【ライブレポート】angela、アニメ『蒼穹のファフナー』全曲ライブ開催「物語が続くように──」
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アニメ『蒼穹のファフナー』シリーズの全ての音楽を担当するangelaが、2024年11月29日・30日にパシフィコ横浜にて<蒼穹のファフナー 20th Anniversary☆2日でまるごと全曲LIVE!!>を行った。
◆ライブ写真
「2日間かけてangelaの“究極コンプリート蒼穹作戦(仮)”をいつの日かできたらいいなと思います!」と、atuskoが叫び万雷の拍手を浴びたのは2021年12月<蒼穹のファフナー FINAL Fes in パシフィコ横浜>のDay2「angela LIVE -蒼穹作戦-」でのことだった。それから1067日。約束を叶えるべく、angelaが2024年11月29日・30日、再びパシフィコ横浜国立大ホールに舞い戻ってきた。題して<蒼穹のファフナー 20th Anniversary☆2日でまるごと全曲LIVE!!>。ライヴの模様を各日に分けてお届けする。
◆ ◆ ◆
コンプリートベストアルバム『蒼穹のファフナー ALL SONGS/angela』でシリーズアンサーソングとなる「蒼穹の彼方」を加え、合計35曲となった“ファフソン”(ファフナーソングの略称)をこの2日間で歌い上げると謳っていたこのライヴ、セットリストの予想もまた一つの楽しみだった。時系列やバランス、演出をどのように絡めてくるのか……と、期待が高まる開演前には真壁一騎と皆城総士による影ナレーションで会場がさらに盛り上がる。
定刻になり、『蒼穹のファフナー』シリーズのBGMから、出撃を告げる「ナイトへーレ開門」が鳴り響くとバンドメンバー3名が現れセンターで一礼し、そのままバンド演奏を加え、ライヴスタート直前の高揚感を盛り上げていく。すでに客席は青一色のペンライトがリズムに合わせて揺れ、そこに満を持してangelaのatsukoとKATSUが登場。
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センターで敬礼を行ない、歌い始めた1曲目は「fly me to the sky」。ここに来た多くの“島民”(ファフナーファンの呼称、本文中ではオーディエンスの意)にとってはご存知のように、『蒼穹のファフナー』放送開始以前に作られたイメージソングだ。『蒼穹のファフナー』20年の歴史の始まりの楽曲でこの伝説の2日間の火蓋を切って落とすにふさわしい楽曲だ。早くもスクリーンにはTV第一シリーズ『蒼穹のファフナー』(以下、「初代」)の名場面が爽やかで疾走感に溢れ、間奏のメロディアスなギターソロに歓声が重なり、終盤では島民たちが息の合った《fly me to the sky》のコーラスを奏でた。
次の前奏の始まりとともにatsukoは「ファフナー20周年この2日間、ここを私たちのシャングリラにしましょう」と語ると、スクリーンには「初代」のオープニング映像が流れ、主題歌「Shangri-La」を早くも投下した。angelaメジャーデビュー2年目の大ヒット作であり代名詞とも言えるこの楽曲はatsukoの歌い回しを存分に活かしたメロディラインなだけでなく、作品にマッチした硬質なサウンドだ。エンターテイメント性あふれるライヴづくりに定評のあるangelaはこの楽曲を育て続け、オーディエンスとの交流もライヴアクトの中に組み込んでいる。
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この日はそんな20年の歴史を感じさせる場面が多々見られた。初期のライヴから繰り広げられた島民によるタオル回しは、これまでのさまざまなライヴのタオルが会場中に色とりどりに舞い、コールではこの日の新アイテムのメガホンでコール&レスポンスが行われるなど、定番楽曲であっても常に新しい光景を見せてくれた。
最初のMCであるにも関わらず、atsukoが「今ので最後の曲だったんですけども……ここをシャングリラにすることができて本当に幸せです!」とボケ倒し、舞台袖に捌けようとすると、島民は即座にアンコールを叫び、アーティストとオーディエンスによる阿吽の呼吸を見せる。途中には、開演前の影ナレーションにも登場した一騎と総士に話しかけて、ライヴに勢いをつけると、atsukoは心を込めて「ファフソンにどっぷりと浸って下さい」と話し、第15話エンディング主題歌「proof」を歌い始める。壇上からピアノとアコースティックギターのみでしっとりと歌を届ける姿は、さながら一人芝居のような入り込みようで、その集中ぶりは他の楽器が入るにしたがって強くなり、オーディエンスは息を呑んで見入っていた。
スクリーンには羽佐間翔子が搭乗してから最期の様子までが流れ、竜宮島の常夜灯を模したセットに座ってもたれかかりながら「Separation[pf]」を歌う。元曲の頃から泣きのメロディが映えるこのバラード、タイトルの通りピアノ1本でのアレンジはatsukoの情感がさらに表に出てオーディエンスを作中に誘い、悼む気持ちを一つにした。しめやかな空気を一変するかのように鳴り響くロッキンなギターリフ。
