【ライブレポート】Crossfaith主催フェス<HYPER PLANET 2025>後編「長年やりたかったことがようやく形に!」

Crossfaithが2月1日・2日の2日間に渡り、最大級のワンマン<OUR FAITH WILL NEVER DIE>、そして初主催の大型フェス<HYPER PLANET 2025>を幕張メッセにて開催。
DAY1はONE MAN SHOW、DAY2はFESTIVALという構成で、海外/国内バンドを招き、DJブースまで設けるなど、幕張メッセを自由な遊び場に変えた刺激的なフェスだった。
それだけでなく、Crossfaithが昨年6月にリリースした最新6thアルバム『AЯK』の世界観を、今回の幕張メッセ2デイズで体現したという意味で、ようやく作品が完結したという印象も受けた。
最新作に収録された「God Speed feat. WARGASM」を2日連続でプレイ、「Warriors feat. MAH from SiM」はさらにcoldrainのMasatoを加えたスペシャルバージョンで披露したりと、周りにいるかっこいいアーティストたちと共にこれからより一層駆け上がっていくんだ!というCrossfaithのポジティヴな決意表明として受け取れる。そう考えると、今回のフェスは“始まり”、本当の意味で新たな狼煙を上げる途轍もない2日間だったと声を大にして言いたい。(文◎荒金良介)
BARKSではこの2デイズの模様をレポート。DAY1、DAY2前編に続き、ここではEnter Shikari、Age Factory、マキシマム ザ ホルモン、Zardonic、オカモトレイジ、Underoath、Sable Hills、KSUKE、そしてCrossfaithのステージの模様をお届けする。
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■【HYPER STAGE / Enter Shikari】
「Enter Shikariが日本に帰ってきたぞ。帰ってこられて最高に嬉しい。準備できてるかい!?」
Crossfaithの「FREEDOM」に客演した経験もあるルー・レイノルズ(Vo)がちゃめっけたっぷりに挨拶しながら、UK4人組・Enter Shikariは新旧の代表曲の数々を披露。バンドの進化の歴史を追体験させながら、<KNOT FEST 2023>以来となる日本のファンとの交歓を楽しんだ。

ファンキーなポップサウンドが序盤からいきなり最新型のEnter Shikariをアピールした「Bloodshot」や、「{The Dreamer’s Hotel}」もよかったが、<HYPER PLANET>の場合、やはり盛り上がるのは、軽やかなギターのカッティングよりもやはりヘヴィなコードリフが鳴る「Sorry You’re Not A Winner」のようなラウドロックナンバーだ。


レイブなロックナンバーの「goldfĭsh ~」「The Jester」もEnter Shikariファンの大好物。プログレ要素もある後者では跳ねるドラムの連打に合わせ、観客がバウンスして、フロアの温度をぐっと上げる。
その熱気をさらに熱いものにしたのが、「Old school with us! Are you ready?!」とルーが言ってから、攻撃的なシンセのリフとともになだれこんだ「Mothership」だった。

Enter Shikariのレイブロックサウンドにルーのスクリームとツインペダルで打ち鳴らすドラムのビートがハードコアの要素を加える。
「Show me your energy!!!!」ルーのリクエストに観客がサークルピットで応える。その以心伝心ぶりに彼らが来日を重ねながら日本のファンと結んできた絆の強さが垣間見えた気がした。

ラストナンバーは23年にリリースした目下の最新アルバム『A Kiss for the Whole World』の表題曲と言える「A Kiss for the Whole World x」。同期でファンファーレを鳴らしたシンフォニックでピースフルなアンセム……と思わせ、曲の終盤、カウントダウンからバンドの演奏が白熱。バンドは観客のレスポンスの声が飛び交う中、ダイブする猛者達とともに<HYPER PLANET>にふさわしいラストシーンを作り出したのだった。
文◎山口智男
写真◎Takeshi Yao(@takeshiyao)
Enter Shikari セットリスト
2. Dreamers
3. Arguing
4. Sorry
5. goldfĭsh ~
6. Jester
7. Mothership
8. A Kiss for the Whole World x
◆ ◆ ◆
■【NOVA STAGE / Age Factory】
まるで、どこからも切り離されているかのようだった。今、この時間のNOVA STAGEだけは自分たちの場所。小さいライブハウスか、ホールか、だだっ広い空間か、日差しが照りつける野外か、ここがどんなところであるかは関係ない。自分たちのやるべきこと──力の限りの演奏を通じて、己の魂を届けるだけ。孤高だった。

