【ライブレポート】angela、アニメ『蒼穹のファフナー』全曲ライブ開催「物語が続くように──」

ポスト

ギネス世界記録(TM)公式認定(「同じアーティストにより歌われたアニメーションフランチャイズの歌曲の最多数」)を持つアニメソングアーティスト・angela。認定時からさらに新曲を加え、全35曲となった『蒼穹のファフナー』シリーズ関連楽曲を2日間かけて全曲披露する<蒼穹のファフナー20th Anniversary☆2日でまるごと全曲LIVE!!>。前日のDay1では公演時間2時間半で20曲を披露し、一般的にはこれで満腹のボリュームだったが、それもこのライヴにとっては折り返し地点に過ぎなかった。そんな後半戦Day2の模様をお届けする。

Day1同様、オープニングBGMに「ナイトへーレ開門」が鳴り響くと、島民たちは前日よりも勢い良く掛け声を上げ、スタートへのボルテージを高めていく。そこに突如としてKATSUが現れてギターソロを奏で気合を入れ、オーケストラサウンドが雰囲気を変えると、atsukoがマークザイン、KATSUがマークニヒトを連想させるカラーの衣装で登場した。

この日のオープニングナンバーとして歌い始めたのは、舞台『蒼穹のファフナーFACT AND RECOLLECTION』の主題歌「Shangri-La[mf]」だった。静謐なピアノ1本をバックに大人な歌声で朗々と歌うなかに迫力あふれるクワイアの声が重なり、2番からはバンドサウンドが加わり熱を高め、KATSUのギターソロからドラムのじんぼちゃん、ベースのBuono、キーボードのhanaとそれぞれソロパートの見せ場を作り、アグレッシブに幕を開けた。


舞台劇は羽佐間翔子らに焦点を当てた作品で、そこから続けてスクリーンには翔子の最期のシーンが映し出され、会場は悲しみのトーンに包まれたままTV第一シリーズ『蒼穹のファフナー』エンディングテーマの「Separation」が流れる。翔子の最期にはピアノバージョンが添えられていたが、この日はオリジナルバージョンで、こうしたレアなセットの組み方も全曲ライヴならではだ。BGVには様々な場面の映像が流れ、シリーズ通したエンディングテーマとして強く記憶と結びついていることが思い出される。

最初のMCでatsukoは「『Separation』の後のMCは難しい」と話しつつ、スムーズにangelaらしいトーンに移行し、Day1での「泣いた後、突然盛り上がって、また泣かされて感情が追いつかない」という感想に触れ笑いを取ったあと、「今日も全曲ライヴがっつり歌っていきます!」と力強く宣言した。

つづいてはTVスペシャル『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』イメージソングの「DEAD SET」。angelaがデビュー時から得意としているデジタルロックで、ギターソロを含めライヴ映えするアグレッシブな楽曲に会場が一つとなる。そこからスキャットが流れてくると、少しのざわめきと一部から熱いリアクションが聞こえてきた。その曲とは劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』イメージソング「理解と破壊へのプレリュード」で、angelaが以前にこの曲をライヴで披露したのは10年以上も前のこと。先ほどのリアクションはこの機会に恵まれた歓喜と思われる。異国情緒あふれるスパニッシュサウンドに手拍子が湧き、夕日のようなライティング演出にエモーショナルな間奏がハマるという、実にライヴ映えする楽曲で、ここまで歌われることが少なかったのが不思議なほどだった。


Day1で20曲を披露したため、Day2とのバランスが懸念されていたが、それは杞憂だったと示したのが「蒼穹」のイントロだった。atsukoがライヴタイトルをコールすると前日よりも熱いリアクションがあり、リズム隊の輪郭がハッキリしたサウンドがぶつかってくる。BGV上の名場面映像も劇場版らしい強度のあるカットの連続で、苛烈なシーンとハードなサウンドのシンクロがオーディエンスのボルテージを一気に高めた。次の「さよならの時くらい微笑んで」でも切々とした歌声のパートの後は劇中の壮絶なシーンと合わさり、シアトリカルな演出のもとバラードをしっとりと歌い上げた。


