアクトや、“無理に声、出させようとしてない?”(笑)ってなくくらいテンションの高い司会者のMCでヒートアップ。

そんななか、20時過ぎにスタートしたKTCCのライヴは、「BREAK 3」でスタートした! マイクを取る順に、MCU、LITTLE、KREVAがひとりずつステージに登場。台湾のファンも、日本からやってきたファンも一斉に立ち上がり踊りだした。

続けて「RE-FRESH」「地球ブルース~337~」を披露したあと、KREVAが「言葉が通じないからアレだけど、“You can feel the music”!」とMC。そして日本から来たファンにも感謝も。続けてパワフルな「スーパーオリジナル」などを披露した後には、「“ナビ”って曲が11月に日本で出る新曲、……そう、シンクー(中国語で“新曲”の意)なんだけど。日本の人も聴いたことない曲を、ここで世界初披露するよ!」(KREVA)と、新曲「ナビ」(11/12発売)を披露。落ち着いたリズムに<行けるところまで歩いていこう>というメッセージが乗っている、KTCCらしい、ナチュラルで独自の姿勢を示したリリックだ。

中盤にさしかかると、「これからはゆっくりめの曲をやるよ」(KREVA)と「ユートピア」を披露。派手なライティングから一転、ブルーのライトにスモークが立ち込めるドラマチックなステージだ。続く「GOOD MUSIC」でもじっくり聴かせたあとは、再び「パーティータイム!」(KREVA)。DJ SHUHOが紹介されて「イツナロウバ」、切れのいいライムとスクラッチがグーな「TORIIIIIICO!」、「“パーティー”は日本語で“祭り”! そこで担ぐのが“神輿”! これが日本のスタイルのフィエスタ!」(KREVA)と紹介して「神輿ロッカーズ」……と会場のボルテージは最高潮、テンションの針は振れっぱなし! MCUは跳ね、LITTLEはタオルをブンブン振り回す!  台湾のファンは、シミジミ系よりもこういったアップテンポなものが断然大好きとみえて、後ろで見ている人達も恥ずかしがることなく自由に踊って騒いでいるのが印象的。

そして「あと3曲です。シェシェ(中国語で“ありがとう”)! ドーシャー!(台湾語で“ありがとう”)」(KREVA)。「パンク寸前のFUNK」では足並み揃えてメンバー3人がステップを踏み、「sayonara sayonara」では、ファンの「ヘイ!」の掛け声が響くように、その部分だけ音を切り、煽り、盛り上げ、ファンはそれにうんと応えている。そして本編は「アンバランス」で終了。アンコールでは「たくさんの人が集まってうれしい。いっぱいいるので、盛り上がれる曲、パーティーソングを!」(KREVA)と告げると「マルシェ」でステージを締めくくった3人の個性がぶつかりあいながらも、ぴったりと息の合った場面を随所に見せつけるステージング。さすがプロ!といった貫禄であるのだが、それぞれ余裕なフロウをみせるあたりはメンバー自身が一番楽しんでいる、といったニクいライヴだった。  
文●星野まり子



ライヴが始まる寸前、ステージ脇で3MC+1DJ、声を合わせて「ONE」と気合いを入れた。それは何かKTCCの新たな歴史に始まりを鳴らすゴングのようだった。彼らは小さいクラブから大きなライヴまで、それこそ何年もライヴを重ねてきたが、今回ばかりはそれぞれの表情が少し、固いような印象を受ける。実際、日本語でのラップをやってきた彼らにとって言葉の壁というのは想像以上に高かったのかもしれない。しかし、「BREAK 3」で始まったオープニング曲、それぞれのバースでひとりづつ登場すると、楽屋のほうまで伝わる歓声が湧き上がった。それぞれ特徴ある声とフロウ。そのKTCCの個性がオープニングから言葉の壁を越えて台湾の観客をひきつけた。そして硬い表情とは裏腹に、鍛え上げられてるからこそ生まれる余裕と呼吸の合うパフォーマンスは圧巻だった。

「北京語はきっちり練習したので・・…」と当日の記者会見で語っていたKREVAだが、さすがにMC担当の彼にとって言葉の壁を痛感したのは初めのマイクを握ってMCを喋った時に違いない。最初のほうにしゃべった北京語は通じなかった。でも、そこはさすがKREVA。臨機応変に対応して、あらゆる手段で伝えてしまうところが彼らしい。

今回は全体の構成的にも盛り上がって、メロウがあって、また盛り上がるといったメリハリが効いていて、観客もそれについていきやすかったし、言葉が正確に伝えられない分、身体でのパフォーミングはすごく大きなものを感じた。彼らが持ちつづける音楽的情熱が声、身体に出た分、開場にもエネルギーが伝わってきたし、ホールではあったが、クラブやライヴハウスのような温かいピースな雰囲気に包まれた。彼らが持ちつづける音楽的な根本にあるものが素直に出た貴重なライヴだったように思う。そして、何よりも印象的だったのは楽屋に帰ってきた彼らは笑って、清々しい表情。またひとつ自信をつけた顔だった。これからもKTCCは開場が小さくても、大きくても、場所が国内だろうが、海外だろうが、それぞれの場所にあった最高のライヴをしてくれるのは間違いない。
文●イトウトモコ
☆「ナビ」の映像アップが諸事情により遅くなりましたことを御詫び申し上げます。特集ページへ戻る
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