コンピュータに夢中で、いつも オンラインよ
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Alanis Morissetteのデビュー作で、スマッシュ・ヒットとなった『Jagged LittlePill』は、米国ではほとんど無名の新人(もっとも、子ども時代にはカナダでは有名人だったのだが)としては前代未聞、衝撃的な2000万枚をセールスした。今や、Morissetteは、“You Ought To Know”のような、感情に素直な曲で世界的に有名で、次作『Supposed Former Infatuation Junkie』、最近リリースされた『MTVUnplugged』は、デビューアルバムと同じように、人の心に訴えかける作品となっている。
以前はうわさのアングストロックの女王であった彼女が、LAUNCHの編集責任者、Dave DiMartinoとの1対1のインタヴューで、スーパーサクセス以降の彼女の人生とキャリアについて語ってくれた。
LAUNCH:
『Jagged Little Pill』が信じられないくらい売れて、あなたの人生は劇的に変化しましたよね。スーパースターになったことが、人生にどのように影響しましたか。
ALANIS:
しばらくはとても混乱したわ。外部からの刺激がすごくたくさんあった。一から考え直して、刺激的な状況の中にある美しさに気づくためには、その刺激からしばらく離れる必要があった。刺激の中は幻だらけなの。有名になったり、多くの人の目にさらされたりするようになると、幻もたくさん見えてくる。私は自分を表現したくて音楽をしていたのに、他の人たちはお金や成功や地位みたいなものがほしくてやっていた。そういうことも大事なことだけど、私の気持ちと他の人の気持ちには大きな違いがあった。だから仕事をやめて休息することが必要だったの。
LAUNCH:
あなたの歌には、たくさんの個人的なことが書かれているような気がします。心の内をたくさん見せるのは、とっても危険なことではないですか?
ALANIS:
もっと若いときには、フィクションの曲を作ってたの。そういう曲を作ることは、自分も本当に楽しかったし、たぶん他の人にも楽しんでもらえてたと思う。だけど、音楽と十分つながっている、っていう気持ちがあまりしなくて、自信を持って歌い続けられるかどうか分からなかった。それで、安心できる環境、曲を書くのはGlenBallardと一緒のときも1人のときもあるけど、そういう環境になってやっと、弱みを見せた、誠実で正直なことを書いた曲を作れるようになって、そういうことこそを音楽に反映したいんだ、と思うようになったの。そうやって曲を作りはじめたら、曲に本当に満足できるようになったわ。
LAUNCH:
『Jagged Little Pill』の次のアルバムのためにスタジオ入りする前は、何をしていたんですか。人々の期待に押しつぶされそうになりませんでしたか。
ALANIS:
ツアーの後だったから、スタジオに戻りにくかったのよ。まだ自分やすべてのことに関して、客観的になり切れてなかったから。正しく自分を表現するために、本当にもっと自分を知る必要があったの。自分がどう理解されるのか、どんな風に人の目に映っているのか、人間としてどう捉えられているのか、コントロールできないところまで来ていたから。でも、自分をどう表現するかはコントロールできるわけだから、自分のことを知るっていうことがすごく重要になってきたわけ、自分を正しく表現するためにね。だから、オフをとったの。そこで分かったんだけど、音楽とか映画とかビデオとか会話とか、私が作ったものを見ると、どれも他人のことがよく分かるのよ、自分のことよりね。それは私が、だいたいすべてのことについて首尾一貫してるからだと思う。私のことを、ネガティブやポジティブな解釈をしているのを読むと、その解釈した人のことがよく分かるのよ。
LAUNCH:
1人で曲を作っているときと、Glen Ballardとコラボレートしているときは、出来る曲が違うんでしょうね。
ALANIS:
1人で曲を作っているときは、2人のときよりも精神的に不安定なような気がするわ。
LAUNCH:
2ndアルバムでは最初のコラボレーションと比べて、変化はありましたか。
ALANIS:
まったく同じだったわ。1つだけ前と違うことは、これまでと違う楽器使って、発展させたり、音楽を広げてみたり、今までとは違ったことを題材にした曲を作ったりしたことね。ずっと、半音上げたり下げたりするマイナー・コードに強く興味を持っていて、ずっとそういうのをやってみたいと思っていたんだけど、彼もそう思っていたの。それと、私たちは、離れていた間におたがい変わって、成長したの。これは素晴らしいことね。っていうのも、またちゃんとうまくやっていけるかわからなかったけど、最初の数分ですぐにうまくいくって分かったから。
LAUNCH:
あなたの曲には、実在の人が出てきますよね。友人や以前のボーイフレンドなどから、歌詞について苦情は? それとも気付いていないとか?