MCでは引き続き「テンション感が難しい」と、「ファフソン」だけでライヴを構成する難しさを滲ませるatsukoだったが、軽妙にグッズのトークを展開し、次の音楽劇『蒼穹のファフナー』エンディングテーマ「生命-イノチ-」へ。アコースティックなサウンドに乗せて抑揚をつけた歌いこなしで、終盤のクワイアとともに大団円らしい空気をまとわせ歌っていった。この楽曲も披露されること自体が少なく、3年前の<蒼穹のファフナー FINAL Fes in パシフィコ横浜>のDay2「angela LIVE -蒼穹作戦-」でもゲストとのデュエットであったため、ライヴでatsukoのソロ歌唱を聴けたのもレアな機会となった。


続くトリビュートソング「innocence」はシンセサウンドをフィーチャーした疾走感溢れる楽曲で、2人はステージを大きく使いパフォーマンスを繰り広げ、大きな反応をもらっていた。曲間ナレーションで一騎と総士がそのレアさに触れつつ、『蒼穹のファフナーEXODUS』のゾーンへ。第2クールオープニングテーマでangelaの通常のライヴでも人気の「DEAD OR ALIVE」を、アニメ映像をバックに熱唱する。太いリズム隊の音と高音のクワイアが並走しながらアグレッシブに展開していき、バスドラムの連打とともにギターソロを掻き鳴らし、2人は上手・下手に分かれ《follow me follow you》のコール&レスポンスを繰り返し、終盤のコール&レスポンスへ。angelaの多彩な引き出しを出し尽くすドラマティックな構成はライヴ映えがする。

スクリーンには竜宮島の危機のシーンが映し出され、シリアスな雰囲気の中、第1クールエンディング主題歌「暗夜航路」を歌い始める。ステージのライティングも深海をイメージさせる色に変わり、atsukoはステージ中央に座り、沈痛な表情でピアノ伴奏一本で歌い続け、最後のパートに差し掛かるとバンドサウンドがバックアップし登場キャラクターたちの最期を描いた映像とともに感情を一気に揺さぶり、悲しく締めくくった。つづいては「その時、蒼穹へ」。Day1でも歌われた楽曲だが、この『EXODUS』の流れで名シーンの記憶とともにある挿入歌を演らないとあっては、島民が納得しないだろう。それは《行け、行け、飛べ、飛べ》のコールの声量にも表れていた。


歌い終えたatsukoは満足した表情で「良いですね、『その時、蒼穹へ』」と自画自賛。これは冗談ではなく、アーティストとしての本心で語っていた。前日に発表された2025年5月開催のオーケストラコンサートについて、atsukoは「ファフナー」の劇伴の魅力についても触れ、オーケストラコンサートへの期待を滲ませた。そしてライヴは後半戦になり、『蒼穹のファフナー THE BEYOND』のゾーンへと進んだ。まずは映像作品発表前の時点でangelaが自発的に制作したイメージソング「Prologue -君の向こう側-」。KATSUによると「ゆったりとジンワリ心の中に入っていく曲」というイメージで、前半は厚いベースの音にじっくり乗せていき、サビで開放する。後半はテンポアップしドラマティックな展開を見せ、アウトロまで映像が浮かぶような想像を掻き立てる。BGVのアニメも敢えて作中の抽象的な画面で構成された、まさにイメージソング。この曲もライヴでの披露が多くはないので、満足した島民も多かったことだろう。


つづいてはオープニング主題歌の「THE BEYOND」で、ライヴの盛り上げに不可欠な顔役の曲。落ちサビでの険しい顔から笑顔になって《蒼穹 I miss you》のコール&レスポンスを行うatsukoの表情が印象的だった。『蒼穹のファフナー THE BEYOND』での悲劇的なシーンを挟み、ワルツ曲のエンディングテーマ「君を許すように」は短く鎮魂歌のように歌われ、天井には星のような明かりが灯っていた。つづく第3弾エンディング「夜明け待ちのバラード」で、KATSUはアコースティックギターを手にして広がりのある音を作り、atsukoは何度でも味わいたくなるメロディを優しく力強く歌っていった。

