| 「俺はMCじゃない。俺はリアリストだ。俺は自分のこころやアタマにあることを語るから、すべてがリアルなのさ」と言うのは、チャートのトップに立った20歳のラッパー、Shyneである。ヒップホップ界でスポットライトを浴びてまだ間もない彼だが、すでにその存在は賛否両論を巻き起こしている。というのも現在Shyneは殺人未遂、暴行、武器所持といった11種類もの刑事犯で告訴されているからだ。 これらの容疑は'99年12月にニューヨークのナイトクラブで起きた銃撃事件に関するもので、3人が銃に撃たれて負傷している。この事件の裁判は'01年に行なわれるが、Shyneは懲役25年に処せられる可能性があるという。したがって現時点で彼は完全なスーパースターになるか、忘れられたもう1人のラッパーで終わってしまうかの瀬戸際に立っているのだ。犯罪的な行為が大きく取り上げられて脚光を浴びたものの、キャリアが短命に終わってしまったヒップホップのアーティストは数多く、その行列は果てしなく連なり続けている。いまのところShyneは自分の将来を運命にまかせて、キャリアに専念しているという。 「俺の20年間の人生で起こった様々な出来事のおかげで、今起きていることや将来起きるすべてのことを認識できるようになった」とShyneは言明する。「人生で起こるあらゆることには理由があって、俺はそれを受け入れて疑うことはしないのさ。何事も後悔はしないし、“ちくしょう、何でこんなことが起きたんだ”なんて言うことは絶対ないね」 大衆やメディアがShyneの犯罪行為に考えを集中するとき以外は、この新星ラッパーのすごみのある声が故Notorious B.I.G.に似ていることに思いをはせているのが通常である。2人の類似性はShyneがSean "Puffy" CombsのBad Boy Entertainmentと契約している事実によって、より顕著なものとなっている。Shyneはこの“声の話題”に言及することに明かにうんざりしている様子だったが、B.I.G.とは鼻音の響きが多少似ていることを認めたうえで、それはたいした問題ではないとしている。 「Biggieとの比較は俺のキャリアの一部みたいなものさ」と彼は肩をすくめた。「俺は新人だし、大衆は俺のことを知って間もないわけだから、聞いたことのある一部の曲で判断されるんだろう。たしかに似ている部分はあるかもしれないが、誰かが言っていたように“ShyneはShyneなんだからそれで充分Shyneなのさ。声のこととかいろいろあるだろうが、こいつは今の音楽業界にいる似たような連中の誰ともまったく違った存在なんだ”ってことだ。この類似性に言及するのには何の問題も感じてないよ。発言する必要があることだからね。でも、俺はこの件に関する人々のコメントのやり方は充分評価している。とても正直に発言してくれているよ。Biggieは昔も今も最高のラッパーだが、俺は彼になろうとはしていないし、誰も彼になろうとはしないだろう。俺がこんなふうに発言することには何の問題もない。そうする必要があるし、真意を記録に残しておきたいからね」 「でも……、」とShyneは付け加えた。「大衆がそれを読んだ後の新しいインタヴューでは、すでに発言したことについて話題にしないという義務があると思うんだ。俺は発言して、読者に自分の考えを伝えた。彼は偉大なラッパーだと思っていることを知らせたんだ。それでおしまいさ。それ以上のことはないよ。だから次の質問に移ろうじゃないか」 ShyneとB.I.G.の声の類似が偶然だったとしても、この件はいまだにホットな話題となっている。それはメディアが注目したためだけではなく、Lil' Kimが最新アルバムの『Notorious K.I.M.』のタイトルトラックでShyneに関して次のようなリリックを折り込んだからでもある。 “Everybody wanna shine off B.I.G./Get it/Shyne, trying to sound like him when they rhyme/You ain't a murderer/N-gga, please come off that/I'm next up to bat, motherf--kas get their jaws tapped.” だがShyneに伝統的なヒップホップ風の反応を期待してはいけない。彼は奇妙にも、QueenBeeによる言葉の攻撃に対抗することを妻への虐待になぞらえているのだ。「Lil' Kimに反撃することは俺にとっちゃ妻を殴るようなものさ」と彼は理論づける。「それは許されることかい? だったらどうして女性の発言に対して何か反応するように求めるんだ? 何の意味もないよ。それでどうなるっていうんだ? これが野郎のやったことなら話は別だがな。それでもあまり意味はないだろうね。クロの連中なら俺のことも俺のやり方もわかっている。だが、女を相手にしてもしょうがないだろう? あの曲は面白かったよ。結末は決まっているようなもんだけどね。それに今は裁判を控えているんで、もめごとはたくさんだ。じっとおとなしくしてなくちゃいけないのさ」 Shyneはあらゆる状況で口を閉ざしているようなタイプではないが、ヒップホップでのキャリアが彼に与えた表現の環境に関しては、正当に評価しているようだ。「大衆とコミュニケートするパワーを与えてくれた神に感謝するだけだよ」と彼は強調する。 「俺が本気でやっているのは、自分の感情や自分が育った環境の現実を伝えることなんだ。つまり俺がやりたいのは、ものごとへの関心を向けさせることなのさ。国会議事堂の黒人やGeorge BushやAl Goreの支持者の黒人に注意を喚起することだ。連中を法廷に連れていって証言台に立たせ、彼らが関与している犯罪について証言させたいね。そこらにいる黒人の子供らに、悪いのは我々ではなく連中だと示してやりたいのさ。闘いの本質と真の敵が誰なのかを黒人たちに知ってほしいんだよ。我々を殺しているのは我々ではなく連中だということを彼らが知れば、状況はずっと良くなるだろう。俺個人の野心とは関係なく、俺が本当にやりたいのはそのことだけだ。何かあるとしたら、悪いのは連中で、それを許していちゃいけないということを子供たちに知ってほしいんだ。俺達は連中よりもスマートにやれるはずだ」 「俺はそんなタイプの黒人だ。言っているように俺が本当にやりたいのはエンタテインメントなんかじゃなくて、ただ単にShyneが喋っているということなのさ」さらに彼は続ける。「大衆がそれを受け取って、評価してくれていることを神に感謝している。だって俺の音楽は意図的に作られたものではなく、スピリチュアルなものだからだ。魂が揺さぶられたときに、俺は曲を書くのさ。アルバムのデザインがどうとか、写真の写りがどうとかいったくだらないことには全然関心ないね。俺の生活がどのようなものか、俺の言葉を通して黒人たちに知ってほしいだけなんだ」 |