“おい、これが本物のロックンロールだろ? John!”…“その通りさ”

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“おい、これが本物のロックンロールだろ? John!”
“その通りさ”

Led Zeppelinで生き残っている3人のメンバーの中では、John Paul Jonesが身体的には一番調子がよさそうだ。スリムで、赤みかかった茶色の髪を短くカットし、カジュアルで粋な服を着たJonesは、趣味の良い革のアタッシェケースをしっかり握って、LAUNCHのニューヨーク・オフィスに入ってくる。伝説の4人組メガロック・バンドのひとりというよりは、イギリスの有名実業家のようだ。
これはそれほど驚くことではない。結局、彼はこれまでビッグスターの役を演じることにそれ程興味をもったことがなかった。アルバムチャートやコンサートステージに君臨していた12年間のZeppelin時代でさえ、Jonesは常に最も目立たない存在であり、酒好きでドラッグを好み、グルーピーと関係を持ち、ホテルのテレビを壊すといったツアーでの悪ふざけなどなど、このグループの悪名高き所業にはほとんど加わらずに、主に作曲に携わっていた人なのである。それが事実でなかったとしても、少なくともこれが、何年もの間にできあがった彼のイメージである。
他のみんなと同じように、俺もツアー先ではさわいでいたよ」とこの親しみのもてる、もの静かなミュージシャンは語る。
少し分別があっただけだよ。少しだけね。その場にいなかったんじゃないかって、みんなは思っているけど、実際のところは、単に記者を避けていただけなんだ。彼らが俺を見かけることがなかったというのは事実だね

ドラマーJohn Bonhamの没後、Zeppelinは'80年に解散したが、そのときJonesは世間の注目を浴びないようにしていた。
正直言うと、どうしたらいいのかわからなかったんだ。別のバンドに加わろうなんて思わなかった。世界で最高のバンドにいたら、他に行きたいと思うところなんてないよ」。
結局彼は、'68年にZeppelinが結成されるまでやっていた仕事に戻った。他の人のレコードのプロデュースやアレンジ、演奏、そして時々クラシックの作曲もした。

このような人目を避ける行動をとっていたので、Jonesは、Led Zeppelinと聞いて思い浮かぶ最後の人物になりがちである。ただ'60年代の終わりと'70年代初めの画期的なアルバムを振り返って聴くと、Jonesの力強いベースの演奏と、作曲家、編曲家、多楽器奏者としてのすばらしい技術がなければ、Zeppelinはかなり違ったバンドになっていただろうとすぐにわかる。Jimmy Pageがドラッグのせいで精彩を欠いていたため、'70年代の終わりには、Jonesが音楽面のリーダー役を務めていたという説もある。
Jonesのソロアーティストとしての1stアルバム『Zooma』(Discipline Global Mobile)('85年の映画のサウンドトラック『Scream For Help』はソロアルバムから除く)を聴くと、この説はますます重みを増す。暗く、原始的で、揺るぎなく重厚なこのアルバムは、元Zeppelinのメンバーが公式にリリースした中では最高の作品であり、この20年で誰よりも、オールマイティなLed Zeppelinスピリットを残している。

ここで明らかな疑問がでてくる。なぜ今なのか?
この20年間ほとんど休眠状態にあったJonesのあの骨が砕かれるようなリフへの共感が再浮上するに至ったのはなぜなのだろうか?

その答えは5年前にさかのぼる。
強力な声の持ち主でゴート人の大物女性シンガーDiamanda Galasのアルバム『The Sporting Life』をサポートするため、Jonesは彼女と一緒に'94年のワールドツアーに乗り出し、アルバムにはプロデューサー、ベーシスト、そして共同ライターとして参加した。質の良い観客がいる小さな部屋での演奏は、何かを思い出させてくれた。
ツアーに出たときに、“そうだ、思い出したぞ、そこにいる人に対して演奏してるんだ”って突然思ったんだ」。
彼は思い出しながらくすくす笑う。
そしてその後思った。“どうやってもう一度これをやろうか?”って。それで、ずっと約束してきたソロアルバムを出せば、ツアーに出て、好きな場所で演奏し、自分のしたいようにできるんじゃないかって」。
その後4年間は、Jonesは他のプロジェクトの合間に『Zooma』の曲作りをし、自分自身のレコーディング・スタジオをロンドンに設立した。アルバムの大半は、そのロンドンのスタジオで録音された。

『Zooma』にはボーカルは入っていないし、初めから入れるつもりもなかった。
自分自身は歌わないし、誰かを自分の作品に巻き込みたくはなかったんだ。これは本当に個人的なレコードだから
とJonesは説明する。
それに、Chemical BrothersやProdigy、Underworldのようなバンドの影響で、最近はインストゥルメンタル・ミュージックを聴くのにみんな慣れてきているように思うんだ。だから、この種のアルバムを作るにはグッドタイミングだった