第5弾エンディング「過ぎ去りし日よ」ではKATSUが沖縄の伝統楽器の三線を手に島唄らしいイントロを奏で、会場にはしばしゆったりとした空気が漂う。島唄独特のメロディラインがatsukoの歌い回しと相性が良く、客席は聴き入っているようすだった。本編最後はやはり第2弾オープニング主題歌の「叫べ」。スピード&アグレッシブに攻めていき、《NO WHERE NOW HERE》のコールは更に大きく、最後のパートではモニターに映し出されるリリックに合わせ大合唱となり、最後にジャンプで締めくくった。


アンコールでatsukoは「叫べ」について触れ、3年前の<蒼穹のファフナー FINAL Fes in パシフィコ横浜>のDay2「angela LIVE -蒼穹作戦-」のときはまだライヴでは声出しが不可能な時期だったため、今回はオーディエンスとの声によるコミュニケーションを叶えられたことに満足げな様子で「こうしてまた叫べる今が来たと思うと、やはり続けることは大事だと思います」と話す。

そして「ファフナー」との20年にわたる縁を振り返り、「これからどれだけ新しい作品に出会えるかを考えたとき、この先『ファフナー』ほど密にたくさんの楽曲数を作れる作品にはもう出会えないんじゃないかなと、心の片隅に思っています。(中略)本当にこれは私たちにとっても皆さんにとっても宝物です。だからこそ、大切に大切にこれからも作品とともに歌っていきたいと心から思っています」と話した。

そして「全曲ライヴでこれまでまだ歌っていない曲」と問いかけると、会場全体から「Peace of mind」と一斉に言い当てる声があがり、最初から最後まで会場にいる全員で合唱する非常に珍しい光景が展開した。atsukoは随所にリードをするが、多くはオーディエンスのみで、男声・女声の割合も偏りがないのが特徴だった。1番が歌い終わると互いに大きな拍手が沸き起こり、伴奏がピアノからバンドサウンドになった2番でも合唱は続き、落ちサビ後には長い拍手が起こった後、笑顔のatsukoがオーラスを締めくくった。


新曲のアンサーソング「蒼穹の彼方」はもちろんこの日も歌われたが、客席のサイリュームのようすからは、1日で熟練度の向上を感じさせた。そして<蒼穹のファフナー 20th Anniversary☆2日でまるごと全曲LIVE!!>を締めくくったのは「Shangri-La ~THE BEYOND~」だった。歌い始めに銀テープが発射され、思い思いのタオルで応援し表現する島民たち。2番になるとangelaはこの日もステージから客席に降りて歌い、その模様がスクリーンに映し出されると、大きな歓声が沸き起こり、以降はangelaの移動に合わせて皆が向きを変える向日葵のような光景が印象的だった。

コール&レスポンス、そして落ちサビでの合唱では島民も想いを込めて熱唱し、歌い切ると、温かさに満ちた拍手が会場を包みこんだ。asukoは「やりきった!」と一言。「『物語が続くように』というのがangelaからの、そして島民の皆さんからのアンサーだと思っています」と叫び、「続いてほしいよね?」と問うと、もちろん島民たちは大きな歓声で応えた。


バンドメンバー紹介と写真撮影を行なった後、最後にKATSUは新曲「蒼穹の彼方」の制作を突然依頼されたときには「ちょっと待って下さいよ〜」とリアクションを取ったそうだが「本音はメチャクチャ嬉しかったです」と明かし、「もっと『ファフソン』を作らせて下さい!」と絶叫すると、島民たちは大きな大きな拍手で応えた。atsukoは「いつでも歌う場所を『Shangri-La』にしてくれる島民の皆さんが大好きです!」と話した後、マイクを外して肉声でホール中に感謝の言葉を伝えた。最後にスクリーンの前に立った2人は握手とハイタッチで締めくくってステージを後にし、「蒼穹のファフナー 20th Anniversary☆2日でまるごと全曲LIVE!!」2日間を見事に走り切った。

文◎日詰明嘉
写真◎木下マリ
この記事をポスト

この記事の関連情報

TREND BOX

編集部おすすめ