おおらかでお茶目なおバカさんたちが真剣に取り組むパンクロック

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アリーナ級のライヴハウス、世界規模での成功を収めても尚、
根底にある“パンク魂”を見せつけた来日公演

おおらかでお茶目なおバカさんたちが真剣に取り組むパンクロック


The Offspring Japan Tour 2001
幕張メッセ 2001/03/24

1 BAD HABIT
2 ALL I WANT
3 COME OUT & PLAY
 
〔KEEP 'M SEPARATED〕
4 MILLION MILES AWAY
5 ONE FINE DAY
6 GONE AWAY
7 HAVE YOU EVER
8 AMERICANA
9 GOTTA GET AWAY
10 STARING AT THE SUN
11 DAMMIT,I CHANGED AGAIN
12 ORIGINAL PRANKSTER
13 INTERMISSION
14 WHY DON’T YOU GET A JOB?
15 WALLA WALLA
16 SELF ESTEEM




来日記念盤

『WANT YOU BAD』

2001年3月7日発売
EPICインターナショナル ESCA-8280
1,575(Tax in)

1 Want You Bad
2 80 Times
3 Autonomy
4 Pretty Fly(For A White Guy)(live)
5 All I Want (live)

ビデオクリップ集

『Huck It』 (VHS)

2001年3月7日発売
EPICインターナショナル ESVU176
3,255(Tax in)

1 Intro
2 Meet Greg K.
3 LA.P.D.(LIve)
4 Skateboard Huck It
5 Staring At The Sun(LIve)
6 Meet Ron Welty
7 Meet Dexter
8 All I Want(LIve)
9 BMX Huck It
10 Gone Away(LIve)
11 Meet Noodles
アメリカ西海岸のパンクのメッカ、オレンジカウンティが誇るスーパースター・パンクバンド、オフスプリング

昨秋リリースの最新アルバムも予想通りの大ヒットを記録し、パンクロック界のみならず、全てのラウド/ヘヴィ・ロックの頂点に立った観のある彼らが堂々の再来日公演を果たした。

日本中のパンク・キッズたちにとって最高峰の憧れとなった彼らに現在つけいる隙はないように伺えるが、しかし、僕の正直な興味は「絶好調のオフスプリング」ではなく「境界線ギリギリのラインにいるオフスプリング」であった。

'98年のアルバム『アメリカーナ』において、彼らはこれまで以上のエンターテインメント性の高いユーモア・センスを爆発させることでこれまで以上の世界規模での成功を手中に収めることに成功した。そしてライヴステージにおいても彼らはこれまでとは比較にならない、まるでエアロスミスでもあるかのようなド派手なアリーナ・ロック仕立ての演出を展開していたのだが、ここが同時に“争点”ともなった。

ちょうど同じ頃、リンプ・ビズキットがかつてのLAメタルを彷佛とさせるエンターテインメント性で塗り固められたマッチョイズム全開の巨大ロックショウを展開し、レイジNine Inch Nailsメタリカなどから「オルタナの時代を終わらせた」と散々なバッシングを受けたわけだが、そうした余波の中、一貫して“パンク”を主張して来たオフスプリングにも疑惑の視線が飛び交ってきたのだ。

「オフスプリングもパンクの魂を売ってしまいやがった」

こういう逆風めいた囁きも決して小さなものではなかった。新しいファンは次々と増幅するものの、昔からのファンには疑念を抱かれる。そんな状況の中、オフスプリングがどういうライヴを展開するのか。僕の興味はズバリそこだった。
 
会場について見ると、ステージにデンと建っていたのは木造のボロ小屋だった。これに僕は思わず「おやっ!」と反応してしまった。これ、ズバリ、欧米の最小規模のライブハウスの作りを模したものだからだ。欧米の場合、ライヴハウスの作りは日本ほど丁寧でなく木造の古いバーを無理矢理ステージにした感じのものが多いのだが、これはまさにそんな感じ。これはおそらく前回のツアーで「パンクの魂を売ってしまったのか?」と散々に言われたことに対しての彼らなりの解答なのだろう。これはまるで

「ライヴはアリーナでもやるけど、俺たちの心ははじめてライヴをやった頃と全く同じだぜ」と言わんばかりである。

「なるほどねえ」と思っているうちに大仰なイントロに乗ってメンバーが登場し、ショウは「バッド・ハビット」「オール・アイ・ウォント」といったお馴染みの定番曲でスタートしていった。

いわずもがな、会場は白いTシャツにタオルを巻いたキッズたちが津波のようにモッシュ、ダイヴの渦を起こす。メンバー4人の演奏のテンションは多少粗っぽく上手いプレイヤーというわけではないが小気味良いエッジの立ったパンキッシュなグルーヴを保っており、そして何よりデクスターの芯の強い強靱な高音ヴォーカルはやはり圧倒的に強い!  世界のパンクシーンにおいてもやはりこの声の存在感はずば抜けている。

パンクバンドは有象無象に増えど決定的なシンガー不足が否めない日本のバンド陣は是非参考にした方が良い。そして演奏は4人のメンバーの他にサポートが二人。合いの手を入れる男性バック・ヴォーカル役とラテン・パーカッション奏者。彼らがときにノヴェルティ風のユーモアさを出したりラテン風味を出していたりしたが、これが実にLAのバンドらしいと、つくづく僕は感心してしまった。

最大の代表曲「プリティ・フライ」で聴かれるような、あのトボケた掛け合いコーラスは'50年代のLAの伝説的なドゥ・ワップ・グループ、コースターズを彷佛とさせるものだし、ラテンロック風味もメキシコ系移民のコミュニティが多いLAという土地柄を考えると(ロス・ロボスがその典型例)充分に納得が行く話だし。やっぱりこの連中、徹頭徹尾LAの気質にこだわった連中なのだ。彼らがどうしてことさらスケボーやサーフィンなどの西海岸スポーツをやたらと強調するのかも、底抜けにおバカなユーモアのセンスをウリにするのかも、そう考えると妙に納得できて来た。

彼らは決してセルアウトしたわけでなく、カリフォルニア人の感覚に忠実にパンクをしてみたいだけなのだ。そのセンスがときに行き過ぎて、(停電のフリをしてアコースティック・セットをやったり、前出のミョーにわかりやすすぎるセットを組んでみたり)それがちょっとハナにつくときもあるが、結局はそういうことに過ぎないのかもしれない。

おおらかでお茶目なおバカさんたちが真剣に取り組んでいるパンクロック。ここで展開されているのはそういうものだったのだ。
 
キッズたちはとにかく体を動かすのが楽しいのか、終始汗を飛び散らかしての運動ジムのような光景を若さにまかせて繰り広げていたが、じ~っと定点観測してみると、意外とこのバンド、奥の深いバンドだったりするのである。

「I LOVE LA! VIVA! LA!」。

見ているうちになんか憎めなくなってきた。

文●太澤陽aka沢田太陽

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