Robert Plantの叫びを懐かしむ人もいるかもしれないが、“B. Fingers”や“Zooma”などで聴かれる、大音響の楽器によるインタープレイがボーカルに負けない効果を上げていることを歓迎する人もいるだろう。おもしろいことに、手をねじ曲げてひく“B. Fingers”のリフは、郊外を散歩中に書いたものであり、ベースは近くにはなかったと、Jonesは語っている。
楽器を使わないで曲を書くんだ。楽器を手にして座ると、曲を書いていることなんて忘れちゃって、楽器で遊んじゃうからね。だから(散歩から)戻って来て、ベースギターを手に取り、“B. Fingers”のリフを試してみたんだ。そしたら、これを演奏するのは大変だってことがわかってね。でも、何とかテープに録音できるくらいには弾けるようになったよ
と何か確信したような雰囲気で笑う。彼はこの曲を約4年前に書いていた。その間に少し練習したのではないだろうか。

Jonesは、『Zooma』ではほとんどの楽器を演奏している(4、10、12弦のベース、ギター、オルガン、マンドリン、Kymaという電子サウンド・プロセッサ、特注のラップスティール・ベース)。だが、Butthole SurfersのギタリストであるPaul Leary(Surfersの『Independent Worm Saloon』を制作中にJohn Paul Jonesと初めて出会った)、スティックにKing CrimsonのTrey Gunn、パーカッションのDenny Fongheiser、そして“Snake Eyes”のスローで爆発しそうな音に深みを加えているLondon Symphony Orchestraのストリングス・セクションなど、何人かをサイドメン採用した。
しかし、最も有名なゲストは、Elvis Costello & the Attractionsのドラマーとして有名な、Pete Thomasである。Jonesは、Diamanda Galasのプロジェクトで初めて彼と組んだ。もちろんThomasは、何十年間も見事な演奏をしていたが、ZoomaでのBonham風の連打はすばらしく、意外でもあった。
Peteは、このレコーディングを本当に楽しんでくれたよ。こんなことをするチャンスはこれまで彼にはなかったからね
とJonesは語る。
“おい、これが本物のロックンロールだろ、John”って言うから、“その通りさ”って言ったんだ

それでも、大切にしたいところは譲らない。
ウエストから下(ドラムパート)は、すべて俺のパートだよ
とJonesは断言する。
基本的に、Peteにこういったんだ。“ウエストから上は、好きなようにしてくれ。でも、足の部分は俺がやるから”って。Bonhamと一緒にやって多くのことを学んだんだ。ふたりは本能的に演奏したんだけど、振り返ってみると、なぜリフが成功したか、何がパワーをくれて、何がパワーを落とすのかがわかったし、そういう経験の多くをこのレコードの制作に持ち込んだ。こう考えてたんだ。“ここのビートの休符は、Bonzoだったらどう演奏するだろうか?たたくだろうか、それともたたかないだろうか?”ってね。ドラムのパートはベースとからめて書いたんだ。ドラムとベースがお互いをサポートし合って、実にパワフルなっている

音楽以外のことでお互いにサポートし合うという点では、Zeppelinの元のメンバーが話題に上ることはなかった。Jonesは、Page & Plantの'90年代再結成グループに招かれなかった。その理由はミステリアスなままで、リポーターたちはこのふたりにこの話題に関する質問をすることができなかった。
そのことを新聞で読んで知って、まあがっかりしたよ
とJonesは幾分控えめに語る。
それ以来、彼らに『No Quarter』という名前をレコードに付けた理由とかは尋ねたことがない。でも、Zeppelinの仕事をする時は一緒にやるよ。触れない話題はいくつかあると思うけど…、今では昔の話だし、彼らはしたいことをやってて、俺はこうやっているのが本当に楽しいんだ

 Jonesはもちろん記者の前では元のバンドメイトに非友好的な言葉をあからさまに述べることはないが、彼が論争に火をつけなくても、彼が外された理由はだいたい見当がつく。性格の不一致? 音楽性の違い? 3人でギャラを分けるよりもふたりで分ける方がいいから? …すべて考えられることだ。しかし、私は、単に嫉妬ではないかと見ている。最近は、PageやPlantと比べると、John Paul Jonesはかなり成功しているからというだけでなく、Jonesが彼らふたりをステージから吹き飛ばすようなプレーヤーだからではないだろうか。
10月開始のツアーでJonesが君たちの街を訪れる際には、ぜひライブに行ってみてほしい。私の言いたいことがわかってもらえるだろう。

Mac_Randall

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