ギャング全員との対面ならず

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ギャング全員との対面ならず

第4世代のウィガーラップにパンク色を加味し、Motorbooty誌50%+Mad誌50%+エッチ系100%のユーモアを掛け合わせたBloodhound Gangは、一見ヒットメーカーと呼ばれる人たちとはかけ離れた存在に見えるかもしれない。

だが彼らは、文字どおり世界中で何百万枚ものCDを売り上げたグループであり、さらに、「Discovery Channelでやってるみたいにやろうぜ」という騒々しくキャッチーなラップをフィーチャーした楽曲「The Bad Touch」では、場外ホームラン(もしくは豪速球か?)を放っているのである。そう、これで皆さんにも、私が誰のことを言っているのかお分かりだろう。近頃の自由な世界において、この曲が全く耳に入らないということはあり得ないのだから。

お調子者、変人、大ボケ野郎といったキャラクターで知られるBloodhound Gangだが、その素顔を探ってみると非常に面白いことになるかもしれない。

まず第一に、彼らは大卒である。確かに態度は粗悪だし、下品だし、政治的な考え方も世間の常識とはかなりずれている(それとも全く的外れと言うベきか?)が、一方で高い教養を身に付けていることもまた事実だ。

ヴォーカル兼プロデュース担当のJimmy Popが書いたグループのバイオグラフィーを一度読んでみてほしい。…とても陽気で、風刺が効いていて、謙遜に満ちており、同時に有益な情報が満載されている(バンドが管理しているHPは要チェック:www.bloodhoundgang.com)。

さらにGangは、矛盾だらけとさえ思えるほど様々なジャンルの音楽をごちゃ混ぜにすることで…多くのバンドはこうなることを避けているのだが…彼の冗談を理解できない、ユーモアの分からないファンたちからの反撃を免れているのだ。

例えば「Mope」(Gangの最新作『Hooray For Boobies』からの1曲)は、MetallicaやFrankie Goes To Hollywood、Pacman(!?)などの音楽を引用することで、逆にどこにもないような作品に仕上がっている。下世話なユーモアばかりが取り沙汰される彼らだが、こうした側面を知ると、リーダーのJimmy Popとのインタヴューは極めて興味深いコメントを生み出してくれそうではないか。

何と言っても彼は、作詞家兼ヴォーカリストであるだけでなく、デタラメにかき集められた音楽をコンピュータで繋ぎ合わせている張本人なのだから。彼の手による編集、サンプリング、ビート、プロダクションのクオリティは、このコミカルな男が、実は仕事に関しては至って真面目な人間であることを如実に物語っており、ある意味Frank Zappaを思い出させる。

さらにPopが、今はなきアンチポップカルチャーの名物雑誌PopSmearで、ライターを務めていたという事実を知ったとき、私は彼とのインタヴューは素晴らしいものになるだろうと確信したのである…

そこで私は、他のアーティストのプロデュースを手掛ける可能性や、好きな'80年代メタルバンド、夕食に何を食べたかなど、あらゆる部分を網羅する質問票を書き上げた。

ところがその後になって、Bloodhound Gangは今やあまりにもビッグになりすぎて、1つのメディアから2つ以上の取材を受ける時間がないということが判明した。何てこった。LAUNCHでは既にDarren Davisがニューヨークで彼らのインタヴューを行なっているため、私とのインタヴューを別に設けることはできないというのだ。これも前に述べた彼らのユーモアの1つなのか?

というわけで、私に課せられた新たな仕事は、Darrenのインタヴューテープを受け取り、それを愛すべきLAUNCHの読者である皆さんのために文字に起こすというものだった。以下に掲載したのがDarrenとBHGのおしゃべりの抜粋である。Darrenは私が考えていたのとは全く違う質問をしているし、JimmyとギタリストのLupus Thunderも私が思っていたよりずっと礼儀正しく落ち着いた印象だ。


DARREN/LAUNCH:
あなた方が大卒だというのは、ちょっとクールだと思いますよ。大多数の人は、どこの馬の骨だか分からない奴らだとか、せいぜい小学校しか卒業していないだろうと思っているでしょうからね。

JIMMY:
俺は子供たちからCDにサインしてくれと頼まれると、いつも「学校行けよ、バンドやるからって学校辞めるんじゃないぞ、分かったか」って言うんだ。言いたかないけどね。残念だけどこのご時世、自分が何をやるかにかかわらず、大学出てなきゃどうにもなんないのさ。

DARREN/LAUNCH:
バイブルベルト(アメリカのキリスト教篤信地帯)で何か問題が起こったことはありますか?

