アレスティッド・デヴェロップメントは変わってしまったのか??
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Arrested Developmentは変わってしまったのか?? 衝撃の解散から7年。AD復活アルバムに込められたメッセージ。 真のリーダーたる所以とは… |
![]() 『THE HEROES OF THE HARVEST』 2001年1月24日発売 TOCP-65652 2,548(Tax in) 1. HEROES OF THE HARVEST 2. IN THA SOUTH 3. RULES 2 THA GAME 4. MUSIC & LIFE 5. SOMEWHERE IN NORTH GEORGIA 6. THE STORY OF US 7. STRUGGLIN' 8. LOST SOLDIERS 9. IF DEY ASK 10. HIT THE ROAD JACK 11. CONDITIONAL LOVE 12. IF U WANT ME TO STAY 13. SALTED MEAT 14. LOVE IS CONTAGIOUS 15. I WANNA GO OUT 2NIGHT 16. THE CHALLENGE 17. ARRESTED DEVELOPMENT 18. RESURRECTION (man's final frontier) 19. ON CONSCIOUS | あの突然の解散から待つこと7年、あの伝説のヒップホップ・グループ、アレスティッド・デヴェロップメントが遂に帰って来た! 解散からの7年の間も、リーダーのスピーチはソロになって、ラッパーとしてではなくヴォーカリストとしてクールに洗練された高度なR&Bを届けるなど大活躍していたからそんなにその“不在期間”というのは意外に感じさせなかったりさせたのは事実なのだが、いや、それでもこの再結成は嬉しい。 やはり、スピーチがソロでどんなに素晴らしい音源をリリースしても、やはりあの'92年のアレスティッド登場の衝撃にはかなわないもの。 大ヒットシングル「テネシー」「ピープル・エヴリデイ」「Mr.ウェンデル」での、混迷した社会で時に戸惑い、時に矛盾に怒りといった、黒人社会の内情をリアルに描写したリリック、そしてアフリカ回帰を思わせる強烈なアフロビートといかにも南部アトランタ出身らしいアーシーでブルージーな黒人音楽伝統のフィーリングをヒップホップに持ち込んだ独自の音楽性。その全てが革新的だった。 そんな彼らが、あのスパイク・リー一世一代の黒人映画の金字塔「マルコムX」の主題歌を担当したのも当然のことだった。スピーチはあの時、完全にオピニオン・リーダーだった。 …にも拘わらず、それから2年後のあっけない解散。それに周囲がどれだけ戸惑ったことか。 それから7年。 アレスティッドの不在期間中、ヒップホップはポーズだけイキがった中身のないギャングスタ・ラッパーたちが完全にはびこっていた。表舞台は完全にネガティヴだったが、一方でグッディ・モブやアウトキャストといった、明らかにアレスティッドが蒔いた種と思しきアトランタ出身の後輩格が、ニューヨークやロスといったヒップホップの本場を凌駕するほどの傑作を生み出すのに成功していた。 そんな中、ヒップホップ界の“世直し屋”として、はたまた“南部ヒップホップ”の元祖としてアレスティッドは帰ってきたのであった。 待ちに待ったこの復活作には、一斉を風靡したデビュー作のような社会を刺激するリリックも、古くさい黒人音楽の伝統の臭いもない。 それに対して、もしかしたら落胆する向きもあるかもしれない。しかし、いや、だからこそ素晴らしいのだ。 過去をノスタルジックにリピートするために彼等は再結集したわけではないし、ましてや今は'92年ではない。今のヒップホップの現状に対して表現せずにはいられない欲求がああるからこそ帰還してきたのだから。 リリックに現状のヒップホップに対しての知的な批判が多いのも、トラックがスピーチのソロの延長上にあるようなソフィスティケイトされた70'sソウルのようなものが多いのも、全て「今」を見据えてのことだから。 時代をあたかも鏡のように写し出す。その姿勢がある限り、アレスティッドはアレスティッドたりうるのである。 彼等らしいこの帰還を心から祝福したい。 (太澤 陽) |