その反対に、彼らのステージはあらゆるものとつながってもいた。令和7年2月2日の世界、日本の音楽シーン、数々の仲間、<HYPER PLANET>を企画したCrossfaith(彼らについて、「昔からリスペクトしているバンドのひとつです」とMCで話していた)、そして、自分たちの目の前にいるおびただしい数の観客一人ひとり。「誰でも知ってるなら一緒に歌ってほしい。一緒の時間にしたい。同じ場所を目指そう」という、MEでの清水英介(Vo, G)による呼びかけが象徴的だった。「TONBO」や「GOLD」などで起こったフロアのシンガロングは完全に曲の一部になっていた。そこには連帯があった。


ステージ上の4人を照らしていたのは、舞台の大きさに見合わないぐらい大量に設置されている照明。しかし、それらの光は4人のシルエットから放出されているようにも見えた。特に、「GOLD」でステージを包んだ黄金色は、あの一帯をどこか違う場所へ連れて行ってくれた。そんなふうに、1曲1曲が特別で、あの瞬間にしか経験し得ない、特別なライブだったのだ。

ラストの「CLOSE EYE」では、清水が一つひとつのリリックを吐き捨て、ミクスチャー感の強い演奏で殴りつける。そして、曲が終わり、この30分間を完全に支配した自らのバンド名を名乗ったあと、暗転していく舞台にマイクが落ちた音が鳴り響くのだった。
文◎阿刀“DA”大志
写真◎Takeshi Yao(@takeshiyao)
Age Factory セットリスト
2. See you in my dream
3. Shadow
4. 向日葵
5. TONBO
6. RIVER
7. GOLD
8. CLOSE EYE
◆ ◆ ◆
■【HYPER STAGE / マキシマム ザ ホルモン】
改めて言うまでもないが、“超”が付くほどヘヴィでラウドな音楽を一般レベルにまで浸透させたマキシマム ザ ホルモンの功績は大きい。それこそ、この日の出演者であるEnter Shikariとは2008年にイギリス(海外でも日本語MCを貫くホルモンの強心臓っぷりに筆者も驚愕した)と日本で一緒にツアーを回っているなど、世界を股にかけて活動するCrossfaithにとってもホルモンは一目置く大先輩であり、先駆者なのだ。

HYPER STAGEのラインナップを見て感じたことは、誰が最もハイパーなのかを競い合う大会のようだということ。国境も人種も超えた音楽版“天下一武道会”とも言える本フェスにホルモンはなくてもならない存在だろう。
定番SEであるSPACE COMBINEの「Marching Mint Flavors」が流れた後、ナヲ(ドラムと女声と姉)、マキシマムザ亮君(歌と6弦と弟)、上ちゃん(4弦と歌とDANGER×FUTOSHI)、ダイスケはん(キャーキャーうるさい方)のメンバー4人が現れ、映画『告白 コンフェッション』主題歌「殺意vs殺意」で本編はスタート。暗闇のダンジョンを彷徨うような目くるめく曲展開に加え、ダークかつスケアリーな曲調の中で飛び出してくる歌詞、音像、フレーズにドキッさせられっぱなし。複雑怪奇にして濃厚過剰なミクスチャーサウンドにド頭から強烈な顔面パンチを食らってしまった。

