【最速レポート!】宇多田ヒカル BOHEMIAN SUMMER 2000(2000.8.22)in 千葉マリンスタジアム
“たった一曲の音楽がその人の人生を変えていく”…そんなよくある話を今さら繰り返すつもりもないが、今夜の体験が何かを変えていくことになるであろう人は少なくないのかもしれない。
エンターテイメントで固められたステージやド派手な巨額コンサートに免疫を持ってしまったリスナーにとって、17歳の等身大が作り出す空間のやわらかさや、うぶな恥じらいと強い自負とが微妙に連鎖する空気感は、そんじょそこらで味わえるものではないからだ。
今さらながら宇多田ヒカルはワン・アンド・オンリーである。歌唱も完璧。
オーディエンス自身もハイテンションで臨む類のイベントでもないし、自らの身体を張ったロック・コンサートでもないが、結局は老若男女全てが自然体のまま無理なく宇多田本人と歩調を合わせてしまう。
これはものすごいパワー、だ。
ナチュラルなステージングに数万人のオーディエンスがなびかれてしまう、そのエナジーの源はいったい何なのか…。曲のよさ?…そんなことはわかっている、歌の巧さ?…前から知っている、可愛らしさ?…今に始まったことではない…気持ちよい彼女の声に包まれながら、僕はそんなことを考えていた。
歌っているときの彼女の表情は悲しい。17歳に押し寄せてきた多くの軋轢や不安定な気持ちにさいなまれる多感期にあって、精神年齢と肉体年齢と溢れんばかりの才能が一触即発のバランスで成り立っている女性であるとするならば、その表情こそが、オーディエンスをひきつけてしまうことは想像に難くない。本人の意としようがしまいが。
宇多田ヒカル…彼女は、ほとばしった生まれ出ずるものを強烈に外界へ放射するのではなく、そのエネルギーを内へ内へと“自己”へ向けている。ベクトルは自己の晶へ集中し、まさしく臨界のごとく内圧が際立っていく。
その核反応の輝きと発する熱射に、我々は打たれるのだ。彼女から漏れ出るシャワーに降り注がれる気持ちよさに、オーディエンスはヤられてしまっているというのが僕の結論。その形が、ワン・アンド・オンリー。17歳にあって、天才を意識せざるを得ない一瞬でもある。余りあるエネルギーを外へ吐き出さないアーティストが弾けたときの輝きは、閃光にも似て消えない証印を刻み込む。
胸をわしづかみにされるような悲痛と抑圧、そんな苦行を、心地よくさわやかに感染させる宇多田ヒカル。
次のツアーも、きっと僕は観に行くだろう。音楽が好きなのであればこそ、奇才の歩調に同期したいと思うのが自然なことだから。
文◎烏丸哲也(BARKS編集長)
エンターテイメントで固められたステージやド派手な巨額コンサートに免疫を持ってしまったリスナーにとって、17歳の等身大が作り出す空間のやわらかさや、うぶな恥じらいと強い自負とが微妙に連鎖する空気感は、そんじょそこらで味わえるものではないからだ。
今さらながら宇多田ヒカルはワン・アンド・オンリーである。歌唱も完璧。
オーディエンス自身もハイテンションで臨む類のイベントでもないし、自らの身体を張ったロック・コンサートでもないが、結局は老若男女全てが自然体のまま無理なく宇多田本人と歩調を合わせてしまう。
これはものすごいパワー、だ。
ナチュラルなステージングに数万人のオーディエンスがなびかれてしまう、そのエナジーの源はいったい何なのか…。曲のよさ?…そんなことはわかっている、歌の巧さ?…前から知っている、可愛らしさ?…今に始まったことではない…気持ちよい彼女の声に包まれながら、僕はそんなことを考えていた。
歌っているときの彼女の表情は悲しい。17歳に押し寄せてきた多くの軋轢や不安定な気持ちにさいなまれる多感期にあって、精神年齢と肉体年齢と溢れんばかりの才能が一触即発のバランスで成り立っている女性であるとするならば、その表情こそが、オーディエンスをひきつけてしまうことは想像に難くない。本人の意としようがしまいが。
宇多田ヒカル…彼女は、ほとばしった生まれ出ずるものを強烈に外界へ放射するのではなく、そのエネルギーを内へ内へと“自己”へ向けている。ベクトルは自己の晶へ集中し、まさしく臨界のごとく内圧が際立っていく。
その核反応の輝きと発する熱射に、我々は打たれるのだ。彼女から漏れ出るシャワーに降り注がれる気持ちよさに、オーディエンスはヤられてしまっているというのが僕の結論。その形が、ワン・アンド・オンリー。17歳にあって、天才を意識せざるを得ない一瞬でもある。余りあるエネルギーを外へ吐き出さないアーティストが弾けたときの輝きは、閃光にも似て消えない証印を刻み込む。
胸をわしづかみにされるような悲痛と抑圧、そんな苦行を、心地よくさわやかに感染させる宇多田ヒカル。
次のツアーも、きっと僕は観に行くだろう。音楽が好きなのであればこそ、奇才の歩調に同期したいと思うのが自然なことだから。
文◎烏丸哲也(BARKS編集長)
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