力強くて優しくて、エキサイティングなんだけど安心できる空間
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プラチナ・チケットが舞い込んできたのは、当日の8月22日のランチ・タイムだった。 “上司の娘が高熱を出してしまい行けない”という急遽のキャンセルで、たまたま近くでフラフラしていた部下(私)に白羽の矢が立ったというものだった(娘さんには申し訳ないが、ラッキー!ということで)。 7/1から始まった宇多田ヒカルの全国ツアー“BOHEMIAN SUMMER”は、全国9都市18公演。全公演一瞬にしてソールド・アウトとなった。それを受けて千葉マリンスタジアムでの3日間が追加。応募抽選性となったチケット争奪戦には、定数99,000枚(千葉マリンスタジアム収容人数33,000人×3日間分)のところに95万人が応募。約1/10の確立で当選したラッキーな面々(+私のようなオコボレを預かった人々)が、宇多田ヒカルのライヴを観られるというわけだ。 湿気と熱を運ぶ東京湾の潮風に包まれたマリンスタジアムは人、人、人でギッシリ。席について落ち着こうにも、汗が引かない暑さの中、18:45に照明が落ち、ライヴが始まった。 まずモニターにはパソコン画面が写し出され、ヒッキーからのEメールが打ち込まれる。ライヴへの歓迎メッセージだ。送信ボタンが押されると、ダンサー3人が登場。期待感を煽る、激しいダンスを見せてくれた後、ついにヒッキー登場。 黒いレザーのタンクトップに黒のパンツ姿だ。オープニング曲は「Addicted To You」だったが、観客はヒッキーが目の前にいる感動と、本当に本人だろうかという驚きが入り混じったような、異様な興奮に包まれていた。 4曲歌った後、ヒッキーはようやく観客に話しかけた。 「Yeah! 千葉マリーン! ここでは普段、野球選手が体脂肪とスポーツ魂を燃やしているけど、今は体脂肪と音楽魂を燃やそう!!」 これを聞いた観客はようやく生ヒッキーを感じ取り、楽しむ余裕が出てきたように呼応していた。 そして、フランク・シナトラやサラ・ヴォーンなどが歌ったジャズ・スタンダード「FLY ME TO THE MOON」や最新シングル「For You」などを披露したあとは、ダンスやDJサウンド、そしてツイン・ドラム対決のコーナーへ。 このドラム対決が、タイトで熱くて、緊迫感ある空間を作り出していたのだけど、Tony Royster Jr.というドラマーはなんと15歳というから驚き! ヒッキーのデビューを思い起こされる“15歳”、まったく末恐ろしいとしかいいようがない。 この時間に、ヒッキーはピンクのタンクトップに、タイトなジーンズのサブリナ・パンツに衣装替え。「Automatic」、A-HAのカヴァー「Take on me」などで、一層マリンスタジアムを盛り上げた後は、ヒッキーが日本で一番カッコいい男性ミュージシャンと誉めてやまない尾崎豊の「I LOVE YOU」をじっくりと、そして山口百恵の「プレイバック Part2」を妖艶に歌ったのだ。 オリジナル曲とは趣が異なる2曲だが、楽曲としての質の高さ、そして宇多田ヒカルというシンガーの良質さと雄弁に語ったカヴァーといえるだろう。 あとは「Movin' on without you」「First Love」、毎公演恒例となっている“物真似コーナー”では、椎名林檎の「罪と罰」の冒頭部分を披露(見事、巻き舌を使いこなしていた!)、そして「Wait & See」「リスク」と大ヒット曲のオンパレードにて本編は終了した。 派手で奇抜な演出はなかったのに、豊かなライヴだった。 ヒッキーをはじめ、バックミュージシャンたちのプロ意識の強さ、それに加えてアットホームな雰囲気。それが力強くて優しくて、観客にとってエキサイティングなんだけど、安心できる空間を醸し出していた。 そんな包容力を17歳にして持ち合わせているヒッキーは、きっとプライベートでも精神的に充足した豊かな生活を送っているのだろうな、と感じさせるライヴだった。 アンコールはFreddie Mercuryのカヴァー「LIVIN ON MY OWN」を堂々と歌い上げたあとは、アップテンポのアレンジを施した「First Love」で終了。 数発の花火が打ち上げられ、終わりを告げたライヴだったが、マリンスタジアムの熱は、夜がふけてもなかなか冷めなかった。 |
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