【ライブレポート】ACIDMAN、ツアー<This is ACIDMAN 2025>開幕

ACIDMANが3月20日の愛知・Zepp Nagoya公演を皮切りに<LIVE TOUR "This is ACIDMAN 2025">をスタートさせた。同ツアー初日公演のオフィシャルレポートをお届けしたい。なお、本ライブレポートには投票楽曲を含むセットリストの記述があります。
◆ACIDMAN 画像23点
子供の頃、ゲームをするときに攻略本を先に読んでからプレイするタイプだった。何処にどんな宝物があって、どんな仲間が待っていて、どんなラスボスがいるのか。なんならそのボスの倒し方まで攻略本には書いてある。“そんなの楽しいのかな?”って思われるかもしれないけれど、“これからこんなことが起きるんだ”を知ることのワクワクと、それが実際に起こるドキドキを2回楽しめることが子供ながらになんだか得したように感じていた。何が言いたいかって、そりゃ<This is ACIDMAN>のことだ。



“これぞACIDMAN”なこのツアーでは事前にセットリストが公開されており、もちろんセットリストを確認するもしないも自由ではあるけれど、僕らは事前に当日のセットリストを知った上でライブを楽しむことが出来るという。“そんなの楽しいのかな?”──そんな声が聞こえてきそうだけれど、これはある意味、ACIDMANの攻略本。そして郷に入っては郷に従え精神で、だったらACIDMANの目論見に乗らない手はない。迷わずセットリストを見る。
“うわ、1曲目マジかよ”“え、あの曲やるじゃん”。本来、ライブのその瞬間瞬間で感じる感情をお昼ご飯を食べながら味わう。ほら、もうワクワクしている。この後、僕らはこのセットリスト通りの楽曲をライブハウスで浴びるのか。家に帰るまでが遠足なら、家を出る前に既に今日のライブが始まっている。やるな、<This is ACIDMAN>。まんまと戦略通り楽しまされている。



ライブは予定通り「world symphony」でスタート。知ってる、知っているよ、「world symphony」で始まること、僕は知っていたんだよ。なのに、なのにだ。あのイントロが鳴った瞬間のこの高揚感といったらもう。セットリストが在ろうと無かろうと、生命の音の鮮やかさは何も変わらず。そうか、そうなのか、この<This is ACIDMAN>は、ACIDMANが絶対的な信頼をその楽曲楽曲に抱いているからこそ、本来ライブで起きるはずのサプライズ要素を除外したとて、存分に楽しませる自信があるからこそのセットリスト公開なのか。そうなればもう答えはひとつ。“全ては流れのままに”だ。
僕の予想ではこの後、佐藤雅俊がゴリゴリのベースを奏でるはずだ。そして予告通り「造花が笑う」が叩きつけられる。いや、セットリストが公開されているのだから“僕の予想”なんかじゃないのだけれど、“くる、くる、くる、きたー!”のこの感じ、これ、本当に楽しいかも。聴かせて欲しい歌がある。その曲を今日聴けることが分かっている。「FREE STAR」の光がフロアを包む中、この曲に登場する少年の未来を祈る。たった一秒で世界を変えることが出来るから音楽って凄い。音楽って、凄い。




2021年から始まった<This is ACIDMAN>はもう何度も言っているように事前にセットリストが公開されている。「セットリストを見た人も、見ていない人も、ACIDMANを何十年も応援している人も、初めて観る人も、此処にいる全員が楽しめる日を作りたい」──大木伸夫がそう語っていたように、誰も置いていかない、ひとりひとりに届けるように演奏するACIDMAN。
楽しみ方はそれぞれだけど、そのそれぞれが尊重し合える空間がここにはあって、それは抽象的な言葉で彩る「赤橙」が聴く人によっていろんな解釈が出来ることにも似ている気がした。みんな違ってみんな正解。“君の「赤橙」はどんな? 僕の「赤橙」はこんな”。もう本当に長い時間を掛けてこの曲を聴いてきたけれど、僕らが憧れた太陽と空の間のような静かに開いた世界って、ライブハウスのことなんじゃないかな。そんなことを長い年月を掛けて強く思ったりしている。
ライブハウスって自由だってよく言うでしょ。僕にとっては全てを肯定してくれる場所でもあって、だからこそ「スロウレイン」が響くのだ。雨が冷たいものだけではなく、全てを肯定してくれる優しい雨があることを教えてくれたのだってACIDMANだ。そういう意味では「白と黒」もそう。物事にはきっと白い部分も黒い部分もあって、その矛盾を抱えながらそれでも僕らは生きているのだ。ジャジーと狂気の入り混じった「白と黒」は人間そのものに聴こえる。



