『UNDER RUG SWEPT』 WEA WPCR-11110 2002年02月20日発売 2,520(tax in) 1 21 Things I Want In A Lover 2 Narcissus 3 Hands Clean 4 Flinch 5 So Unsexy 6 Precious Illusions 7 That Particular Time 8 A Man 9 You Owe Me Nothing 10 Surrendering 11 Utopia 12 Sister Blister 13 Sorry 2 Myself
| ●アラニス・モリセット・オフィシャルサイトはこちら!! | ――前作『サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』のツアーが終わってから、今作『UNDER RUG SWEPT』のレコーディングをスタートするまで、どういう風に過ごしていたのですか?
アラニス・モリセット(以下アラニス): 『サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』のツアーを終えてから、創作に少し時間を費やしてたの。表現手段といっても、色々あるのよね。絵、ダンス、執筆、読書、写真…、そんなことをしばらく続けてから、休みを取ってフィジーに行ったのよ。小さな村を訪ねて、すてきな人々と触れ合った。その前に、短いツアーもしたわ。行き先はベイルート、クロアチア、イスタンブール…、ずっと行きたいと思ってた所ばかり。それが全て終わったあと、カナダで本格的な曲作りに入ったの。信じられないくらい、あっという間に書けたわ。それでレコーディングを始めたわけ。
――レコーディングは具体的にいつ開始したのでしょうか?
アラニス: まず1ヵ月半くらいかけて30曲を書き上げたの。そのあと、今年のはじめになってロサンゼルスに来て、いくつかのスタジオで、それぞれ違うバンド仲間やミュージシャンたちとレコーディングに入ったわ。ギターにジョエル・シェアラーとニック・ラシュリー、ベースにクリス・チェニー、ドラムにゲイリー・ノヴァク。基本的には、この4人。そのほかにゲストとしてアルバムに彩りを与えてくれたのが、ベースをプレイしてくれたエリック・エイヴリー(ex: ジェーンズ・アディクション)、それから確か「プレシャス・イリュージョンズ」だったかしら、とにかく幾つかの曲でギターを弾いてくれたディーン・デレオ、「ナルシサス」でベースをプレイしてくれたフリー(レッド・ホット・チリ・ペッパーズ)、「ソー・アンセクシー」と「ユー・オウ・ミー・ナッシング」ではミシェル・ンデゲオチェロがベースをプレイしてくれた。メンバーには、とても恵まれていたわ。
――スタジオ・アルバムとして初のセルフ・プロデュース作品ですが、あなた自身が当初から思い描いた通りに完成しましたか?
アラニス: まず始める前から、アルバムは自分の音楽的およびサウンド的なテイストのスナップショットになると分かってたの。自分は実験を試みながら、一種のまとめ役みたいになればいいんだなって思ってた。例えば曲を、聴く人の中で花開かせる環境を提供する役目を担ったりという風にね。そんな感じで、だいたいどんなアルバムになるかは予想がついてたけど、具体的には、完成するまで見えてこなかったわね。いずれにしても、自分でプロデュースするのは、かなり楽しかったわ。
――自分でプロデュースしたことによって、ソングライティングのプロセスは変わりましたか?
アラニス: やっぱりインスピレーションを余計に得られるわね。今までも共同プロデュースはしてたから、自分の中にあるものが音楽面に反映されてはいたんだけど、特に今回はソングライティングが流れるように速く進んだような気がしたわ。それでいて最後には理想的なサウンドに仕上がっていったの。だから、なんとなく巧くいってるんじゃないかしら。
――これまでのあなたの曲はほとんどが、“あなた自身”“あなたの元恋人”“現在の恋人”“あなたの未来の恋人”のことについて歌っていますが、今回の作品は?
アラニス: 今回は、いろんな出来事を並べてるわよ。ちなみに書き始めた頃は、ちょうど恋が終わろうとしていて、ちょっと落ち込んでたというか、行き詰まってたのね。で、アルバムを作り始めれば、あっという間に次の章へ飛んで行けるって、直感的に思ったの。実際、曲作りに取り掛かった途端にそんな気配を感じたわ。これは覚悟して、シートベルトを締めなきゃって感じだった。本当にその通りになったし。アルバムでは、恋の終わりに伴う感情を「ザット・パティキュラー・タイム」や「ユー・オウ・ミー・ナッシング」にしたため、あれこれの出来事を日記からテープに移すように作っていったの。その過程で、独りになって将来を考え直したし、男女の間の溝を見つめながら、どうやったらその橋渡しとなれるかを自分の経験に基づいて探ってみたりした。世の中全体がどうかなんて分からないけど、少なくとも私自身の体験に照らし合わせて語ることはできるから。そのうち新しい恋人ができたりしてね。そんなこんなで、ここ数年で私は、人と人との関係をもっと意識するようになった気がするわ。それが、いくつかのナンバーに反映されてると思う。新譜だけでなく、今回は採用できなかった曲にもね。
――ちなみに、あなたの“自分らしさ”というのは、どんな部分だと思いますか?