JIMMY:
ああ、オクラホマだけね。他の地域は世界的な流れに充分ついて来てるんだけど、オクラホマだけはまるで違う惑星みたいだったよ。朝バスから降りて歩き回ってたら、ケータリングの側とかステージの脇とか、およそバンドだったら通りかかると思われる場所全部に「もし以下の言葉のどれか1つでも口にしたら、州警察局に$500の罰金をお支払いいただきます」って書いた貼り紙がされてるんだもんな。“F--k, goddamn, sh-t”っていう3つの単語を使っちゃいけないんだってさ。オクラホマじゃそういう規則があるんだよ。拡声器が設置されてて、声が届く範囲に女や子供がいるかもしれないって言うのさ。それで留置場にブチ込まれることもあるらしいぜ。「Fire Water Burn」(Bloodhound Gangの曲)には“motherf--ker”って歌詞があるから、俺たちは毎回その箇所に行く度に、この言葉を書いた超巨大看板を掲げてたんだけど、これがオーディエンスに大ウケでさ。あれは良かったよ、あのライヴはラジオ中継されてたしね。Vinnieなんか、その日、ホントにブタ箱に入れられちまったんだ。ま、2時間で釈放されたけどね。

DARREN/LAUNCH:
最近また世の中がリラックスモードになってきてますよね。確かあなた達がデビューした当時、アーティストたちは皆ものすごくシリアスだったじゃないですか。Bloodhound Gangはそういう肩の力の抜けた雰囲気を最初に取り入れたグループの1つなんじゃないかと思うんですよ。で、あなた達が扉を少し開けて、そこからKid Rockみたいなアーティストが出て来て、人々がまた遊び気分を楽しめるようになったと。

JIMMY:
ああ、というか、世界がKid Rockみたいなのを必要としてるのさ。Spin誌がWhite Rap Timelineって記事を特集した時、彼にとっても俺たちにとっても凄くいいことだと思った…Kid RocksとBloodhound Gangの両方を取り上げてくれたんだ。あれはクールだったよ。それに、自分たちのやってることが間違いじゃないって確信できたしね。俺たちがやってるような奇妙キテレツなことや、Marilyn Mansonみたいに中心から少し外れたことっていうのは、結果がどう出るか分からない。仕事の基準となるものも、決まったやり方もないわけだから。ただ人々がそれを気に入ってくれればいいなと願うだけさ。

DARREN/LAUNCH:
当初あなた方を避けていたバンドが、今になって「よお、お前らの音楽好きなんだよ」って近寄ってくるなんてことあります?

JIMMY:
以前俺たちのことを嫌ってた奴が、今になって好きだとか言い出したってのは聞いたことないけど、突然俺たちの所にやってきた奴ならいるよ。俺にとってはとにかく衝撃的だったね。知ってるかどうか分からないけど、Queens Of The Stone Ageって奴ら。

LUPUS:
俺なんか、砂漠の真ん中にある奴らのスタジオに招待されたほどだぜ。確かあいつら、“Desert Sessions”とかいう作品を出してたけど。「そうだ、週末にでも遊びに来てよ」ってこんな調子でさ。俺なんか駄目ギタリストだけど、あいつらはその道の天才じゃん。もう「ホントかよ?」って感じ。