ALANIS:
レコードのマスタリングをしようとしていスときなんだけど、“Unsent”のことを考えるたびに、この曲はみんなが聴いてくれるだろうっていうことも、自分のことが歌われているって分かってしまうくらい具体的な要素が入っているっていことが分かっていたから、落ち着かない気分になったわ。つまり、世界中がその人だと分かるほどじゃなくても、本人ならわかるだろうなって言うくらいには具体的だったの。だから、“Unsent”だけじゃなくて“Joining You”“The Couch”に出てくる人たちのほとんどに電話したの。その曲をレコードに入れないか、歌詞を変えるか、選択してもらったら、電話したことに感謝してくれて、曲をそのままレコードに入れることに賛成してくれたわ。
LAUNCH:
そうですか。それはいい話ですね。
ALANIS:
誤解もないわ。思うんだけど、よく、私が、まあ私に限らず誰でもそうだけど、ある1つの面しかもっていない人間だと誤解されるけど、そんなことあるわけないわよね。1つの曲、1つのインタヴュー、1つの会話で、人を完全に表現できるわけないもの。だから基本的には、そういう考え方こそが唯一の誤解だと思うわ。私は、『Jagged Little Pill』から数年の間に、自分自身や他人に対して、心が広くなったと思う。自分自身の状態や恐れを前よりもちゃんと受け入れられるようになったの。自分自身に対しても前よりやさしくできるようになったし、他の人にそれが伝わっていると思う。
LAUNCH:
ファンとの関係も良さそうですね。
ALANIS:
私はいつも、聴いてくれる人に気持ちを自然に気持ちが伝わるような表現を探しているけど、それは、自分のエゴを満たすためじゃなくて、その人たちと心を結びつけて、コミュニケーションをとるためなの。聴いてくれる人が楽しんでくれることにも、私自身が楽しいと感じることにも、それぞれいろんな理由あるの。
LAUNCH:
これまでのキャリアの中で、後悔していることはありますか。変えられるなら変えたいと思うような…。
ALANIS:
そうね、『Jagged Little Pill』がリリースされたときの、昔の自分の行動を本当に後悔しているわ。インタヴューの答え方とか、他人と協調してやっていくことについて頭にたたきこんでおくべきだった。自分がしていることがはっきり分かっている、というのが前提になっている環境に放り込まれちゃったんだもの。本当は分かってなかったのに。
LAUNCH:
ところであなたが影響を受けた人って誰ですか?
ALANIS:
私、Jeff Buckleyが好きなの。あと、自分を表現することをあまり意識していないアーティストが好き。Bjorkとか。彼らのスタイルを真似しようとはあんまり思ってないんだけど、結果的には、自意識過剰にならないっていう、彼らの特徴には似てきてるかもしれない。スタジオのヴォーカルブースにいるときは、自分がどうしていてどう歌っているかなんて、まったく考えていないわ。自分自身を表現することこそが、大事なんだもの。
LAUNCH:
現在も大変忙しいと思いますが、どうやってバーンアウトしないようにしていますか。
ALANIS:
自分のペースを守ることね。私がクリエイティブな面やエモーショナルな面でバーンアウトしてしまったら、自分の価値がなくなってしまうと思うの。だから私にとっては、私が大好きな人と親しく心を通じ合わせていることが大切。事柄によっては、ノーと言わなきゃならないことが増えたり、逆にイエスと言えることが増えたりするけど、心が通じ合っていると感じられる人と仕事をすることでバーンアウトしないようにしてるわ。他の人にお願いすることも前より増えているし、自分が信頼している人と仕事ができているの。今は、精神的に落ち着いているわ。
LAUNCH:
ところで、『Supposed Former Infatuation Junkie』というタイトルですが…。
ALANIS:
“So Pure”という曲を書いているときに、その言葉を思いついてGlenに歌ったか言ったかしたら、Glenが大笑いしたの。これは私の口から出てきちゃっただけなのよ、このレコードはとても落ち着いていて内省的な雰囲気があって、ほとんど全部、私自身がそうしたいと思ってしたことなの…おもしろおかしい部分にしても、真剣な部分にしてもね。そのタイトルにはそんなに特別な意味はないの。このレコードにいいなと思う名前を直感で付けただけよ。
LAUNCH:
アーティストとして、演奏活動、プロモーション、取材などに時間をかなりとられますよね。やりたくてもできないことがあるでしょうね。
ALANIS:
以前はスポーツがすごく好きだったんだけど…あのありがちな人生の分かれ道があったのよ、音楽をするか、スポーツをするかっていう選択ね。そのときした選択は間違ってなかったみたい。1年半のオフのとき、したいことを20個リストアップしてみたの。キャンプ、スノーボードから、絵、料理まで。それで、そのリストにあることを全部やってみたの。全部やりおわったら、また曲が書けるようになったわ。
LAUNCH:
最後に、以前はあまりコンピュータが好きじゃなかったですね。最近はどうですか?
ALANIS:
意見が変わったの。昔は、インターネットとかなんでもいいんだけど、コンピュータに関係あることはなんでも反キリスト教的だと思っていた(笑)。そういうものは人と人の繋がりを妨げるものだって思ってたんだけど、最近、実は逆に人と人をつなげているんだっていうことが分かったの。今は完全にコンピュータに夢中で、いつもオンラインよ(笑)。
dave_dimartino (2000.1.10)