アラニス: そうね、普通に話すように書くことかしら。韻を踏んだり、シラブルを完璧に収めたり、構成をきちんとしたりってことに捕らわれずにね。10代の頃は構成についてやたらと叩き込まれたけど、私はそれを採用する時もあれば、しない時もある。その自由さが自分でも心地いいの。つまりプレッシャーがかかり過ぎるやり方では作らないっていうのが、とても“自分らしい”と言えるんじゃないかしら。あるがままのものを受け入れるのであって、苦しんで生み出したりはしない。50時間もかかる作業なんてご免だわ。数時間か、できれば数分間なら最高だけど。
――マーヴェリックからデビューした時は21歳だったわけですが、その頃と今とで自分の変わったなと思う点について話してもらえますか?
アラニス: 何時間かかってもいい(笑)?とにかく、当時に比べると、すごく変わったわ。スピリチュアルな面、あるいは“目覚めや記憶”という風に私は捕らえてるんだけど…。様々な恋愛を経験してきたし、自分の感情面やセクシャル面や精神面で実験的なことを重ねてきたし、いろんな人と関わってきた。世界を旅したことも私の視野を広げてくれて、人とのつながりを、あらゆる次元で意識するようになった。その分、こう、支配的でなくなったっていうのかしら。単純に、年ごとに、自分の肌がしっくり来るようになってきたって感じね。余計なことは気にならなくなったわ。
――新作では何といっても、今までと比べてヴォーカルの表現力の面での押し引きが素晴らしいですね。
アラニス: そうねえ、自分の声についてあまり客観的には考えられないけど、とかくアルバムを出して数年後に聴き返してみると、自分の声質がどんどん豊かになって、音域が広がっていってるのに気づくわね。例えば17歳の時に比べてもそうだし、この間なんて10歳で歌ったものを聴いてみたら、妙に未熟だったわよ(笑)。とにかくその分、ステージでも余裕ができたの。何年か前だったら、高い音を出すにも祈るような気持ちでやってたけど、今はもっと自信を持って、安定した歌い方ができてるんじゃないかしら。
――ところで、あなたは、“アーティストの創造の自由”をテーマにした論文を、自身のホームページで発表していますが、インターネットの発達が音楽シーンを、どのように変えると思いますか?
アラニス: とにかくインターネットは初めて登場した頃から、すべての壁をとっぱらうような役割を担ってきたわ。何しろ、夜書いた曲を翌朝には自分のホームページに載せられるし、人と人との溝を埋めてくれるんですもの。特にステージの上に立つアーティストと、それを見に来る観客との溝は、ツアーだけでは補いきれないの。世界中のファンと瞬時につながるなんて、インターネットがあってこそよ。デジタル化のおかげで、アーティストたちの声が一段と通じやすくなってるんじゃないかしら。最近では、ドン・ヘンリー、コートニー・ラヴ、メアリー・チェイピン・カーペンター、私、ほかにも大勢のアーティストが、ようやく声を大にしてネット上での自由な表現を主張するようになったわ。そんな風にして、やっと音楽を愛する人同士がつながっていけてるのが、私にとってはすごく嬉しいの。クリエイティヴなアイディアをどんどん伝えていけるでしょ。
――先日の同時多発テロ事件の後、あなたはマーヴェリックのホームページで、今作のラスト・ナンバーでもある「ユートピア」を発表しましたが、この曲に込められた平和への想いはどういう風に表現できますか?(参考:maverick.com)
アラニス: 「ユートピア」はテロ事件の半年前に書いたの。事件があってからは、悲しみやショック、いろんな意識の芽生えの真っ只中で、何か貢献できることはないかと真剣に考えてきたわ。それで、これまで私は音楽を通じて貢献してきたんだから、音楽が一番いい手段じゃないかなと思ったわけ。自分の一番好きな手段でもあるしね。「ユートピア」の提供は、人の心を癒すのために私ができる、せめてもの行ないだった。今は困難や苦しみに立ち向かいながらも、目覚めたり、立場を表明させたりする時だと思うの。この時期、人によっては何かハッとするものを感じるだろうし、また断固として我が道を貫く力も必要なのかな。
――さて、アルバムのツアーはいつ頃からスタートする予定ですか?
アラニス: 一応、最低限のプロモーションやテレビ用のツアーを3月末頃まで続ける予定よ。そのあとのことはまだ検討中なんだけど、やっぱりツアーは夏が一番だと思うのよね。今回は新しいバンド仲間がいるし、なんだか新しい章に踏み出した感じがしてるの。とにかく、あと数ヵ月で日程を決めるわ。
――ということは、<FUJI ROCK FESTIVAL 01>とは違うメンバーになるわけですね?
アラニス: ええ。新しいメンバーで新しい章に突入よ。でも、この7年間、一緒にツアーをしたりしながら付き合ってきた愛すべき人たちとも、今後また仕事をしたいわ。ただ今回は、なんとしてでも新しい世界に飛び込みたかったの。違ったエネルギーやバイタリティーを感じながら、いろんなことを試して、最高の気分を味わってるわ。
――日本にも来てもらえますか?
アラニス: 当然! 絶対に絶対に行くわよ! 特にバンド・メンバーは誰も日本に行ったことがないだろうから、きっと喜ぶわ。私も日本が大好きなの。
――では最後に日本のファンへのメッセージをお願いします。
アラニス: 皆さん、アラニス・モリセットです。早くまた会いたいわ。新しいバンド・メンバーたちと一緒に、新曲を引っ提げて行くから、それまで元気で待っててね! | |