サミー・ヘイガーと最強の仲間たち<全世界のいいとこ取りツアー>、まもなく日本上陸

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photo:Timothy Norris

7月26日にフロリダで幕を開けたサミー・ヘイガーの北米ツアーが佳境に入っている。8月31日に予定されているセントルイス公演を終えると、その次の公演地は名古屋。9月には<THE BEST OF ALL WORLDS>と銘打たれたこの規格外ツアーが、いよいよ日本にも巡ってくるのだ。

このツアーに掲げられたタイトルには、2004年に発売されたヴァン・ヘイレンのベスト・アルバム『THE BEST OF BOTH WORLDS』を連想させずにおかないところがある。この2枚組にはデイヴ・リー・ロス期とサミー在籍期、双方の時代のキラーチューンが詰め込まれていて、まさに“両方の世界”の美味しいところを堪能できるものになっていた。そして今回は“どちらの世界も”ではなく“すべての世界を”味わえるツアーと銘打たれている。実際、サミー自身もこのツアー・タイトルについて「全世界のいいとこ取り、という意味なんだ」と発言している。

今回のツアーで演奏されている20曲を超える楽曲のうち、多くはサミー自身がフロントを務めていた当時のヴァン・ヘイレンの楽曲で占められている。ただ、当然ながら“それ以外の世界”からも選曲されていて、ソロ・アーティストとしての彼の代表曲、さらにはデイヴ期のヴァン・ヘイレンの曲、モントローズ時代の楽曲までも網羅されている。


photo:Richie Downs

サミーはかつて、ヴァン・ヘイレン加入後に「ジャンプ」や「パナマ」といったデイヴ期の楽曲を自身が歌うことについて「曲は素晴らしいから何の抵抗もないが、歌詞の意味するところがよくわからない」といった内容の発言をしていたことがある。その言葉を目にした時には「同じアメリカ人のヴォーカリストでもそうなのか!」と思えたものだし、日本人の自分がデイヴの書く歌詞について「よくわからないけど面白い」という印象であるのも当然なのだと納得させられたものだ。ただ、そうした歌詞云々についてはともかく、現在のサミーはデイヴ期も含めたヴァン・ヘイレンの楽曲全般を歌うことについて、ある種の使命感に近いものを感じているようだ。

サミーは「これはデイヴに対する悪口ではないよ」と前置きをしたうえで「デイヴには俺の時代の楽曲を歌うことはできないだろうが、その逆は可能だし、それができるのは自分しかいない」と語っている。改めて説明するまでもないはずだが、エディ・ヴァン・ヘイレンの他界(2020年10月6日)により、今後ヴァン・ヘイレンのライヴが行なわれる可能性は残念ながら打ち消されてしまった。もちろん形を変えて何らかの機会が設けられることはあるのかもしれないが、エディの実兄であるアレックス・ヴァン・ヘイレンはすでに自身の所有していた機材などをすべて処分してしまったという話だし、サミーは「おそらく彼には、エディ以外の誰かとステージに立つつもりはないのだろう」と推察している。

もちろんサミーが望んでいたのも、エディが全快しふたたび彼とともにロードの生活に身を置くことだったが、それは完全に不可能なことになった。そして実際、それが叶わぬ夢だと悟った際には、サミー自身も音楽活動からの引退を考えていたという。ただ、コロナ禍で何もかもが停滞していた時期に、改めて自らの人生について熟考を重ねた結果、ヴァン・ヘイレンでの盟友であるマイケル・アンソニーとともに動くことを決意するに至ったのだった。


photo:Richie Downs

彼は「あの出来事により、最悪なことは起こり得るんだということを誰もが学んだ。まだまだ乗り越えなければならないことは残されているが、願望込みで世界が良くなることを信じているし、自分が本当にやりたいのが何なのかを改めて確信させられた」と語っている。この発言は、パンデミックの件にもエディのことにも当て嵌まるところがあるように思う。サミーとマイケルは自分たち2人のことを、やや自虐的に「(ヴァン・ヘイレンの)残りの2人」などと呼ぶことがあるが、その2人がベストな世界を体現・共有するために立ち上がった背景には、そうした心境変化もあったのだった。