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次の歌は劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』イメージソングの「FORTUNES」だった。この日のライヴ、ここまでは「初代」のナンバーをほぼ順番に届けてきたが、ここにきて作品の発表順をジャンプしてきたことで、両日のライヴを単なる時系列にはしないangelaの構成意図が垣間見えた。その束の間、ステージ上から煽りを入れるatsukoとKATSUに、島民たちはたちまち反応し、ペンライトをレッドへとチェンジし、一騎をイメージしたアグレッシブなサウンドに身を任せる。スクリーン上のリリックビデオには強い意志を感じさせる言葉が並び、思わず合唱したくなるようなメロディラインとともにキレの良い歌唱が次々と繰り出され、ステージ上でも魅せるパフォーマンスで楽しませてくれた。
一騎と総士のナレーションが入り、「さらに悲しい戦いを思い出してしまう曲だ」という言葉につづいてTVスペシャル『蒼穹のファフナー RIGHT OF LEFT』挿入歌「果て無きモノローグ」が流れる。イントロのハモンドオルガンの音だけでざわめきが起きることで作品理解の深い島民が集っていることが改めてうかがえた。壇上にはトーチ(篝火)が灯り、スクリーンには主人公・将陵 僚とヒロイン・生駒祐未を中心に、物語の舞台である“L計画”の模様や壮絶な戦闘シーンが映し出される。映像演出と楽曲の展開が相互に作用する感動的な演出だった。
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間髪を入れずにドロップしたのは劇場版『蒼穹のファフナー HEAVEN AND EARTH』主題歌「蒼穹」。思い入れの深い島民も多く、イントロでさまざまな場所から悲鳴が上がる。エモーショナルなアカペラの後、4つ打ちへとテンポが変わり、そこからヘヴィなスピードチューンが展開するangela随一の爽快感あふれる楽曲。atsukoとKATSUは向かい合って歌唱・演奏し、熱を高めていく。間奏のタイミングでは会場の皆が体を折ってリズムを取り、同時に映像は作中の壮絶なシーンが次々と打ち出される。高まりきった熱狂を収めるべく最後にはスモーク演出によるクールダウンで締めくくった。
angelaらしいMCで場を和ませた後、音楽劇『蒼穹のファフナー』テーマソングの「Remember me」を展開。KATSUはエレクトリック・ガットギターに持ち替え、全身でリズムを取りながら弾き、atsukoはアコースティック主体のサウンドを乗りこなしながら夕日のようなライトを浴び踊るように歌い上げた。つづいては、5周年のときに書かれたシリーズへのトリビュートソング「約束」。シリーズ一貫した「これからも」や「忘れない」といった「約束」の言葉が並び、この言葉を歌うときには小指を立てる小粋な仕草を見せる。ピアノのメロディが美しい壮大なスローバラードでエンディングらしく聴かせてきた最後、atsukoはアンプを通さない本当の生歌でアカペラを披露し、ホール中に響き渡らせ大きな拍手を浴びた。
レーザー光線が飛び交い雰囲気を一変させると、ここからはTV第二シリーズ『蒼穹のファフナー EXODUS』のゾーン。まずは第2クールオープニング主題歌「イグジスト」をオープニング映像付きで聴かせていく。冒頭の《follow me follow you》のコールで会場が湧き、赤と青のペンライトが煌めき、ベースの効いたサウンドでアグレッシブに展開。冒頭から最後までは合唱状態で一気にボルテージを高めた後、間奏のタイミングではatsukoとKATSUは舞台から客席に降りて練り歩き、《follow me follow you》のコールを繰り返し煽っていく。オーディエンスとハイタッチを行なうなど、3年前のライヴでは不可能だった光景だ。
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燃焼しきった後は第2クールエンディング主題歌の「ホライズン」でハイトーンが響き渡る。重低音の効いたベースにキレの良いカッティングと情感豊かなボーカルワークが聴きどころで、スケール感溢れる楽曲がホールを支配した。そこから緊迫感のあるアニメ映像が挟まれ、劇中のカウントダウンに合わせて会場の島民も声を合わせ挿入歌の「その時、蒼穹へ」へと向かう。インパクト抜群の《行け、行け、飛べ、飛べ》という歌詞とアニメ映像中のセリフがシンクロする見事な演出の後、アップテンポでドラマチックなatsukoの歌声がとどろき、再び《行け、行け、飛べ、飛べ》のパートではホール中が声を合わせ一体感を醸し出す。間奏では体を折って熱唱し、マイクを客席に向け絶叫する。