「シミ」に入ると従来の激重サウンドに加えてDANGER×FUTOSHI(上ちゃん)のシンセによるエレクトロなアレンジが足されるなど、ヘヴィだがアッパーな仕上がりがまた最高。もちろん幕張メッセはヘドバン&クラウドサーファーが止まらず、暴動寸前のカオスな熱気に支配されていた。メンバー全員が歌に参加する「ビューティー殺シアム」は、バリエーション豊かな攻めで翻弄。フロアに激しいサークルピットが起きるほどだった。
3曲を終え、ダイスケはんがナヲに封筒を手渡すと、そこに書かれた手紙が読み上げられる。「<HYPER PLANET>にお集まりの皆様へ (中略) 一筋縄ではいかない苦労フェイス(Crossfaith)のさらなる飛躍を祈って…」とナヲが手紙を読んでいる間、ダイスケはんは西南西を向いたまま無言で恵方巻きを一気食いするという茶番劇だ。そして観客を巻き込んだ「HYPER!」「PLANET!」のコール&レスポンスで会場を一体化する。

ド派手なレーザー光線の中で披露した「便所サンダルダンス」、エモーショナルかつパンキッシュな疾走曲「鬱くしきOP~月の爆撃機~/鬱くしき人々のうた」で幕張メッセをぐちゃぐちゃに掻き回すと、ラストは1曲を残すのみだ。ナヲによる“麺カタコッテリ”で観客を再び一つに束ねた後、「恋のメガラバ」へ。極彩色のライティングが曲を盛り立て、パーティーの向こう側まで突き抜けたエレクトロニコアに観客全員が騒乱状態に陥る圧巻のラストを迎えた。

ライブ終了後、“レイヴメタル”という宣伝文句とともにデビューを果たしたEnter Shikariが、エレクトロまで血肉化させたマキシマム ザ ホルモンの音楽的進化を観て、どんな感想を漏らすのだろうかと気になった。おそらくこう言うに違いない、「クレイジー!!!!」と。
取材・文◎荒金良介
写真◎浜野カズシ
マキシマム ザ ホルモン セットリスト
2. シミ
3. ビューティー殺シアム
4. 便所サンダルダンス
5. 鬱くしきOP~月の爆撃機~/鬱くしき人々のうた
6. 恋のメガラバ
◆ ◆ ◆
■【NOVA STAGE / Zardonic】
カウントダウンからライブスタートの掛け声を発したスタッフがDJブースに隠れると、入れ替わるように近未来風のマスクを被ったZardonicが現れ、高速の4つ打ちのキックを鳴らし始めた。
なんだ、スタッフだと思っていたのは、Zardonic本人だったんだ。映画『プレデター』を思い起こさせるマスクの不気味さやハードコアなサウンドとは裏腹に案外おちゃめなところもあるZardonicはベネズエラ出身のDJ/サウンドクリエイター。Crossfaithのリミックスアルバムに参加しているから、彼らのファンにはすでにお馴染みの存在だろう。

DJステージとも言えるAREA BLACK HALLではなく、今回、ロックバンドやラッパーとともにNOVA STAGEに出演した彼はドラムンベース由来の超高速ビートをノンストップで鳴らして、同時代のドラムンベースDJ達の曲とCrossfaithの「RX OVERDRIVE」他、ラウドロックバンドの曲を巧みに繋げ、フロアを揺らしながら、ラウドロックとEDM両方のファンから支持されているというその魅力を存分にアピールしたのだった。

フロアにいる観客の大半がCrossfaithをはじめとするラウドロックのファンだったと思うのだが、なるほど、こういう楽しみ方もできるわけか。序盤からずんずんずんと響くビートに合わせ、観客達が飛び跳ね、歓声を上げる光景を眺めながら、ジャンルの壁を壊すという<HYPER PLANET>のテーマがファンの間にしっかりと浸透していることを知る。

メタル色濃いZardonicのオリジナル「Takeover」の盛り上がりが彼の人気を物語る。呼吸困難になったのだろうか。途中からマスクを脱ぎ、素顔でプレイしていたZardonicは観客の好リアクションに「You guys, Unbelievable!!」と快哉を叫ぶ。そして、ダメ押しするように4つ打ちのハンマービートを執拗に打ち鳴らして、「オイ!オイ!オイ!」と観客に声を上げさせると、最後はこの言葉で締めくくり、フロアを沸かせたのだった。
「アリガトゴザイマス!!」
取材・文◎山口智男
写真◎cazrowAoki(@cazrowAoki)
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