彼ら2人が今回のツアーでステージを共にしているのは、ジョー・サトリアーニとジェイソン・ボーナムである。ヴァン・ヘイレンの楽曲をたっぷり演奏するとなれば参加を志願するミュージシャンも数多いはずだが、この選択はまさに誰にも文句の付けようのないものだろう。ジョー・サトリアーニはチキンフット、ジェイソン・ボーナムはザ・サークルにも名を連ねているだけに、サミーにとってはごく身近なところでの人選でもあるが、彼がこの凄腕たちに寄せる信頼感の大きさは半端なものではない。サミーはジョーに関して「リード・ギタリストであるのみならず、リード・シンガーでもある。つまりギターで歌うからだ」、ジェイソンについては「エディのギターを他の誰かが弾いても同じ音にならないが、逆にエディが弾くとどんなギターでも彼の音になる。ジェイソンのドラムについても同じことがいえる」と絶賛している。蛇足を承知で付け加えておくならば、ジェイソンという人選にはアレックス・ヴァン・ヘイレンも納得していることだろう。なにしろ彼は、ジェイソンの父であるジョン・ボーナムを崇拝し続けてきたのだから。


photo:Richie Downs

そしてサミーは、盟友マイケル・アンソニーについても「彼ほど頭の回転の速いやつには出会ったことがない」と語り、誰よりも彼と波長が合うこと、嗜好の面でもさまざまな共通点があることを認めている。メキシコとテキーラ、辛い食べものを愛してやまない2人は、かつて日本滞在中にも連れ立って激辛料理を食べ歩いたことがあるそうで、9月の来日時にもそれを楽しみにしているらしい。もちろん彼らがいちばん楽しみにしているのは激辛料理ではなく、日本のオーディエンスとの再会であるはずだが。

<THE BEST OF ALL WORLDS>の日本上陸まで、残された時間はもうわずかだ。9月20日に名古屋で幕を開けるこのツアーは、その後、大阪、東京と続いていく。この先、ヴァン・ヘイレンのライヴを観ることはもはや限りなく不可能に近いと言わざるを得ないが、サミー・ヘイガーによるこの公演も、二度と体験できないものになることだろう。この機会を、誰にも絶対に逃して欲しくない。

なお、この記事内には北米ツアー時のセットリストも掲載している。もちろん日本公演の際には演奏内容が更新される可能性もあるはずだが、しっかりと予習を済ませて臨みたい読者にとって参考になれば幸いだ。もちろん、予習抜きで臨んでも極上の満足を味わえるに違いない。

増田勇一

8月25日 アーカンソー州ロジャーズ公演セットリスト

・Good Enough
・Poundcake
・Runaround
・There's Only One Way To Rock
・Judgement Day
・Panama
・5150
・Summer Nights
・Ain't Talkin' 'bout Love
・Top Of The World
・Best Of Both Worlds
・Satch Boogie
・The Seventh Seal
・Right Now
・Why Can't This Be Love
・Eagles Fly
・Mas Tequila
・Heavy Metal
・I Can't Drive 55
・Space Station #5/Big Foot/Jump
・When It's Love

<Sammy Hagar: The Best of All Worlds 2024 Tour>

9月20日(金)名古屋・Niterra日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
開場18:00/開演19:00

9月22日(日)大阪・堂島リバーフォーラム
開場16:00/開演17:00

9月23日(月・休)東京・有明アリーナ
開場17:00/開演18:30

東京・名古屋公演
GOLD:35,000円 ※グッズ付き
S席:20,000円
A席:19,000円
大阪公演
GOLD(スタンディング):35,000円 ※グッズ付き
S(スタンディング):20,000円
2F指定席:19,000円
※未就学児(6歳未満)入場不可。6歳以上チケット必要。
※GOLDのグッズは後日発表予定



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