【ライブレポート】舞乃空、「みんながいてくれてよかったなって心の底から思います」

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2023年のデビュー前から“歌うま高校生”として注目を集めていた舞乃空が6月19日に<MANOA TOKYO NIGHT vol.1>と題して東京・御茶ノ水KAKADOにてライブを開催した。

◆ライブ写真

歓声の中、舞乃空はブラックとゴールドの大人な雰囲気の衣装で登場。自身のYouTubeチャンネル“歌ってみた”シリーズが人気の彼女だが、この日もオリジナル曲に加え、1980年代〜1990年代前半の大ヒット曲のカヴァーを数多く披露し、大阪弁が混じる気さくなトークと共に観客を楽しませた。

オープニングは杏里の「悲しみが止まらない」でハンドクラップ。舞乃空の伸びやかな歌が場内に響きわたった。衣装と同じくキラキラな笑顔で「今日は懐かしめの曲を多めに用意しています」と伝えるとあちこちから歓迎の声が飛ぶ。「初めてライブに来たよっていう人?」と問いかけ、手を挙げる人に「ホンマ?」とツッコミを入れるなど、前半からなごやかムードだ。続いての曲はマネージャーから推薦されたと前置きして披露された中村あゆみの代表曲「翼の折れたエンジェル」。ビートのきいたアップテンポのナンバーからシティポップ、しっとりしたバラードまで、その歌の守備範囲は驚くほど広い。この日はロックテイスト強めのヒット曲もセットリストに多く盛り込まれていたが、アタックの効いたヴォーカルスタイルに生のバンドサウンドでも聴いてみたいと思わせられた。


「次は切なめな曲を2曲続けて歌いたいと思います。母がすごく昔からカラオケで歌っていた曲で幼いながらに“すごい悲しい歌やな”って思いながら、いつも聴いていました」──舞乃空
 
椅子に座り、ムードをガラリと変えて歌ったのはミリオンセラーを記録した沢田知可子の切ないバラード「会いたい」だった。客席のペンライトが揺れる中、
恋人を亡くした主人公の心情を綴った曲をしっとりと歌い、照明がオレンジに変わり、杏里のデビュー曲にして代表作のひとつ「オリビアを聴きながら」を続けて披露。女性シンガーたちの曲のカバーとはいえ、曲調も世界観も異なるナンバーに寄り添って歌う舞乃空は、聴く人の心に情景を鮮やかに浮かび上がらせる表現力を持っているシンガーだ。

杏里のコンサートを観に行って、その人柄も含めて杏里沼にハマったというエピソードを混じえ、中盤は“東京メドレー”と“YouTubeメドレー”のセクションへ。舞乃空のカウントで始まったアン・ルイスのヒット曲「六本木心中」は歌仲間である、田中あいみ、梅谷心愛と一緒に歌ったのがキッカケで「カッコいい」と思った曲だとか。そこから歌詞に関西弁が盛り込まれたやしきたかじんの「東京」、歌詞に“御茶ノ水”も登場する椎名林檎の初期代表曲「丸の内サディスティック」に移行していく。


メドレーの合間には堂々とした歌いっぷりからは想像ができない意外な発言も。

「ホンマに毎回、緊張するんですよ。“どうしよう、みんなが楽しんでくれへんかったら”とか勝手に楽しまへん設定とかしちゃってるんですけど(笑)、1曲目からすぐに家族のようにあたたかく見守ってくださって、緊張はするけど、みんなの顔見ると安心するなって。私もだんだん楽しくなってきました」_舞乃空

前述した舞乃空の“歌ってみた”シリーズでおなじみの“YouTubeメドレー”では再生回数が最も多い3曲がセレクトされた。中島美嘉の「雪の華」に始まり、音楽バラエティ番組「熱唱!ミリオンシンガー」でも歌われた「カムフラージュ」、再生回数が13万回となった「シングル・アゲイン」はフルコーラスで──。声が似ていると人気の高い竹内まりやの2曲がじっくりと届けられた。

そして後半はオリジナル曲を披露。デビューシングル「うたかた」のカップリングに収録されている「春凪」はサビの開けるメロディが素晴らしいノスタルジックな世界観。柔らかなピンクの照明、故郷を離れる時の想いを歌った歌詞が19才の素顔を覗かせた。

「私は大阪に住んでいて高校1年生の時に上京したんです。この曲はむちゃくちゃ等身大というか、新大阪まで送ってくれて、お母さんとバイバイするのはめちゃくちゃ悲しいし、辛かったので、同じ状況の方も聴いてくれたら嬉しいなと思いながら歌ったり、逆にお父さん、お母さんの目線としても歌っていただきたいなと思っています」──舞乃空


そんなメッセージの後はカメラマンがステージに上がっての記念撮影タイム。

客席のみんながスマホで撮影OKの時間では上手、下手に移動して、いろいろなポーズをしてサービス。「かわいい写真は送ってな。かわいくないのは消してください」と沸かせていた。

本編最後に届けられたのは遠い夏の思い出、果たされない約束をテーマにした2023年8月にリリースされた2ndシングル「約束」。舞乃空の透明感のある歌声が場内を包んだ。

舞乃空がステージから去るとすぐにハンドクラップとアンコールの声援。スクリーンに映し出されたのは“速報”の文字。続いて9月11日に新曲が発売されることが発表されると場内は祝福の歓声で沸いた。


そんな高揚した雰囲気の中、舞乃空も嬉しそうに再び、ステージに登場し、スクリーンを指さして「見た?」と笑顔。「かわいい!」という声援が飛ぶ中、約1年ぶりの新曲を彼女自身も待ち望んでいたことを伝え、カップリングが「うたかた」と「約束」を作詞、作曲した金子麻友美による曲「幸せになって下さい」であることを報告し、タイトル曲「止まり木」については「さよなら大好きな人」の一節を歌いながら「花*花さんに作っていただきました!」と発表した。

お礼を伝え、アンコールでは初めて披露するという2曲。工藤静香の「慟哭」、そして、今の舞乃空の心境にリンクするようなプリンセス プリンセスの「Diamonds」を歌い、一体となってライブを締めくくった。


最後に舞乃空が「うまく言えないけれど」と前置きして集まったファンに向けたメッセージを記しておきたい。

「かわいいって言ってもらえるけど、自分ではかわいいと思ってないし、めちゃくちゃ歌が上手いとも思ってないんです。でも、“めちゃくちゃ上手いよ”とか“かわいいよ”とかみなさんに言っていただけると救われるんですよね。“もう頑張られへん”と思う日にインスタグラムとかSNSでちょっと弱音を吐いたりするとみなさんがDMを送ってくれたり“応援してるからね”って。送ってくださるだけでめちゃめちゃ嬉しいし、お顔をこうして見ると改めて“みんながいてくれてよかったな”って心の底から思います」──舞乃空

支えられるだけではなく、みんなに少しでも元気を与えられるよう、もっと上を目指していきたいとサード・シングルの発売に向けて意思表明をした舞乃空。その歌声、表現力でどんな景色を見せてくれるのか。さらなる挑戦が楽しみだ。

取材・文◎山本弘子

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