つづいてスクリーンに第17話の羽佐間カノンの名シーンが流れると、会場のそこかしこで悲鳴の声が上がり、挿入歌「愛すること」が流れる。アニメのシーンと同様、ステージ上のテーブルには麦わら帽子が置かれ、atsukoは座って感動的に歌う。終盤には灯籠流しのようにライトが灯り、そこにカノンの「好きだよ、一騎」のセリフが挟まり、彼女の最期を歌い上げる。作中屈指の名シーンを見事に映像とライヴ歌唱で再現し、温かい拍出に包まれた。
続いて流れたのは『蒼穹のファフナー』シリーズイメージソング「私はそこにいますか」。こうした久々のライヴ披露曲が聴けるのも全曲ライヴならではの機会だ。静謐なピアノからエレガットを使ったオーガニックなサウンド、そしてEDMと音色が次々と変わる様子をKATSUは「フェストゥムが進化する様子を音で表現した」という。髪を振り乱しながらの情熱的な演奏に乗せて伸びやかなボーカルが調和し、次からの『蒼穹のファフナー THE BEYOND』ゾーンへの橋渡しとした。
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MCでは、今年5月に開催された、<蒼穹のファフナー「ロケ地探訪蒼穹作戦 in 函館 2024」>でのこぼれ話を繰り広げた後、第1弾オープニング主題歌「THE BEYOND」へ。島唄をモチーフにしたイントロからロックチューンへと展開するとクラップが湧き、サビでのコール&レスポンスの後で颯爽と歌うangelaの楽曲の正統進化系な楽曲。間奏では「ファフソン」らしい神秘的なコーラスで世界観を示し、再びコール&レスポンスで爽快に盛り上げてキレ良く盛り上げた後、シリアスな第1弾エンディング主題歌「何故に..」を歌う。分厚いリズム隊とドラマチックなシンセのサウンドが世界観を壮大に広げていく。それらに溶け込みつつ存在感のある歌声を響かせるatsukoからはディーヴァ的な風格を漂わせていた。
そして第4弾エンディング主題歌「今を、生きる為に」では迫力あるドラムに乗せたatsukoのハイトーンが麗しく響き渡る。ニュアンス溢れる味付けから絞り出すような生々しさまで、彼女の持てる技術を駆使して挑んだドラマティックなバラードでオーディエンスを圧倒するパフォーマンスだった。
ここで突然、総士のナレーションによる「全員、最終楽曲に備え、メガホン用意!」の号令をきっかけに、本編最後の楽曲が始まる。第2弾オープニング主題歌「叫べ」だ。スピード感とパワフルさを備えたこの楽曲、atsukoはノリにノッて腕を振り上げ、体を折って情熱的に歌い上げる。KATSUのギターソロでは歓声が湧き、客席に向けたマイクにオーディエンスは「NO WHERE, NOW HERE」を叫び、ラストの部分は合唱状態となりatsukoにバトンを渡すと、オーラスで一瞬止まり、キリリとした表情を見せた後、「島へ」とロングトーンで歌い切った。
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アンコールの声に応えて戻ってきたangelaはシリーズアンサーソングの新曲「蒼穹の彼方」制作秘話に触れた後、高らかに歌い始めた瞬間、銀テープが発射された。ベースがくっきりしたサウンドメイクで、言葉通り空の広さを感じさせるサウンドやボーカルワークがangelaの曲の中で屈指の爽やかさで魅了する。アンサーソングらしく、これまでの「ファフソン」をモチーフとした味付けが耳を離さない。
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そして本当のオーラスソングは『蒼穹のファフナー BEHIND THE LINE』主題歌「Start again」。スクリーンに映し出された花火の映像をバックに、すべてを包むような思いをこのスローバラードに込めて歌った。最後の挨拶でKATSUは、かつてこのパシフィコ横浜で開催予定だったライヴがコロナ禍で中止になったことに触れ、悔しさを吐露したが、「みんなの声が、叫んでくれて、本当に大好きなパシフィコ横浜になりました。ありがとうございました!」と、叫び喝采を浴びた。
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そして『蒼穹の彼方』制作の結果、新たな「ファフソン」制作による自身の記録を更新したが、「(ギネス申請を)敢えてしません」と断言。それは「まだ先に取っておこうと思います」。それを今後に向けた新たな「ファフソン」制作への決意と受け取った島民たちはまたも温かな拍手で応えた。最後にatsukoは「何度もファフナーの集大成の曲を作ってきました。でも(また新たな曲を)作れる自信あります!」と言い切り、こちらも喝采を浴びた。そして最後に「『蒼穹の彼方』の(歌詞の一節)『物語が続くように』が私の中のアンサーであり、島民の皆さんと共有できるアンサーなんじゃないかと。そして未来は何があるかわからないけど、こうして心強い島民の皆さんがいれば、私はこれからもずっとファフソンを死ぬまで謳い続けていく決意が更に硬く固まりました!」と熱いメッセージを贈り、Day1を締めくくった。
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