| 英国オックスフォードのプライドと至福を備えた幸運なバンドは、彼らの他にいないだろう。均質、形骸化する現代の音楽ビジネスの中で、ポップ・ミュージックとR&Bを中心としたレーベルやラジオ局は、スペース・ロックに手を伸ばそうとはしない。そうした中、Radioheadはリスクを好み、限界に挑んで成功を収めている。メジャーレーベル(どのレーベルであっても同じだが)に属しながらも、収益に頭を悩ますレコード会社から、ほとんど干渉されず、やりたいことをやっている数少ないアーティストだ。 だからといって、彼らは、業界のすべてが順調ですばらしいとは考えていない。それどころか、主人を噛むような発言さえも厭わない。最新作『Hail To The Thief』のリリースにあわせ、米LAUNCH.comの代表Lyndsey Parkerが、ニューヨークのスタジオでThom Yorke(Vo)とJonny Greenwood(G)にインタヴューを試みた。2人は、業界の腐った部分を緊急に修繕する必要がある、と臆せずに語った。驚くことに、ネット上のファイル交換を嫌う多くのアーティストとは異なって、インターネットが業界の変革を担うと彼らは言う。 もちろん、太陽が降り注ぐカリフォルニアでレコーディングした最新作についても2人の声を拾うことができた。また、成熟し続ける優美、ライヴでの新曲披露、芸術的な期待が高まるニュー・アルバムへのプレッシャーといったことについても、率直に語ってくれた。だが、注目に値するのは、インタヴューが楽曲のダウンロードとファイル交換についての質問に及んだときだ……我々は、業界についての2人の本音が出た貴重なインタヴューを収録することに成功した。 ――『Hail To The Thief』はアメリカでのレコーディングですが、特にロサンゼルスという場所がどのように音楽に影響しましたか? アメリカでのアルバム作りは初めてだと思うのですが……。 JONNY:すばらしかった。前回はコペンハーゲンで、真冬だった。バンドに適した環境だと思ったんだけど、ちょっと……。 THOM:ミスった! JONNY:ちょっと見込み違いをしたようだ。僕たちの音楽を考えると、あの環境が必要だと思った。ナンセンスだったよ。 THOM:大きな間違いだ。 JONNY:それで、今回は太陽が降り注ぐ場所で室内にこもって2週間のレコーディングをした。とても気分がよかった。 THOM:とても魅惑的だった。魅惑的なことをした……。 JONNY:そう。映画のプレミアに行ってね。とても奇妙だった。観客は最後までじっと座ってクレジットを見てるんだ。すると、そのクレジットでみんなが拍手する。これはヘンだよ。笑うね。 THOM:映画は良かった。とても魅惑的だった。L.A.に行って魅惑と太陽を浴びたんだ。 ――過去のアルバムと比べて、ストレスを感じずに作れた、と? JONNY:ストレスを感じてる暇なんてなかった。最初の2日間で録った曲を聴こうと思ったら、もう2週間たっていたんだ。レコーディングしたことさえも覚えてないよ。誰がプレイしたかもね。魔法にかかったみたいに、ぼうっと過ぎ去ったんだ。 THOM:最初の段階は……日が進むにつれてちょっといいかげんになった。 JONNY:あとはミキシングと細かな調整。この2週間はとても良かった。仕上げに向けてエネルギーをもらった感じだ。 THOM:1日1曲こなしたんだよね? ――コンピュータを使わなかったという噂がありますが、本当? THOM:いや。グリッド(DTMで使う時間軸を基にした音符や小節の単位)については考えがあってね。グリッドに乗るのは……グリッドには乗っかりたくないんだ。 JONNY:説明がわかりにくいかも。コンピュータは持ってるんだけど、ある意味、ソフトを使うのを止めたんだ。コンピュータを使わないわけじゃない。 THOM:時間を管理するソフトをね。レトロな感じでやった。古い時計があるよね。狂った時計を使ったんだ。 ――今回のアルバムでメインの楽器は? 『OK Computer』ではメロトロン、『Kid A』と『Amnesiac』ではオンド・マルトノでしたが。 THOM:Ennio Morricone(エンニオ・モリコーネ:映画音楽の巨匠)を聴いた……。(Jonnyに向かって)でも、メインの楽器なんてあるか? JONNY:ないね。すべての楽器を同等に扱っている。必要なときに必要なものを使うんだ。差別はしないよ。そうありたいと思ってるし、それがいい。 THOM:うん。それがいい。『OK』と『Amnesiac』を作った頃は、大きな問題だった。“あいつらはドラムマシーンを使ってる!”とか。 JONNY:単にノスタルジックな理由で、どの楽器のほうが優れているとか……そんなのナンセンスだよ。僕たちが使ってるコンピュータは数年前のものだし、ギターは11、12年前のものだ。 THOM:もっと古いよ。 JONNY:Thomのギターの方がずっと古い。 THOM:僕が生まれる前からあったんだ! JONNY:ピアノもかなり古い。どれがいいとか、悪いというのはないよ。 THOM:本来、そうあるべきなんだ。 >>Part2に進む | |