D'Angeloはご機嫌
D'Angeloはご機嫌 |
D'Angeloは照れている。最新ビデオ「Untitled」で、裸でポーズをとっているのが話題になり、Paper誌の巻頭特集では、このR&Bスターがまるで憧れの中学生の女の子を目の前にした12歳の男の子のように顔を赤らめている姿が収められている。 「ヌードの話をもっとしましょうか?」 ほんの2時間前、Russell Simmonsのテレビ番組『One World』の連中は、裸についての質問をしまくっていたのだ。 「いや、やめてくれ」とD'Angeloは恥ずかしがった。 「写真の話は終わり。次の質問は?」 でも、D'Angelo! みんなは知りたいんだ。 あなたは5年間、音沙汰がなかった。そして戻ってきたら、雑誌でセミヌードになり、『Essence』でセックスを語り、ビデオではヌードになった。 「あなたの才能よりルックスに注目が集まることを心配しているのですか?」 D'Angeloは言う。 「俺が音楽的にやろうとしていることに影響するとは思わない。俺にとって音楽が一番大切だということは、みんなわかってくれている。あれは単なるビジネスだよ。人は話題を作ろうとする。でも、肝心なのは音楽さ」 最新アルバム『Voodoo』発売前のD'Angeloの話は、彼の身体の話ばかりだったが、ニューアルバムは自らを語っている。 お決まりのR&Bの手法は徹底的に避けられた。そして曲作りはセラピーだと言うD'Angeloは、再び時代に逆行している。 Artistの影響はアルバムを通して聞かれ、特に「Untitled」で顕著だが、名高いギタリストJimi Hendrixからの影響も強く表れている。「Left And Right」のビデオでギターを握るD'Angeloのヒッピールックとワイルドなアフロは、Jimiそのものだ。 しかし、ヴァージニア生まれのシンガーソングライター/R&Bの炎の守護者D'Angeloは、意図的な模倣を重要視しているわけではない(「髪をとかしたかったよ」と彼は答えている)。 …とはいえ、彼は『Voodoo』をニューヨークにある有名なJimiのElectric Lady Landスタジオでレコーディングした。 「それには重要な意味があったんだ。レコーディングの前、俺たちが聴いてた音楽は完全にそっちの方向に行ってたからね」とD'Angeloは言う。 彼はスタジオでJimiの幽霊を見たとも断言。 「だから、あのスタジオでやることになったのは、運命みたいなものさ。そういうことを偶然だとは考えない。音楽的にも、精神的にも期するものがあったんだ」 D'Angeloを独自の位置に保っているのは彼の精神性なのだろう。 牧師の息子である彼は、新しいミレニアムを教会で祝った。D'Angeloは『Voodoo』がリスナーを新しいモードに切り替えるだろうと期待している。 「俺たちはみんな魔法にかけられている気がするんだ」とD'Angeloはバンドメンバーについて語る。 「レコード会社のお偉方やラジオの編成、それらは一般大衆があるタイプの音楽を買うように洗脳しようとしている。だから俺とAmir、Raphael Saadiq、Roy Hargrove、Charlie Hunterは、俺たち独自のブードゥー教の呪術師になって、スタジオで俺たちの魔法をかけることにしたのさ」 最近のスタジオセッションを見たことがあればわかるだろう。ちょっとでも問題があるとミュージシャンは演奏を中断するのが普通だ。完璧になるまで、何度も何度も最初から録音する。しかしD'Angeloは生のままの素材を好む。 彼のバンドは『Voodoo』のために70時間以上の生演奏をレコーディングした。 「このアルバムは前作に比べて活気がある」とD'Angeloは胸を張る。 「収録曲のほとんどは、スタジオに行って、プレイして、テープを回しておいて、ジャムセッションした中からベストなものを選んだ。ほとんどは1stテイクか、2ndテイクか、ミステイクか、そんなもんさ。(1stアルバムの)『Brown Sugar』は、事前にもっとプロデュースされ、プランニングもされてたけどね」 『Brown Sugar』の作り方はどうであれ、PrinceやMarvin Gaye、そしてSmokey Robinson(Smokeyの「Cruisin」の予想外にすごいリメイクは要チェック)の影響を受けたこのノスタルジックで画期的なCDは、'95年のR&Bシーンを揺さぶった。 若くて才能あふれるD'Angeloは、10代の頃、いとこと共に曲を作ってプロデュースしていた。EMIと出版契約を結んだのは19歳の時。彼は「U Will Know」を書いてプロデュースし、Black Men Unitedが『Jason's Lyric』のサウンドトラックとしてレコーディングした。 このグループはBrian McKnightやR.Kelly、Boyz II Menのメンバーなど、傑出した男性R&Bシンガーが集結したものだった。 自分自身のオリジナリティに根差した音楽にこだわり続けるD'Angeloは、Lauryn HillやMaxwell、Erykah Baduらを含む“ネオソウル”と呼ばれる有望なジャンルの最先端にいる。 「好きじゃない曲を口ずさんでることってある?」とD'Angeloは訊ねる。 「その曲は嫌いだけど、何度も聴いているからつい歌ってしまう。人は受け入れられるものなら受け入れるのさ。それしか手に入らないから。でも、他と違っているけど素晴らしくて、共感できる何かがあったら、きっとすごく気に入るだろう」 どんなアーティストにも心強い言葉だ。 by Billy Johnson Jr |