2001年5月25日 渋谷AX
1. INTRO-KALINBA 2. ARRESTED DEVELOPMENT 3. TENNESSEE 4. GIVE A MAN A FISH 5. U 6. IF THEY ASK 7. STRUGGLIN' 8. INDEPENDENT WOMAN (INTRO) 9. IF YOU WANT ME TO STAY 10.SOMEWHERE IN NORTH GEORGIA 11.I WANNA GO OUT 2NIGHT 12.HIT THE ROAD JACK 13.MARVIN GAYE 14.MR.WENDAL 15.EASE MY MIND 16.IN DA SOUTH 17.MAMA'S ALWAYS ON STAGE 18.PEOPLE EVERYDAY ENCORE 19.REVOLUTION
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 『THE HEROES OF THE HARVEST』 2001年1月24日発売 TOCP-65652 2,548(Tax in)
1. HEROES OF THE HARVEST 2. IN THA SOUTH 3. RULES 2 THA GAME 4. MUSIC & LIFE 5. SOMEWHERE IN NORTH GEORGIA 6. THE STORY OF US 7. STRUGGLIN' 8. LOST SOLDIERS 9. IF DEY ASK 10. HIT THE ROAD JACK 11. CONDITIONAL LOVE 12. IF U WANT ME TO STAY 13. SALTED MEAT 14. LOVE IS CONTAGIOUS 15. I WANNA GO OUT 2NIGHT 16. THE CHALLENGE 17. ARRESTED DEVELOPMENT 18. RESURRECTION (man's final frontier) 19. ON CONSCIOUS
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| 彼らはプリースト(司祭)である。
彼らはそれを「ライヴ」とは呼ばない。「コンサート」とも呼ばない。アレステッド・ディヴェロップメントのメンバーはそれを「セレブレーション(祭り、式典)」と呼ぶ。セレブレーションは神聖な儀式だ。したがってアレステッドたちは式典を司る司祭だ。
それを証明するかのように、オープニングは、グループの精神的リーダーである長老ババ・オージェが舞台左手から女の子たちを配してゆっくりと登場し、何かが始まるような予感を醸し出した。
セレブレーションの始まりを宣言し、彼は舞台後方にあるロッキン・チェアに座る。バンドがタイトな演奏を繰り広げる中、グループのリーダー、スピーチが登場。楽曲「アレステッド・ディヴェロップメント」が始まった。スピーチがステージ狭しと歌い、ダンサーが激しく踊る中、ババ・オージェは、ゆったり前後に動くロッキン・チェアに身を委ねる。時間の流れが止まるようなババ・オージェの「静」とスピーチやダンサーたちの激しさの「動」とが、非常に対照的だ。
この曲は、最新作『ザ・ヒーローズ・オブ・ザ・ハーヴェスト』に収録されているものだが、彼らのテーマ曲とも言える作品だ。いわく「僕たちのコミュニティーは、いまだにアレステッド・ディヴェロップメント(発展が停止している)状態だ。ババ・オージェは、君よりも年上だから、彼が現れたら敬意を示せ」。グループのテーマであると同時に、ババ・オージェへのちょっとした賛歌でもある。
スピーチは、ターンテーブリストである。
それを彼らはDJと呼ばない。ターンテーブルの職人、すなわちターンテーブリストと呼ぶ。スピーチが、2台のターンテーブルのところに行き、ターンテーブルをいじりだした。ジェームス・ブラウンの「セックス・マシン」のレコードを巧みに操り、観客をあおる。そして、彼らの記念すべきデビュー作からのヒット「テネシー」へ。
スピーチはセレブレーションの間、何度もターンテーブルの所に行き、レコードを回し、スクラッチをした。
観客は、こぶしを宙に掲げ、スピーチたちに応える。歌と演奏だけでなく、彼らは過去のレコードでも、観客にグルーヴを与える。
ドラムス、キーボード、ギター、ベース、そしてターンテーブリスト、バック・コーラスとダンサー、さらにババ・オージェ、スピーチという布陣のアレステッド・ディヴェロップメントは、アメリカ南部の音楽をルーツに、非常にオルガニックなヒップ・ホップ・サウンドを繰り広げる。
そして、彼らはヒストリアン(歴史家)である。
アレステッドは、温故知新のグループだ。ソウル・ミュージックの歴史をしっかりと学び、それを自分たちのものに消化し、彼らなりの方法で、先達にリスペクトを払う。
ターンテーブリストとして、「ゴッド・ファーザー・オブ・ソウル(ジェームス・ブラウンのこと)」のレコードをかけたり、あるいは、もうひとりのファンクの創始者でもあるスライ・ストーンの作品をカヴァーしたりするのもそうした表れだ。
彼らは、'60年代後期から'70年代初期にかけて活躍したファンク・グループ、スライ・アンド・ファミリー・ストーンの作品を2曲カヴァーし、セレブレーションでも聴かせてみせた。「イフ・ユー・ウォント・ミー・トゥ・ステイ」('73年のヒット)とすっかりおなじみになっている「ピープル・エヴリデイ」(スライのヴァージョンのタイトルは、「エヴリデイ・ピープル」='68年のヒット)だ。さらに、「マーヴィン・ゲイ」へのトリビュートを歌い、ソウルの創始者、レイ・チャールズの大ヒット「ヒット・ザ・ロード・ジャック」('61年のヒット。アレステッドの最新作でカヴァー)をも披露する。
アレステッドのセレブレーションには、こうしたブラック・ミュージックのヒストリーの一部が盛り込まれているのだ。
スピーチは言う。「KRSがサウス・ブロンクスを、ドクター・ドレがコンプトンを基盤としたように、僕たちは南部をホームベースにしたんだ」
彼らなりの南部への賛歌でもある「イン・・サウス」で、観客のノリは最高潮に達する。腕を上げ、体を激しく上下にジャンプし、会場が揺れそうになるほどだ。裸足になったババ・オージェも、リズムに身を揺らし、踊る。
約100分にわたる司祭と歴史家とターンテーブリストたちによるセレブレーションは、熱気と興奮のうちに幕を閉じた。 |
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