いまこのタイミングで聴く「酸化空」も突き刺さった。“子供の頃に描いていた未来ってこんなんだっけ。こんなはずだっけ。このままじゃ後に咲く花もない”。そんなことをこの数年思い知らされていた。だからこその音楽で、だからこそのACIDMAN。音楽に何が出来るかって、その音楽に、大木が描き出す世界観に突き動かされた僕たちは種を撒くことなら出来る。
いつか死ぬ。僕らは全員必ずいつか死ぬのです。僕も君もいつの日か終わるのです。だから抗うのでしょう。だから生きるのでしょう。静かな命の炎を「季節の灯」から感じる。「UNFOLD」だってそう。世界の終わりのその瞬間まで、強く強く生きていたい。ACIDMANはいつだってそうやって僕を鼓舞してくれる。
浦山一悟のドラムが力強く鳴り響き「innocence」に突入すると、ここで感じるのは大木が歌い続けてきた死生観。“真っ白に生まれ変わるんだ”というメッセージが心のずっと奥の奥まで届き響く。そしてここで故・坂本龍一氏とのコラボ楽曲「風追い人(前編)」が披露される。氏が生き抜いた証だ。こうやってバンドがその音を奏でることで、音楽は死なない。受け取った僕らの記憶に残っている限り、人は死なない。そうやって音楽を、人生を繋いでいくことが、もしかしたら僕らの使命なのかもしれない。何もそんな難しく考えなくて良いのだけれど、どうしてもそんなことを考えてしまうような流れの中に立っていた。事前に知っているはずのセットリストの中で言葉を失うなんてね。


まるで生命そのもののような「Λ-CDM」を経て、ここで<This is ACIDMAN>のもうひとつのお楽しみであるファンによる投票曲が披露される。ツアー初日である名古屋公演で演奏されたのは「and world」。浦山のスネアの連打に思わず声が出る。ダイナミックな演奏の中で“今も千の海で生まれる生命の声”と歌うその優しさ。光り在れ、光り在れ。力強く叫ぶその言葉に涙を堪えることなんて無理だった。空と太陽と海と土と音楽。この自然の恵み、自然の摂理によって僕たちは生命を鳴らしている。そうやって深く息を吸い込んで、また花を咲かす。
生きとし生けるものたちの美しき音を「ある証明」「輝けるもの」が文字通り証明してくれる。そしてラスト「sonet」が壮大にZepp Nagoyaを包み込む中、これも何度も言ってきたけれど“生きること”の意味を考える。笑い合うこと、笑い、会うこと。それが僕らにとってのライブハウスだし、そこで生命を歌っているのが僕らにとってのACIDMANだ。
アンコールで「Your Song」を衝動的に演奏する姿だって生きている証明。振り上げた拳は生命の塊。これぞACIDMAN、これこそACIDMAN。伊達に<This is ACIDMAN>を冠していないぜ。事前に公開されたセットリストを、投票曲とアンコールを除き公開通りに演奏して、その期待を軽く超えてくるのだから、やっぱりACIDMANって凄い。この日の名古屋公演を皮切りにツアーは始まったばかり。それぞれの楽しみ方、それぞれの感じ方、その全てが<This is ACIDMAN>なのだと思う。




取材・文◎柴山順次
撮影◎イノコシゼンタ
■<ACIDMAN LIVE TOUR "This is ACIDMAN 2025">
04月13日(日) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
04月26日(土) 大阪・Zepp Osaka Bayside
05月04日(日/祝) 福岡・Zepp Fukuoka
05月25日(日) 宮城・SENDAI GIGS
06月13日(金) 神奈川・KT Zepp Yokohama
06月21日(土) 新潟・NIIGATA LOTS
07月12日(土) 北海道・Zepp Sapporo
07月18日(金) 埼玉・ウェスタ川越
10月26日(日) 東京・日本武道館

■日本武道館公演YouTube無料公開
無料公開 / 先着先行受付期間:2/1(土)12:00〜2/28(金)23:59
▼<A beautiful greed> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:3/1(土)12:00〜3/31(月)23:59
▼<ALMA> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:4/1(火)12:00〜4/30(水)23:59
▼<新世界> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:5/1(木)12:00〜5/31(土)23:59
▼<有と無> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:6/1(日)12:00〜6/30(月)23:59
▼<Λ> in 日本武道館
無料公開 / 先着先行受付期間:7/1(火) 12:00〜7/31(木)23:59
■<ACIDMAN presents SAI2022 PHOTO EXHIBITON -online->
URL:https://sai-fes.jp/photoexhibition/
▼展示アーティスト ※50音順
ACIDMAN / ASIAN KUNG-FU GENERATION / 氣志團 / THE BACK HORN / the band apart / SiM / ストレイテナー / sumika / 10-FEET / 東京スカパラダイスオーケストラ / DOPING PANDA / Dragon Ash / back number / BRAHMAN / マキシマム ザ ホルモン / MAN WITH A MISSION / Mr.Children / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS +
▼MC ※50音順
岩尾望(フットボールアワー) / 大抜卓人 / ジョージ・ウィリアムズ / ジョー横溝 / ダイノジ / Boo / 藤田琢己
▼フォトグラファー
AZUSA TAKADA / 石井麻木 / 枝 優花 / 久野美怜(SIGNO) / 酒井貴弘 / Taka “nekoze photo” / 三吉ツカサ(Showcase) /浜野カズシ / 藤井 拓 / 増田彩来 / 山川哲矢 / Victor Nomoto(METACRAFT)
協力:東急不動産株式会社 / UMIDASU CO.Ltd.

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