【速レポ】モンパチフェス＜WWW!!23＞、KICK THE CAN CREW「心からこの言葉が叫べると思います、“まだ何も終わっちゃいないぜ”」

いよいよ終演のときが近づきてきた＜What a Wonderful World!! 23＞3日目、その寂しさを多幸感と深い愛情で塗り替えてくれたのが、マングースSTAGEの大トリ、KICK THE CAN CREWだ。直前まで熱演を繰り広げていたWANIMAを観終えた観客が続々と詰めかける中、颯爽とKREVA、LITTLE、MCUの3人がステージに登場し、挨拶代わりにと彼らのシーンへの帰還を知らしめた「千％」からライブをスタート。しなやかでキレがあって、フロウはそれぞれが天下一品。一気に会場全体を持っていくパワーもある。

◆ライブ写真

KREVAの「騒げー！　飛び跳ねろ！」の合図から放ったパーティーチューン「地球ブルース〜337〜」では、3人がじゃれ合うような仕草も見せながら《あけろ！あけろ！みんなでみんなを盛り上げろ！》と歌うのだから、自然とオーディエンスも声を上げる。楽しすぎると勝手に体は動くし、声も出るんだと実感。


短い挨拶からサウンドを支える熊井吾郎（DJ, MPC）を紹介し、KREVAが改めてWANIMAからすぐに駆けつけた観客へ感謝を伝える。「ありがとう！　もう、家族だよ。ここを住所にしましょう」と次の曲を予期させつつ、その場にいる全員でもっと上へ、とコール＆レスポンスの事前案内を始めるニクい流れ。驕り高ぶらないこの器の大きさ、スッと入っていける安心感もあり、彼らが求められ続けていることを再認識させられてしまった。

当然のように「住所」が始まれば、気持ち良すぎて笑顔で手を振り上げる観客。ラストの“in the house”は凄まじい大合唱となっていく。道を切り開くLITTLE、頼りがいを見せるKREVA、言い聞かせるよう胸の奥に響かせるMCUという三者三様なラップが繰り出され、明日への活力を呼び起こす「sayonara sayonara」もまた素晴らしかった。


そして、「必然的に昔の曲が多くなっちゃうけど、昨年出したアルバム『THE CAN』から1曲いってみようか」というKREVAの言葉からセレクトされたのは「トライは無料」。そのキャリアから長く愛される曲がセットリストの多くを占めてしまいがちだろうけれど、現在進行系の彼らも魅力的だ。ゆったりしたビートに乗せて、大人になっても学びに遅すぎることはないと綴られたリリック。常に進化を遂げる彼らだからこそ響く重みも感じられた。

ここでMONGOL800へ25周年を迎えたことへの賛辞を送りながら、実は自分たちの方が先輩だったと気づいて「おい、モンパチ！　いい音楽やってるな」とKREVAが、「キヨサク、元気か？」とMCUが先輩風を吹かせて笑わせつつ、「今、11月でこの気温、この盛り上がり。心からこの言葉が叫べると思います。“まだ何も終わっちゃいないぜ”」とLITTLEが声を轟かせた「イツナロウバ」から終盤戦へ。


青春期に抱えるモラトリアムに寄り添うナンバー「アンバランス」をエモーショナルに放ち、ラストはジャパニーズヒップホップの歴史の中でも燦然と輝くマスターピース「マルシェ」。《上がってんの？下がってんの？皆はっきり言っとけ！(上がってる！)》と彼らと声を合わせることで生まれる高揚感は格別。《幸せの国へようこそ》というフレーズも響き渡る、誰も置いていかない極彩色なパーティー。ステージの去り際、KREVAが「それではラストはMONGOL800！」と叫び、見事にバトンを繋げていった。


文◎ヤコウリュウジ
写真◎macoty