【ライブレポート】ウィンガー、「良い状態で終わりたい」と語る熟成されたフェアウェル・ツアー

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前回から約1年半ぶりとなるウィンガーの来日公演は、"フェアウェル・ツアー"という形で発表された。

バンドの中心人物であるキップ・ウィンガー(Vo, B)は、クラシック音楽の作曲家としても注目されており、「ロックを30年以上やってきたから、後の30年を別の世界で表現したい」と言う。2023年にリリースされた最新作である『SEVEN』アルバムの制作でその決意をした彼は、オリジナルメンバーを呼び戻し、前回の日本公演も含め各所でツアーを行い、一周してこの日本とオーストラリアをもってフェアウェル・ツアーは完遂するというもの。



遂にその日が来てしまった。日本公演は3月27日の大阪公演から開幕し、名古屋公演を経て、東京初日公演を迎えた。

前回はサポートギタリストとしてハウイー・サイモン(G)が参加していたが、今回はようやくジョン・ロス(G)も合流しての完全オリジナルメンバーでの公演となった。オープニングから終始、彼らの真骨頂になってきたフロントにポール・テイラー(Key, G)も加わってのキップ・ウィンガー(Vo, B)、レブ・ビーチ(G)、ジョン・ロス(G)での4人並びの光景は実に良い眺めで、これまでこのバンドの作品を聴けて、ライブを観てこれた事にまずは感謝したい。



東京での最終公演を控えている為、ここではセットリスト含めてあまり詳細な内容は控えておきたいが、定番となっている初期作品『Winger』『In the Heart of the Young』からの楽曲に加えて、日本仕様と思われる選曲もいくつかプレイされた。というのも、先日の<>Monsters of Rock Cruise 2025>や2024年の<Sweden Rock Festival 2024>でもウィンガーを観てきたが、そこでは披露されなかった楽曲たちも登場。そしてアンコールでは各メンバーが在籍していたバンドのメドレーが日本では初披露となった。









前回の日本公演時、リリース間もない最新アルバムの『SEVEN』から披露された楽曲を観客が皆歌ってくれている光景にはメンバーもとても驚き、喜んでくれていた記憶も新しい。日本のファンは他国に比べてコアで熱心な面があるし、今回のセットリストについてはファンからも多くのリクエストもあったかもしれない。







ウィンガーは、メンバー全員が技巧派なだけでなく、全員のコーラスワークも素晴らしく、美しいメロディの楽曲を重厚に際立たせるのが特徴的だ。ギターのチューニングは低めでダークな雰囲気も持ちつつ、プログレッシブやファンキーな一面もあり、作品毎にアグレッシブになっていった。これまでも多くの評価を得てきているが、実に多様な音楽的傾向を持っている。また、今回も初期作品のポップさと近年のアダルトでヘヴィな雰囲気を何とも言えない"丁度よさ"で心地良く楽しませてくれた。







メンバー個々で言うと、時折りのひょうきんさも見せるレブ・ビーチは、ホワイトスネイクやナイト・レンジャー等でも多くのファンを魅了してきたが、彼のキャリアの中でもやはりウィンガーは最も輝いたプレイで圧倒させてくれる。ジョン・ロスの代役が務まるプレイヤーはなかなか居ないとメンバーが言う通りで、ジョンは自身のソロコーナーでもその実力を発揮していたし、レブのソロコーナーではベースを担当する場面も新鮮で、更に歌唱力も抜群だった。

ロッド・モーゲンスタイン(Dr)の超絶ドラミングもこのバンドサウンドの要であり、ダイナミックかつ正確なリズムは他に類をみないと思う。どちらかと言えば小柄な彼が、70歳を超えてもこんなにパワフルで笑顔で情熱と激しさを持っている。ポール・テイラーはキーボードとギターでマルチな活躍ぶり、彼の書いたあの名曲はセットから外せないところだ。





フロントマンであるキップ・ウィンガーの歌声もまだまだ力強く絶好調に、当時のMTVで見せた華やかなステージングは更に成熟し、ヘッドセットマイクでのベースヴォーカルパフォーマンスには心底見惚れてしまう。「俺たちは36年間一緒に居て、そのほとんどの素晴らしい音楽を書いたのはキップだ」とレブが紹介していた。同時代の多くのバンドの中でも一際、才能が溢れたバンドだったと思う。

今回の日本公演は、フェアウェルに相応しくバンド全体が非常に高いパフォーマンスと熟成された状態のステージで、彼らのミュージシャンシップは素晴らしくタイトだった。



「こんなに素晴らしいステージが出来るのにフェアウェルなんて」と、誰しも思うところだが、「良い状態で終わりたい」という彼らの言葉通り、今がその最良の時なのかもしれない。ただ、彼らは引退するわけではない。今後、新作のリリースやワールドツアーはなくとも、アメリカ国内でのフェスティバル等には出演する気はあるようだ。しかしながら、青春時代から共にしてきたバンドたちの日本へのフェアウェルツアーは益々、発表されていくだろう。まだ間に合うようであれば、このツアーの最終公演を見逃さないで欲しい。

文◎ Sweeet Rock / Aki
写真◎ ShimaZi

WINGER<Farewell Japan Tour 2025>

2025年4月1日(火)
@EX THEATER ROPPONG
OPEN 18:00 / START 19:00
当日券:18:00~会場当日券売場にて販売
指定席¥17,000(税込/1Drink別)
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