JIMMY:
俺たちと同期で、同じように成長してきたバンドといえばSugar RayLimp Bizkitかな。'95年の9月にフロリダのジャクソンヴィルで、全然客がいない中、Bizkitと一緒にライヴをやったことがあるよ。来てたのはたった3人で、そのうちの1人はFredのガールフレンドだった。それはそれは恐ろしい光景だったね。そういえば、つい最近、'N Syncも俺たちのファンだってことが分かったんだ…この間ショウに来てくれて、その後一緒に遊んだよ。俺たちのショウを観たいって言ってくれたんで、彼ら用にバルコニー席を用意したんだ。俺たちの演奏中、ツアーマネージャーは彼らにこう言った。「さて、彼らが何をするかというと、まず、“'N Sync”と書いたトランクをステージに押し出します。その後、全員同じ衣装を着てちょっとしたダンスステップを踏み、「Tearin' Up My Heart」を歌うのです。あなた方にはそのトランクをステージ脇まで引っ張って行っていただきたいのですが、いかがですか?」。彼らは「もちろん」って言ってくれたよ。で、結局そのまま明け方の3~4時まで彼らと遊んだのさ。1曲一緒にやろうかって勢いでね。めちゃめちゃクールでいい奴らだったよ。今まで色んなアーティストに出会ったけど、正直言って、チャートに登場するような超ビッグなバンドで、あんなに…とにかく、今まで会った中でダントツにいい人たちだったね。すげえクールだと思うよ。だって、彼らは自分のやってることに誇りを持っていて、大金持ちで、女とは絶対ヤリたい放題だし、人生満喫しまくってるわけだろ。

DARREN/LAUNCH:
チャート上で成功を収めているにもかかわらず、あなた方が積極的にツアー活動を行なっているというのは素晴らしいことですよね。

JIMMY:
そうだなあ、結局のところ、バンドを作るのも壊すのも大衆だと俺は思うね。何だかんだ言って俺たち5人は、毎晩のようにステージで皆と出会ったり、盛り上がったりしてるわけだろ。それって結構クールなことでさ。何でかっていうと、俺が出会う人たちは大抵みんな俺と同じようなことを考えてると思うからだよ。例えば、ショウに来る人たちだったら多分、俺との共通点がたくさんあるよな。だから、それがまずツアーの楽しみの1つ。他にもいろいろあるんだけど、悪いことは全然ないね。どこへ行っても人間は同じなんだよ…みんな酒飲んでバカやりたいのさ。ロシア人だろうがオーストラリア人だろうがアメリカ人だろうがカナダ人だろうがね。これって大事なことで、俺たちの仕事の醍醐味の1つだと思うよ。ツアーやってれば、世界中をタダで見ることができるんだからさ。

DARREN/LAUNCH:
(『Hooray For Boobies』には)検閲のために牛の写真だけを掲載したカヴァーがあって、『Hooray』と呼ばれているそうですね。

LUPUS:
ああ、それについては時々ファンから怒りのe-mailが来るよ。「おまえら、あのCDは一体どうしちゃったんだよ。悪口がどこにもないじゃん! 全部カットされちまってるよ」とか。まあ、おまえがWal-MartでCD買うなんてバカなことやってんだからしょうがないって言うけどね。でも、その後必ず事情を説明して、どうすれば本物が手に入るか教えてやってるよ。

JIMMY:
面白いよな。あんなデカいレコード会社、しかもSeagramの傘下に入っているUniversal Music Groupともあろう企業が、「君たちのCDをあの店に置きたいのか、置きたくないのか?」なんて選択を迫ってくるんだからさ。俺たちは前からああいう店に出そうなんて気は全然なかった。実際前の2枚に関しては、(編集した)CDをWal-Martに並べるなんてことしなかったんだ。けど今回は「ああ、やろうよ。どうなるか見てみようじゃん」って言ったのさ。面白いだろ。

DARREN/LAUNCH:
ところで、ツアー中、警察とトラブルになったことはありますか?

LUPUS:
ベーシスト(Evil Jared Hasselhoff)が火を吹いて、ニューヨーク消防局とトラブったことはあるよ。だけどスイスでは…

JIMMY:
何かあったかって言うと、11月にチューリッヒでショウをやったときに、ベーシストと俺がお互いの口の中にゲロを吐きあったのさ。ステージの上で、受けたり返したりね。その時の話が広まっちまって、2月にまたチューリッヒでやるはずだったんだけど、向こうが難色を示してきたんだ。ショウを中止したいって言い出した。スイスの人は頭が堅いよ。

DARREN/LAUNCH:
Discovery Channelは本当に見てるんですか?

JIMMY:
ああ、ホントだよ。『コガネムシの一生』みたいなのをね。コガネムシが色んな動きをしててさ。「へえっ!」て思ったよ。

by SL Duff

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