――アルバムを作り終えて、手応えはどうですか?
ケリー・ジョーンズ(Vo/G):楽しく作ることができた。自分たちとしては今まででベストの曲、ベストなレコーディングができたと思う。全部作り終わって、このレコードを持ってツアーに出るのがすごく楽しみなんだ。
スチュアート・ケーブル(Dr):ケリーに付け足すことはないな(笑)。
リチャード・ジョーンズ(B):そう、スタジオの雰囲気も良かったし、楽しんだよ。だからこれをライヴでどう再現していくか、そこから先どうなるかってところだね。
――新曲ではヘヴィなギターが印象的でした。前作は比較的多彩なサウンドが展開されてましたけど、それに対してギターバンドとしての原点に戻ったということになのでしょうか?
ケリー:そうであって、そうでないといえるかな。アルバムの全13曲のうちギターがガンガン鳴ってる曲は4曲で、あとはとってもシンプルなブルースもあれば、ストリングスやブラスの入ったアコースティックな曲もある――「Maybe Tomorrow」なんかは、かなりソウルフルでほとんどアイズレー・ブラザーズって感じだし、「I'm Alright」には雰囲気のあるドラムループも入ってるしね。というわけで確かにシンプルなものに帰ろうという気持ちはあったけど、それに加えてさまざまなサウンドを取り入れてみたりっていう挑戦は、以前よりしてるんじゃないかな。あと曲の多彩さっていうのも今回は増していると思ってるんだ。
――確かにアメリカのルーツ・ミュージックやソウルの影響が感じられます。女性のバックコーラスも入ってますね。
ケリー:前作の「Vegas Two Times」とかで女性コーラスにトライしてるよ。トム・ジョーンズと共演したとき知り合ったシンガーたちで、'98年だったかな。ゴスペル・シンガーとロックンロール・ギターの組み合わせは、常々やりたいと思ってたアイデアなんだ。ストーンズやフェイセズ、最近だとブラック・クロウズやベックとかいった多くの人がいろんなアルバムでやってるけど、出来てきた曲を聴いて、この曲にはこういうのがいいなって思ったわけ。もちろんほかにもアメリカのロックンロールとか、スティーヴィー・ワンダー、フォーク、カントリーといった、とにかくいろいろな音楽……クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルも……そういうものに影響されているなって感じさせるポイントはいくつかあると思う。だけど、いろんな人から影響を受けながらも、最終的にはあくまでステレオフォニックスのメロディ、サウンドに行きつくことが出来てるんじゃないかな。
――今回はケリーが自分でプロデュースを行なっていますけど、その理由は?
ケリー:まぁ、偶然ではあるんだけど、今回は曲をたくさん書いてて、それを実際にレコーディングする前に小さなスタジオに入ってエンジニアと2人でデモを作ったんだ。で、作ってる最中に曲に対するサウンドとかアイデアがどんどん湧いてきて、じゃあ、それを他の人に頼むよりも自分で実現させるのがいいのかなって。それにスタジオでいろいろと試すのが自分でも面白くなってきたから、じゃあ今回は自分でやってみようかって気になったのさ。
――『You Gotta Go There To Come Back』っていうタイトル(行ってみなければ戻ってこれない)は何を意味しているんですか?
ケリー:これはスタジオの中でよく口にしてた、ちょっとしたフレーズから来てる。いろんなアイデアを試すときって、場合によっちゃあ2日も3日もかかって、それでも十中八九は使い物にならなかったりするんだ。そういう試行錯誤を重ねていって、最終的には行き着くところに行き着くんだけど。試してみて初めて答えが見い出せるって意味で、それが歌の歌詞にも通じてると思ったんだ。で、その歌詞というのは自分の過去2年間の経験を反映していて、普段の生活の中でも試しては失敗し、振り出しに戻ったところで答えが見つかったりする。浮き沈みや、いいことも悪いことも通過してね。そういう部分が、ちょうどタイトルとしていいんじゃないかって思ったんだ。
――ケリーが書く詞は、ひとつのストーリーになってましたけど、それは今回の作品でもそうなんですか?
ケリー:どの歌、どの歌詞をとってもたぶんストーリーと言えばストーリーなんだ。だからどの歌詞もいわゆる差っていうのはなくて、自分としてはしっかり時間をかけて、言葉を選んで書いてるつもりなんだけど、ただ、1stの時みたいにある登場人物がいて、その人について第3者的な立場から見たストーリーというよりも、今回はどちらかというと自分の感じたこと、自分の気持ち、そういったものを書いた歌詞が多いかな。
――例えば「ジェラシー」という曲の歌詞について説明してもらえます?
ケリー:ジェラシーって誰もが経験する感情だよね。人との関係、お金、野望とか、いろいろなものを追い求めていくと出てきてしまうものだと思う。この曲についていうと、新しい恋愛関係を始めた時に、自分でも実際にそういう気持ちを経験して、やっぱり数カ月はすごく不安な気持ちになったことがあったんだ。それを書いた曲だよ。
――じゃあ、今後の予定を聞かせてください。
リチャード:このあとイギリスに戻って、ラジオ局主催のちょっとしたイヴェントにいっぱい出て、その後はたぶんヨーロッパ中のフェスティバルをまわるよ。日本には8月のサマーソニックで戻ってくる。それからもう12カ月か13カ月くらい、世界各国をずっとツアー三昧だね。
――フェスティバル入れて、これまで3度ぐらいライヴを経験されてますけど、日本のオーディエンスって如何ですか?
スチュアート:とってもナイス。礼儀正しい。すごく熱心なところが好きなんだ。曲が終わると、とりあえず一回みんなシーンとなるよね。ケリーがひと言いうと、みんな拍手し出したりして……そういうところもいいね。
取材/文●編集部