【ライブレポート】Cö shu Nie、5回目の開催を迎えたBillboard Live公演開催。「こうやって音楽で繋がれる時間が、私たちにとって宝物です」

Cö shu Nieのワンマンライブ<A cöshutic Nie Vol.5 in Billboard Live TOKYO and OSAKA>の東京公演が2025年4月11日、東京・六本木のBillboard Live TOKYOにて開催された。
◆Cö shu Nie 画像
エクスペリメンタルなロックの新次元を開拓し続けるCö shu Nieが、Billboard Liveならではの独自のアレンジやアプローチでCö shu Nieの音楽を再構築するライブシリーズ<A cöshutic Nie>。コロナ禍真っ只中の2020年12月、無観客配信ライブとしてここBillboard Live TOKYOで生まれた<A cöshutic Nie>も今回で5回目。もはやCö shu Nieにとってもライクワークとなりつつある<A cöshutic Nie>という表現が、お酒や料理と一緒に心行くまで音楽を堪能するBillboard Liveの自由なスタイルと相俟って、妖艶で美しい音楽空間を描き出していた。
4月11日に東京、4月13日に大阪と1日2公演、計4公演にわたって行われた今回の「Vol.5」。現在オンエア中のTVアニメ『黒執事 -緑の魔女編-』のオープニングテーマ「MAISIE」[Cö shu Nie (feat. HYDE)]にちなんだオリジナルカクテル「MAISIE」をはじめ、思い思いのドリンクをオーディエンスが楽しむ中、いよいよ東京公演の1stステージは開幕の時を迎えた。

松本駿介(B)とサポートメンバー・beja(Piano, G)、工藤誠也(Dr)が静かに音を紡ぐ中、レザーのドレスに身を包んだ中村未来(Vo, Piano, G)が登場。会場に満ちあふれる観客の期待感を「fuji」の艶やかなファルセットでかき混ぜ、ただでさえ近い舞台と客席の距離感を「inertia」のウィスパーボイスがよりいっそう引き寄せていく。同期演奏を排し、すべての歌と音を生身の呼吸で生み出していく「A cöshutic Nie」独特の空気感も相俟って、都心のライブ会場はライブ序盤の時点ですでに、めくるめくポップの異空間へと導かれている。
「ごきげんよう、Cö shu Nieです! 飲んでますか?」と中村が呼びかけ、「1stからあっためていこうな!」と軽快なクラップを巻き起こしたところから「Artificial Vampire」へ流れ込んでみせる。80年代エレポップ調の原曲とは異なり、ジャジーでクールな装いで鳴り響くアンサンブルが、しなやかな躍動感と肉体性をもってBillboard Liveの客席に広がっていく。最新アルバム『7 Deadly Guilt』からの「I want it all」、BPMを落としてメランコリックな響きを帯びたインディーズ時代の楽曲「アマヤドリ」を経て、中盤に松本のベースラインに乗せて中村が歌い始めたのはなんと太田裕美の名曲「木綿のハンカチーフ」。2024年の「Vol.4」での洋楽カバーに続く「邦楽カバー」という新たなトライアルが、客席の驚きと感激を呼び起こしていた(なお、この日の2ndステージではMINMI×Nujabes「四季ノ唄」カバーを披露)。

「またこうやって顔を見られて、本当に嬉しいです…って、SNS友達かな?(笑)」とカジュアルに観客に語りかけつつ、「こうやって音楽で繋がれる時間が、私たちにとって宝物です」とライブという表現への想いを伝える中村の言葉に、惜しみない拍手が湧き起こる。中村の歌×bejaのピアノというシンプルなスタイルで演奏された「Lamp」。アカペラで歌い上げた前半部分で魔法のような誘引力を体現してみせた「I am a doll」。変拍子も織り込んだもともとの構成にフリージャズ的な狂騒感を重ねてみせた「scapegoat」。ギターレス編成によって松本のベースラインの蠢きがくっきりと浮かび上がった「asphyxia」。変幻自在な歌とアンサンブルのアートフォームに、思わず客席からも「ブラボー!」の声が飛ぶ。
ライブ当日はあいにくの雨模様ということもあり、松本が「桜、全部散っちゃってねえ…」と話すと、「しゅんす(松本)は移動中も雨降ってるし、洗濯物干したら雨降るし、どっか出かけようと思ったら雨降るから(笑)」と中村の相槌で客席を沸かせたところで、中村がギターを構えて演奏するのは、<A cöshutic Nie>の初回から演奏されてきた未音源化楽曲「雨」。さらに、中村がピアノ、bejaがギターにパートチェンジして奏でた「give it back」が伸びやかなイマジネーションを喚起し、《ああ どうやって/もう どうやって/ああ 心を伝えればいい》という「海へ」の麗しのファルセットが、Billboard Liveの観客を抗い難く魅了していく。

「みんなのおかげで、今年もBillboard Liveに来れました! 自由に歌えて、最高に気持ちいいし――まあ、ライブ自体がご褒美なんですよね。こうやってみんなの存在を確認して、歌を届けられて、音楽を届けられて…ビシビシとね、伝わってるなあっていう感じがするこの瞬間が、本当に大好きです」と感慨深げに語る中村に応えて、一面に拍手が広がる。
「みんながオープンな心で、会いに来てくれるからこそ、こういう時間があると思ってます。みんながそれぞれ、いろんな人生を送って、その上でここに集まってくれてることを、よくわかっているので。もう体いっぱい、精一杯ぶつかっていきたいと思っています」あふれる想いをこめた中村の言葉に続けて、「この一瞬が消えないように書いた曲です。一緒に歌ってください」と歌い始めた楽曲は「青春にして已む」。《10年後もその先も君のままで居て/ただ生きてて欲しいの》という真摯なフレーズが、客席一面の歌声とハンドウェーブとともに響き渡った。
1stステージの最後を飾ったのは、アルバム『7 Deadly Guilt』からの「消えちゃう前に」だった。《答えがなくたって 夜の海をいこう/どんな自分も愛して/理由なんてなくていい》と歌う中村のファルセットが、ひときわ深く胸に迫る。そして、舞台背後の幕が開き、窓の外に広がる街の夜景をバックに、中村のギターと松本のベースが奏でるアウトロのユニゾンのフレーズが、珠玉のアクトの終幕を熱く、美しく彩っていた。

6月12日にはロックスタイルのワンマンライブ<Cö shu Nie Oneman Show -赤い月が堕ちる->をLIQUIDROOM ebisuで開催することも決定しているCö shu Nie。この日は披露されなかった新曲「MAISIE」も含め、ますます鮮やかに咲き乱れるCö shu Nieの「その先」への期待感をどこまでも高めてくれる、至上のステージだった。
文◎高橋智樹
写真◎鳥居洋介
セットリスト
01.fuji
02.inertia
03.Artificial Vampire
04.I want it all
05.アマヤドリ
06.木綿のハンカチーフ(カバー曲)
07.Lamp
08.I am a doll
09.scapegoat
10.asphyxia
11.雨
12.give it back
13.海へ
14.青春にして已む
15.消えちゃう前に
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